Information 理事長就任のご挨拶

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2023年5月25日の「第268回 製薬協総会」および「第569回 製薬協理事会」において、理事長に就任いたしました木下賢志でございます。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。私は、約38年間、国家公務員として厚生労働省、内閣官房、内閣府、官邸等においてさまざまな仕事に取り組んでまいりました。その中で、業界の方々とともに歩み、考える機会が与えられました厚生労働省医政局経済課長時代が最も印象に残る時期でありました。

予算編成のシーリングで最も影響を受けやすいのが医療であり、当時から薬価差が慣例的に調整の財源として位置付けられる状況に、大きな違和感を覚えておりました。医療の中核は、診断・診療の技術であることはいうまでもありませんが、医薬品なくして、効果的な治療は進まないというのは現実であります。薬価が当時は2年に1度、今は毎年下がることにより、日本における創薬開発に対するモチベーションが下がるのを政府が望むことなのでしょうか。内資企業であれ外資企業であれ、患者さんにスピーディに新薬を届ける環境を作り出すことが政策の目標であるはずです。

製薬協 理事長 木下 賢志 製薬協 理事長 木下 賢志

しかし、残念ながら憂慮した動きは私が経済課長になる2008年夏以前に徐々に始まっておりました。一部の外資企業の研究施設の日本からの撤退でした。その理由は個社の企業戦略によるものであり、承知しているわけではありませんが、特許期間中は価格を維持されている国からすると、薬価が改定ごとに下がり、効能追加等で売り上げが拡大すると引き下げられるという日本独特の制度がその要因になって、日本の魅力を削いでいるのも要因の一つであったと思います。このままでは革新的な新薬が日本からは生まれなくなるという危機感から、業界により「薬価維持特例」の提案がなされ、私はこれに大いに刺激を受け、その実現のために業界の方々とともに、1年半財務省をはじめとする関係者の理解に奔走しました。その結果、一定の条件のもと、特許期間を基本に一定の価格が市場価格に上乗せされる「新薬創出等加算」の2010年度からの試行的な実施にこぎつけることができました。

しかし、その後のたび重なる改正もあり、当初よりかなり日本の薬価制度は変容してきており、ドラッグ・ラグを超えて、ドラッグ・ロスにまで発展することはご承知の通りであります。

2023年6月12日に公表された厚生労働省の有識者検討会報告には、こうした状況の分析とこれからの方向性が明確に示されています。8月を過ぎるといよいよ、年末に向けた2024年度の予算編成の作業が本格的に始まります。そして舞台は中央社会保険医療協議会(中医協)の場に移ります。私は、製薬協の新会長である上野裕明会長のもとで、製薬協として、あるべき薬価も含めた創薬力強化の姿を追求し、これまでの製薬協の提言の具体化に尽力する所存であります。併せて、製薬協の組織のあり方についても含めて、議論を進めていく必要があるものと考えております。

製薬協のプレゼンスをより高めるとともに、年末の厳しい予算編成への対応に向けて、機動的に動く所存です。

会員会社のみなさんのご指導とご協力をよろしくお願い申し上げます。

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