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関連文献、被引用数情報からCAR-T細胞療法実用化の流れを探る
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近年、核酸医薬品、遺伝子治療、再生医療等、新しい創薬基盤技術を活用して開発された医薬品が上市されています。このような新しい技術が実用化されるためには、多くの場合、科学技術の進展が必要であり、製薬企業はアカデミアやベンチャーと提携することによるオープンイノベーションを推進しています。今回、新規の創薬基盤技術としてキメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞療法(CAR-T細胞療法)を採り上げ、技術的進展と実用化の過程を関連文献の報告数および被引用数の切り口で分析することを試みました。

1 背景・目的

2017年以降、キメラ抗原受容体(Chimeric antigen receptor、CAR)をT細胞に導入した遺伝子改変T細胞(以下、CAR-T細胞)製品、Kymriah、Yescartaが欧米にて上市され、国内においてもそれぞれ承認取得および臨床開発段階です(表1)。CAR-T細胞療法は、患者のT細胞を取り出して遺伝子組み換え技術を用いて遺伝子を導入、体内に戻してがん細胞を攻撃させるという、これまでの低分子薬や抗体医薬とは異なる新しい創薬手法を用いていること、治療困難な疾患に対して高い効果を示すこと、薬価が高額であること等から大きな注目を集めています。またKymriah、Yescartaに続く多くのCAR-T細胞療法の開発がグローバルで進められています。

表1 現在上市されているCAR-T細胞2製品
表1 現在上市されているCAR-T細胞2製品

出所:各種公開情報を基に作成(2019年4月12日時点)

近年では、新しい技術創出の主たる担い手となっているアカデミアやベンチャーを起源とする医薬品が増加し、医薬品開発におけるこれらの果たす役割が大きくなっています。製薬企業各社もアカデミアやベンチャーと提携することによるオープンイノベーションを推進していることから、科学技術の進展から実用化に至る過程の最新動向を把握することは、産業化のプロセスを担う製薬企業にとって重要と考えます。 
 そこで今回、CAR-Tをその例として採り上げ、実用化の過程を科学文献情報の切り口で分析することを試みました。科学文献は研究者がその成果を報告する主要な媒体であり、KymriahおよびYescartaの実用化の過程を辿ることで、関連する技術の確立から実用化までにどの程度の時間を要したのか等を調査しました。

CAR-T細胞療法について[1][2]

CARは、特定の抗原を認識するモノクローナル抗体の抗原認識部位と、T細胞活性化レセプター(T-cell receptor、TCR)の細胞内ドメインを、遺伝子組み換え技術を用いて連結したものであり、主にはウイルスベクターを用いてT細胞に導入されます。これが遺伝子改変T細胞(CAR-T細胞)と呼ばれます。

mark [1]
齋藤章治、中沢洋三(2018)「CAR-T療法の現状と今後の展望」『信州医学雑誌』第66巻第6号、425-433頁
mark [2]
Michel Sadelain et al.(2009)The promise and potential pitfalls of chimeric antigen receptors, Curr Opin Immunol, Vol. 21(2), pp. 215-223
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