From JPMA 2024年の年頭にあたって

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2024年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

2023年を振り返りますと、長く続いたコロナ禍が収束に向かい、街にはひと頃の賑わいが戻ってきました。人や物の往来が再開し、経済は反転成長へと向かいました。

一方で、円安の進行、猛暑、物価高騰、人手不足等、経済に水を差すできごとが相次ぎました。一部企業の不祥事に端を発した医薬品の供給不安は、サプライチェーンの混乱や医薬品の原価率の増大と相まって長期化しています。患者さんや医療関係者のみなさんに大変なご迷惑とご心配をおかけしておりますこと、製薬協を代表して深くお詫びいたします。併せて、困難な中で医療の維持に尽力いただいているみなさんに感謝申し上げます。

世界に目を向けますと、ウクライナやイスラエルで続く戦乱、中国の景気減速や全世界的な物価の高騰といった経済問題がありました。2024年は米国大統領選挙があり、政治の勢力地図が入れ替わることも予想されます。

日本製薬工業協会 会長 上野 裕明 日本製薬工業協会
会長 上野 裕明

私たち製薬協としては、足元の供給問題を解決すべく、強固なサプライチェーン構築に取り組んでまいります。また、困難な状況下にあっても、国民の健康寿命の延伸に貢献し、世界に創薬イノベーションを届けていかなければなりません。各社全力を挙げて取り組んでまいります。

製薬企業が革新的な医薬品を継続的に生み出すためには、イノベーションが適切に評価される薬価制度が必要です。しかしながら、2018年の薬価制度抜本改革で革新的新薬の薬価が必ずしも維持されない制度が導入され、薬価改定も毎年行われるようになり、日本の医薬品産業は疲弊し、グローバルマーケットでの日本市場の魅力は徐々に損なわれてきました。その結果、有用な医薬品の国内への導入が遅延または開発すらされない「ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス」が生じています。

この状況を打破すべく、製薬協では「イノベーションが適切に評価される薬価制度」の必要性を訴えてきました。その結果、政府の骨太の方針に医薬品のイノベーションの推進が記載されました。そして2024年の薬価制度改革では、革新的新薬を日本にいち早く導入することへの評価や、新薬創出等加算で薬価を完全に維持する仕組みが導入される見込みとなり、現在細部の詰めの段階にあります。これは政府や国民のみなさんによる医薬品産業への期待の表れであり、今後業界一丸となって応えていかなければならないと、身の引き締まる思いがいたします。

2024年は医療・介護・障害福祉サービスのトリプル改定が行われる節目の年であり、高齢化、ポスト・コロナ、人件費高騰、光熱費高騰等、医療界は多くの課題に向き合うことになります。また、物流や医師の時間外業務規制が始まる2024年問題もあります。一方で2024年は医療のデジタル化の節目の年でもあり、オンライン資格確認や医療・介護のデータ連携、プログラム医療機器の制度整備等が次々と導入・実施されます。私たちにとってもデジタル技術は創薬への活用、流通の効率化、医療データの活用等、さまざまな可能性を与えてくれます。私たちはデジタル技術を活用し、より効率的な医療システムを構築し、多くの課題を解決していかなくてはなりません。

イノベーションの評価の必要性が再認識され、医薬品の評価のあり方が見直される中、私たちは、国民の新薬へのアクセス向上や安定供給の確立に取り組んでまいります。また、関係機関との連携を強化し、世界に伍する新薬を生み出し、製薬業界の発展と国民の健康の増進に貢献してまいります。

末筆ながら、2024年がみなさんにとって素晴らしい1年となりますことを祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

(本町記者会 新年・年頭寄稿文より)

日本製薬工業協会(製薬協)
Japan Pharmaceutical Manufacturers Association (JPMA)

製薬協は、研究開発志向型の製薬会社が加盟する任意団体です。1968年に設立された製薬協は、「患者参加型医療の実現」をモットーとして、医療用医薬品を対象とした画期的な新薬の開発を通じて、世界の医療に貢献してきました。

製薬協では、製薬産業に共通する諸問題の解決や医薬品に対する理解を深めるための活動、国際的な連携等、多面的な事業を展開しています。また、特に政策策定と提言活動の強化、国際化への対応、広報体制の強化を通じて、製薬産業の健全な発展に取り組んでいます。

新薬の開発を通じて社会への貢献をめざす 日本製薬工業協会

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