トピックス 「欧州製薬団体連合会(EFPIA)との定期会合」を開催

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製薬協国際委員会欧米部会では、欧米の政府・製薬団体と協調し、国際的課題の解決を図る活動の一環として、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、英国製薬工業協会(ABPI)、フランス製薬工業協会(Leem)、ドイツ研究開発型製薬工業協会(vfa)との定期会合を毎年実施しています。2023年度のEFPIAとの定期会合は11月7日に対面とオンラインのハイブリッド形式で開催され、欧州、および日本の最新の政策課題と業界のアドボカシー状況について活発な意見交換を行いました。

会場の様子 会場の様子

■Opening Remarks

Director General, EFPIA Nathalie Moll 氏                                              

冒頭にEFPIA事務局長のNathalie Moll氏より挨拶があり、日本はEFPIAにとって最優先国の一つであり、このような年次会合の機会は非常に貴重と考えていると述べました。医薬品アクセスやIT等のヨーロッパが抱える課題を共有するとともに、ベストプラクティスや機会について互いに協議したいとの意向が示されました。

■EU Legislation and Policies

General Pharmaceutical Legislation

Director, Market Access & Orphan Drug Policy Lead, EFPIA Tina Taube 氏                              

欧州委員会が2023年4月に公表した一般医薬品法の改正案について、改正の目的や、イノベーション促進に向けたインセンティブ、医薬品アクセスの改善および安定供給に関する改正案の概要を解説しました。また、これらの内容に対するEFPIAの見解やこれまでの取り組みについて説明がありました。

■Compulsory Licensing

Director, Intellectual Property Policy, EFPIA Michael Swita 氏                                    

EFPIAから一般医薬品法改正案ならびに強制ライセンス法案に含まれる知財制度を脅かす仕組み(データ保護期間の短縮、Bolar条項の拡大等)の概要と、EFPIAの懸念事項および具体的提案内容が紹介されました。

質疑応答では、EFPIAの提案内容の意図等について質問があったほか、同じく知財制度に影響する議論である世界貿易機関(WTO)のTRIPS waiverにおける共同アドボカシーの可能性等について協議が行われました。

■Supply chain and open strategic autonomy

Executive Director, Economic and Social Affairs, EFPIA Francois Bouvy 氏                              

医薬品の安定供給と不足時の対策について、概要が説明されました。

EU一般医薬品法案では、製薬業界において医薬品の安定供給が義務付けられていることに加え、供給不足や停止が発生する場合に事前に通知する時間枠が定められる等、規制が強化されています。

EFPIAとしては、医薬品の安定供給を確保し、供給不足や停止が発生しないよう、重要医薬品リストの整備といった不足防止策・緩和策の構築を推奨しており、またリアルタイムで医薬品の不足が予測できる欧州医薬品審査システム(EMVS)の利用を推奨していることが紹介されました。

■Japan Legislation and Policies

Basic Policy on Economic and Fiscal Management and Reform(honebuto)in 2023 and
Pricing reform debate

製薬協 産業政策委員会 産業振興部会 飯田 宏樹 委員                                          

日本における製薬産業をめぐる現状と課題認識、「骨太方針2023」と製薬産業へのインパクト、2024年度薬価制度改革に関する中央社会保険医療協議会(中医協)の議論について紹介しました。ディスカッションでは、費用対効果評価の議論の見通し、2024年度薬価制度改革に向けた業界団体間の連携について質問があり、製薬協から回答を行いました。

■Drug shortages in Japan

日本製薬団体連合会 安定確保委員会 委員長 梶山 健一 氏                                        

日本製薬団体連合会(日薬連)から、日本における医薬品の安定供給にかかわる現状と課題について紹介しました。また、安定供給問題を打開するための取り組みを中心に、各ステークホルダーと進めている対応についての報告がありました。

ディスカッションでは、日本の安定供給問題の薬価への影響について、EFPIAから質問がありました。日本においては、ジェネリック医薬品の3割近くが赤字であり、新たな供給を増やす体制を構築するための設備投資にも十分に資金を投入できない状況である、その打開策の一つとして薬価制度での対応を要望しており、さらにジェネリック医薬品産業の構造自体の見直しが必要な状況であるとの議論が行われている、といった回答がありました。

■Digitization in Health

製薬協 産業政策委員会 イノベーション推進部会 白神 昇平 副部会長
Senior Manager Digital and Data, EFPIA Aneta Tyszkiewicz 氏                                   

製薬協より、日本でヘルスデータの二次的利用が進まない課題に対して、政府による医療DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進本部設立の経緯や、厚生労働省による議論の状況を共有し、製薬協が医薬品の研究開発の効率化に向けて、国家データ基盤の確立と法制度整備を要求する等の提唱活動を継続していく点を紹介しました。

また、EFPIAからは、2022年の定期会合に続き、欧州のヘルスデータ基盤構築と利活用に関する仕組みであるEuropean Health Data Space(EHDS)の議論の状況や製薬産業に与える懸念、より良い制度構築に向けたEFPIAの取り組み等について紹介されました。

ディスカッションでは、EHDSへの製薬産業の期待や懸念点等に関して、製薬協から質問を行いました。EFPIAからは、データ保有者にデータアクセスの拒否権がないこと(no right to refuse access)が現状の最大の懸念点である旨の回答がありました。

終わりに

最後に製薬協国際委員会の村上伸夫委員長から、EFPIAとの対面の会合は4年ぶりであること(2022年は移動時のトラブルで対面会合が実現しなかったため)を挙げ、感謝の意を伝えました。今回の会合でEFPIAと製薬協共通の課題が認識され、今後はイノベーション創出と医薬品アクセス確保とのバランスをどのように取っていくべきか、お互い議論を続けて理解を深め、協力しながら解決策を模索していくことを呼びかけました。

集合写真 集合写真

(国際委員会 欧米部会 欧州グループ EUチームリーダー 林﨑 由佳

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