政策研のページ 日米欧の新薬承認状況と審査期間の比較(2022年)

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2022年に日米欧で承認された新医薬品の承認品目数および審査期間について、各極の薬事上特別措置の影響を踏まえて調査しました。2022年の国内の全承認品目数は174品目、新規化合物(New Molecular Entity、NME)数が52品目と最多でした。審査期間の中央値は全承認品目で9.4ヵ月、NMEで10.8ヵ月であり例年並みでしたが、審査期間の中央値は欧米と比較して日本が最小でした。また、再生医療等製品の承認数は日米欧いずれにおいても近年増加しており、グローバル製品数も増加していました。

1. はじめに

政策研では、日本、米国、および欧州の医薬品の承認情報および審査期間に関して、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration、FDA)および欧州医薬品庁(European Medicines Agency、EMA)がウェブサイト等で公表している情報をもとに継続的に収集、分析しています※1。政策研ニュースNo.67※2では2021年の承認実績を中心に日米欧の新薬承認状況と審査期間の比較を、政策研ニュースNo.68※3では2022年に日本で承認された医薬品情報に関する分析結果を報告しました。今回は2022年に日本、米国、および欧州で承認された新薬の承認品目数、審査期間等に関して報告します。

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    医薬産業政策研究所「日本における新薬の臨床開発と承認審査の実績」リサーチペーパー・シリーズNo.69(2016年11月)
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    医薬産業政策研究所「日米欧の新薬承認状況と審査期間の比較 —バイオ医薬品の承認状況も踏まえて—」政策研ニュースNo.67(2022年11月)
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    医薬産業政策研究所「日本で承認された新医薬品とその審査期間 —2022年承認実績と経年動向調査—」政策研ニュースNo.68(2023年3月)

2. 調査方法

PMDA、FDAおよびEMAのウェブサイトに公表されている情報をもとに、標準的な統計解析ソフトStata/IC 14.2 for Windows(Stata Corp LP, College Station, TX, USA)を使用し、審査期間は承認申請日から承認日までの期間として算出しました。

日本について、対象はPMDAウェブサイトの「新医薬品の承認品目一覧」※4に掲載されている医薬品とし、品目数は審査報告書ごとに集計することを基本に、同一成分の品目を複数企業が同時申請した場合や併用薬物療法にて複数成分が承認された場合は1品目として集計しました。NMEの集計は、申請区分が新有効成分含有医薬品に該当するものを対象としました。

米国は、FDA Center for Drug Evaluation and Research(CDER)が承認した「CDER Drug and Biologic Approvals for Calendar Year」※5に掲載されているNew Drug Application(NDA)およびBiologic License Application(BLA)に該当する医薬品を対象としました。NMEの集計は、「CDER New Molecular Entity(NME)and Original Biologic Approvals Calendar Year」に掲載されている医薬品を対象としました。

欧州は、EMAが中央審査方式にて承認し、「European Medicines Agency Annual Reports」※6に掲載された医薬品を対象としました。NMEの集計は、「New active substance」に分類されている医薬品を対象としました。

薬事上の特別措置として、日本では優先審査、迅速審査、希少疾病用医薬品、先駆け審査指定制度※7、条件付き早期承認制度を、米国ではPriority Review、Accelerated Approval、Orphan、Fast Track、Breakthrough Therapyを、欧州ではAccelerated Assessment、Orphan、Conditional Approval、Exceptional Circumstances、Priority Medicine(PRIME)を対象に集計しました。

3. 結果

(1)新医薬品の承認品目数の日米欧比較

過去8年間(2015年~2022年)の日本、米国、および欧州で承認された新医薬品の品目数を図1に示しました。日本において2022年に174品目が承認され、そのうちNMEは52品目でした。これは過去8年間で最多でした。米国では2022年に112品目が承認され、そのうちNMEは37品目でした。欧州では2022年に164品目が承認され、そのうちNMEは56品目でした。政策研での集計開始以来、欧州の承認品目数は2021年に次ぎ2番目に多く、NMEも過去最多でした。

図1 過去8年間の日米欧の承認品目数
図1 過去8年間の日米欧の承認品目数
注:引用資料のデータ更新および再集計にともない、過去の公表データ中の数値が修正されている場合がある。
出所:PMDA、FDA、EMAの各公開情報をもとに医薬産業政策研究所にて作成

(2)薬事上の特別措置を受けた承認品目数(NME)

日米欧で過去5年間(2018年~2022年)に承認されたNMEのうち、薬事上の特別措置を受けた品目数について調査しました(図2)。

図2 薬事上特別措置を受けたNMEの全NME数に対する割合
図2 薬事上特別措置を受けたNMEの全NME数に対する割合
出所:PMDA、FDA、EMAの各公開情報をもとに医薬産業政策研究所にて作成

2022年に日本で承認されたNME52品目中、優先審査(希少疾病用医薬品、先駆け審査指定制度を含む)は21品目(40.4%)、迅速審査(優先審査を除く)は0品目、希少疾病用医薬品(先駆け審査指定制度を含む)は18品目(34.6%)、先駆け審査指定制度の指定品目は1品目(1.9%)、条件付き早期承認制度の適用対象品目は0品目でした。優先審査、希少疾病用医薬品のNME数の割合は2021年同様に過去最高水準でした。このほか、新型コロナウイルス(COVID-19)への対応として特例承認に係る品目が7品目(うちNME2品目)、緊急承認に係る品目が1品目でした。

米国では2022年に承認されたNME37品目中、Accelerated Approvalを受けた品目が6品目(16.2%)であり、2011年以降で最多となった2021年14品目と比較して減少しました。Priority Reviewは24品目(64.9%)、Orphan指定品目は20品目(54.1%)、Fast Track指定品目は12品目(32.4%)、Breakthrough Therapy指定品目は13品目(35.1%)であり2021年と同水準でした。

欧州では、2022年に承認されたNME56品目中、Accelerated Assessmentは5品目(8.9%)、Orphan指定品目は21品目(37.5%)、Conditional Approvalを受けた品目は8品目(14.3%)、Exceptional Circumstancesは7品目(12.5%)、PRIME指定品目は8品目(14.3%)でした。2022年はConditional approvalが減少した一方、Exceptional Circumstancesは2014年以降最多であり、PRIME指定品目は2020年の9品目に次いで多い承認数でした。

(3)新医薬品の審査期間の日米欧比較

日米欧で2022年に承認された新医薬品の審査期間(月数)を前年と比較した結果を表1に示しました。2022年承認品目の審査期間(中央値)は日本9.4ヵ月、米国11.0ヵ月、欧州12.4ヵ月であり、日本の審査期間(中央値)が最小となりました。NMEに関して2022年承認品目の各審査期間(中央値)は日本10.8ヵ月、米国11.0ヵ月、欧州14.0ヵ月であり、日米の審査期間(中央値)は同程度でした。

表1 日米欧の新薬審査期間
表1 日米欧の新薬審査期間
注1:引用資料のデータ更新および再集計にともない、過去の公表データ中の数値が修正されている場合がある。
注2:日本の2021年の特例承認9品目、2022年の特例承認7品目および緊急承認1品目は通常の審査プロセスと異なるため、承認品目数にのみ含めた。
出所:PMDA、FDA、EMAの各公開情報をもとに医薬産業政策研究所にて作成

(4)薬事上の特別措置を受けた品目の審査期間

2022年承認品目のうち審査期間の短縮を目的とした薬事上の特別措置(日本:優先審査、先駆け審査指定制度、米国:Priority Review、Breakthrough Therapy、欧州:Accelerated Assessment、PRIME)を受けた品目について表2に示しました。

表2 薬事上特別措置を受けた品目の審査期間
表2 薬事上特別措置を受けた品目の審査期間
※日本の優先審査に、先駆け審査指定制度、希少疾病用医薬品を含む
注:引用資料のデータ更新および再集計にともない、過去の公表データ中の数値が修正されている場合がある。
出所:PMDA、FDA、EMAの各公開情報をもとに医薬産業政策研究所にて作成

日本の2022年の優先審査品目承認数は、全承認品目(37品目)、NME(21品目)であり、審査期間(中央値)はそれぞれ8.4ヵ月、9.1ヵ月でした。PMDAの設定する目標※8の通り、37品目中31品目が9ヵ月以内に承認されました。また、先駆け審査指定制度の指定品目としてNMEの1品目が承認されており、審査期間はPMDAが目標とする6ヵ月を達成しました。2022年は公知申請品目の承認が多く、通常審査品目承認数は2021年より増加しましたが、通常審査の審査期間(中央値)は2021年と同程度でした。

米国の2022年のPriority Review指定品目の承認数は、全承認品目(40品目)でNME(24品目)とともに2021年より少数でした。審査期間(中央値)はそれぞれ8.0ヵ月、8.0ヵ月と2021年と同じでした。また、審査期間の平均値はそれぞれ14.5ヵ月、16.9ヵ月と2021年と比べて増加し、審査期間のばらつき(標準偏差)も大きくなりました。FDAは目標値※9としてPriority Reviewでは90%の品目でレビュー開始から6ヵ月以内に完了すべく定めていますが、本稿では審査期間を初回の申請日から承認日までと定義しており、FDAのレビュー期間に加え申請者がデータ再提出等に要した期間も含む総期間を示しています。また、審査資料の段階的提出等は考慮していません。Priority Review指定品目のうち20品目はレビュー開始以降に申請者がデータ再提出を行っており、本稿で定義した審査期間(申請から承認までに要した期間)としては長くなっていました。Breakthrough Therapy指定品目については、16品目(うちNME13品目)が承認されており、審査期間(中央値)はそれぞれ11.5ヵ月、11.0ヵ月でした。2021年同様に日本の先駆け審査指定品目よりも多い指定品目数となりました。

欧州では、Accelerated Assessment指定品目が全承認品目で5品目(すべてNME)であり、日本や米国より優先的に審査を受けた品目は少数ですが、2022年のAccelerated Assessment指定品目の審査期間(中央値)は8.3ヵ月と、指定のない品目と比較して4ヵ月以上短くなっていました。

(5)審査期間の中央値の年次推移(日米欧)

日本、米国、および欧州で承認された医薬品の承認年ごと(2000年~2022年)の審査期間(月数)を表3に、審査期間の中央値の年次推移を図3に示しました。NMEについては日本の審査期間が大幅に短縮した後の2013年から2022年の期間を調査対象とし、承認年ごとの審査期間(月数)を表4に、審査期間の中央値の年次推移を図4に示しました。

調査対象の全期間における審査期間の中央値は、日本10.9ヵ月、米国10.1ヵ月、欧州13.2ヵ月でした(表3)。2022年は日本9.4ヵ月、米国11.0ヵ月、欧州12.4ヵ月と2021年同様の審査期間を維持しており、中央値としては日本が最小でした。年次推移で見ると、2011年に日本で大幅な審査期間の短縮が行われて以来、米国と比肩する審査期間(中央値)でおおむね10ヵ月程度であり、欧州の審査期間も2015年からは短縮(約12ヵ月)しています。

NMEについて調査対象の全期間における審査期間(中央値)は、日本10.3ヵ月、米国9.7ヵ月、欧州14.1ヵ月でした(表4)。2022年の審査期間(中央値)は、日本10.8ヵ月、米国11.0ヵ月、欧州14.0ヵ月であり、米国で審査期間(中央値)が2021年と比べ3ヵ月増加したものの、日欧では2021年と同程度の審査期間でした(図4)。

図3 審査期間(中央値)の年次推移(全承認品目)
図3 審査期間(中央値)の年次推移(全承認品目)
出所:PMDA、FDA、EMAの各公開情報をもとに医薬産業政策研究所にて作成

図4 審査期間(中央値)の年次推移(NME)
図4 審査期間(中央値)の年次推移(NME)
出所:PMDA、FDA、EMAの各公開情報をもとに医薬産業政策研究所にて作成

表3 審査期間(月数)の推移(全承認品目;2000年~2022年)
表3 審査期間(月数)の推移(全承認品目;2000年~2022年)
注1:引用資料のデータ更新および再集計にともない、過去の公表データ中の数値が修正されている場合がある。
注2:日本の2010年の特例承認2品目、2020年の特例承認1品目、2021年の特例承認9品目、2022年の特例承認7品目および緊急承認1品目は通常の審査プロセスと異なるため、承認品目数にのみ含めた。
出所:PMDA、FDA、EMAの各公開情報をもとに医薬産業政策研究所にて作成

表4 審査期間(月数)の推移(NME;2013年~2022年)
表4 審査期間(月数)の推移(NME;2013年~2022年)
注1:引用資料のデータ更新および再集計にともない、過去の公表データ中の数値が修正されている場合がある。
注2:2020年の特例承認1品目、2021年の特例承認6品目、2022年の特例承認2品目および緊急承認1品目は通常の審査プロセスと異なるため、承認品目数にのみ含めた。
出所:PMDA、FDA、EMAの各公開情報をもとに医薬産業政策研究所にて作成

(6)バイオ医薬品の審査期間の日米欧比較

近年バイオ医薬品の存在感が増しており、前報の医薬品市場の上位100品目の世界売上高の割合において半数以上を占めることが報告されています※10。バイオ医薬品の高い指向能力から高い有効性や画期性が期待される結果として、薬事上特別措置を受けやすく審査期間が短縮する傾向があるのではないかと仮説を立て、バイオ医薬品に係る承認期間および特例措置の面から各地域の比較分析を実施しました。

日本、米国、および欧州で承認されたバイオ医薬品のNMEにおける承認年ごと(2013年~2022年)の審査期間(月数)を表5に示しました。日本では集計年全体では137品目のバイオ医薬品がNMEとして承認され、全体の審査期間(中央値)は10.3ヵ月でした。特に2022年は過去最多となった2021年の24品目に次ぐ23品目が承認されました。米国での承認は115品目であり、集計年全体の審査期間(中央値)は10.1ヵ月でした。欧州での承認は160品目であり、集計年全体の審査期間(中央値)は13.6ヵ月でした。比較として非バイオ医薬品のNMEにおける承認年ごと(2013年~2022年)の審査期間(月数)を表6に示しました。バイオ医薬品と非バイオ医薬品の審査期間(中央値)を比較すると、2022年は日本でそれぞれ11.4ヵ月、10.4ヵ月と同程度であり、欧米ではバイオ医薬品の審査期間(中央値)のほうが短く、バイオ医薬品の該非が審査期間に与える影響は小さいという結果でした。日米欧いずれにおいてもバイオ医薬品は非バイオ医薬品と同程度の審査期間が見込めるといえます。

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    医薬産業政策研究所「世界売上高上位医薬品の創出企業の国籍 —2021年の動向—」政策研ニュースNo.67(2022年11月)

表5 バイオ医薬品の審査期間(月数)の推移(NME;2013年~2022年)
表5 バイオ医薬品の審査期間(月数)の推移(NME;2013年~2022年)
注1:引用資料のデータ更新および再集計にともない、過去の公表データ中の数値が修正されている場合がある。
注2:2021年の特例承認5品目、2022年の特例承認1品目は通常の審査プロセスと異なるため、承認品目数にのみ含めた。
出所:PMDA、FDA、EMAの各公開情報をもとに医薬産業政策研究所にて作成

表6 非バイオ医薬品の審査期間(月数)の推移(NME;2013年~2022年)
表6 非バイオ医薬品の審査期間(月数)の推移(NME;2013年~2022年)
注1:引用資料のデータ更新および再集計にともない、過去の公表データ中の数値が修正されている場合がある。
注2:2020年の特例承認1品目、2021年の特例承認1品目、2022年の特例承認1品目および緊急承認1品目は通常の審査プロセスと異なるため、承認品目数にのみ含めた。
出所:PMDA、FDA、EMAの各公開情報をもとに医薬産業政策研究所にて作成

(7)再生医療等製品の承認数の日米欧比較

本稿の集計では、日本はPMDAウェブサイトの「新医薬品の承認品目一覧」に掲載されている医薬品としたため、再生医療等製品は対象外となっています。また、米国もFDAの「CDER Drug and Biologic Approvals for Calendar Year」に掲載されている医薬品としており、再生医療等製品に相当する製品は対象外です。一方で欧州は、「European Medicines Agency Annual Reports」に掲載された医薬品を対象に集計しており再生医療等製品に相当する製品も対象に含まれます。

ここでは、日本における再生医療等製品に相当する製品の日米欧における近年の承認数について報告します。日本は、PMDAウェブサイトの「新再生医療等製品の承認品目一覧」※11に掲載されている医薬品とし、品目数は承認・一変別が「承認」として記載されたものを対象としました。集計期間は現行の薬機法の施行後である2015年以降を対象としました。米国は、FDAウェブサイトの「Approved Cellular and Gene Therapy Products」※12に掲載されている医薬品を対象として初回の承認を受けた年にて集計しました。欧州は、EMAが中央審査方式にて承認し、「European Medicines Agency Annual Reports」に掲載された医薬品のうち、Advanced therapy medicinal products(ATMP)指定※13を受けて承認された品目を対象としました。

日本、米国、および欧州で承認された再生医療等製品に相当する製品の新規承認数(2015年~2022年)および2022年末時点で日米欧いずれか2極以上の承認を受けた製品数を図5に示しました。日本では2015年から2022年までに15製品が新規に承認を受けており、うち7製品は欧米いずれかまたは両方で承認を受けた品目でした。製品名、各極での承認年および審査期間を表7に示しました。

米国および欧州では2015年から2022年までにそれぞれ19製品および20製品が新規に承認を受けており、それぞれ12製品、13製品が2022年末までに日米欧の2極以上で承認を受けていました。日米欧いずれも新規に承認を受けた品目数が増加しており、また日米欧いずれか2極以上で承認を受けたグローバル製品の承認が増えていることがわかります。図6では承認を受けた再生医療等製品の対象疾患分類を示しました。抗悪性腫瘍剤が最も多く、日本では感覚器官、神経系を対象とした製品が複数承認を受けています。

表7では日本における再生医療等製品の承認年および審査期間を同一製品の欧米の審査期間と比較しました。表7で示した7品目のうち4品目は欧米初回承認から1年以内に日本でも承認を受けていました。また、審査期間については7品目のうち5品目が10ヵ月以内に承認を受けており、欧米と同等以上に短期間での審査完了が見込めるといえます。

図5 再生医療等製品の新規承認数(2015年~2022年)
図5 再生医療等製品の新規承認数(2015年~2022年)
出所:PMDA、FDA、EMAの各公開情報をもとに医薬産業政策研究所にて作成

図6 再生医療等製品の疾患分類
図6 再生医療等製品の疾患分類
出所:PMDA、FDA、EMAの各公開情報、「明日の新薬(テクノミック制作)」のATC分類をもとに医薬産業政策研究所にて作成

表7 日米欧いずれか2極以上で承認を受けた再生医療等製品(全7品目)
表7 日米欧いずれか2極以上で承認を受けた再生医療等製品(全7品目)
注:引用資料のデータ更新および再集計にともない、過去の公表データ中の数値が修正されている場合がある。
出所:PMDA、FDA、EMAの各公開情報をもとに医薬産業政策研究所にて作成

4. まとめ・考察

本稿では、日本、米国、および欧州で2022年に承認された新医薬品の承認品目数および審査期間について、各規制当局の公表情報をもとに集計、調査しました。

2022年の承認品目数は過去8年間において、全承認品目数とNME数のいずれも日米欧で高水準であり、薬事上の特別措置件数も2021年同様の水準でした。日米欧いずれも通常審査の審査期間(中央値)と比較して薬事上の特別措置を受けた品目の審査期間(中央値)が短縮しており、措置の効果が得られていました。

2022年に日本で承認を受けた全品目を対象とした審査期間の中央値は9.4ヵ月であり欧米と比較して日本が最小でした。日本で承認を得るまでの審査期間が欧米と同程度以上であることは、新規医薬品への迅速なアクセスを達成するために非常に重要な要素であると考えられ、今後も同水準の維持が期待されます。また、COVID-19への対応として2021年の特例承認9品目がありましたが、2022年も特例承認7品目および緊急承認1品目が承認されており、COVID-19流行への対応の活発化、迅速化が進んだと言えます。

一方で2022年に米国で承認を受けた品目の審査期間の中央値は全承認品目で11.0ヵ月と平年並みであったものの、平均値は19.5ヵ月となりました。2022年に米国で承認を受けた112品目では、既発売製品が10品目以下の企業※14による製品が63品目(56.3%)であり、2021年の114品目における55品目(48.2%)から増加しました。2022年に米国で承認を受けた品目のうち、既発売製品が10品目以下の企業による製品の審査期間の中央値および平均値は12.0ヵ月および20.0ヵ月とそれ以外の企業の審査期間の中央値および平均値(それぞれ10.0ヵ月および18.8ヵ月)より長く、既発売品の少ない企業による承認数が多かったことが2022年の審査期間に影響した可能性が考えられます。なお、欧州では小規模の企業に対する薬事サポート制度があり、2016年から2020年の間にこれらの企業による承認申請の成功率が2倍以上に増加したとのことです※15。PMDAにおいても従来の対面助言・事前面談に加えて主に大学、研究機関、ベンチャー企業を対象としたレギュラトリーサイエンス総合相談およびレギュラトリーサイエンス戦略相談の仕組みが提供されています※16

薬事上の特別措置として、重篤な疾患に対して高い有効性が期待される医薬品について先駆け審査指定制度、Breakthrough Therapy、PRIME等がありますが、欧米のBreakthrough Therapy、PRIME件数と比較すると日本の先駆け審査指定制度による承認件数は少なかったです。このことが日本における画期性の高い医薬品アクセスへ与える影響は未解析ですが、欧米と同水準の医薬品アクセスを維持向上するには、現行の薬事上特例措置を最大限有効活用するほか、さらなる工夫が必要となる可能性が考えられます。

バイオ医薬品該非別の調査に関し、品目数は日米欧いずれも2021年同様に過去最高水準であり、審査期間はバイオ医薬品該非別にかかわらず同程度でした。また、再生医療等製品の承認数は日米欧いずれも近年増加しており、米欧いずれか2極以上の承認を受けるグローバル製品数も増加していました。審査期間については製品ごとのばらつきが見られるものの、日本での審査期間は10ヵ月程度に収束する傾向も認められました。バイオ医薬品、再生医療等製品等、モダリティーにかかわらず一定の審査期間が見込める点は革新的医薬品の早期上市へのハードルを下げる点で重要と考えられます。欧米と同等以上の審査の迅速さの維持に加え、革新的技術やCOVID-19のような不測の事態に対する対応の柔軟性が今後も期待されます。

(医薬産業政策研究所 主任研究員 吉浦 知絵

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