トピックス 「第11回 日台医薬交流会議」開催される

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2023年10月5日に「第11回 日台医薬交流会議」が対面およびオンラインのハイブリッド形式で開催されました。2023年は2019年以来の台湾・台北での開催であり、台湾衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)署長の呉秀梅氏をはじめ、台湾薬事当局および産業界から多くの参加がありました。また日本からも厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、産業界から合計24名が訪台しました。

主催・協賛団体関係者による当日の集合写真 主催・協賛団体関係者による当日の集合写真

本交流会議は、2013年11月5日に締結された「医療品規制に関する協力の枠組み設置のための公益財団法人交流協会(日本側)と亜東関係協会(現・台湾日本関係協会、台湾側)との間の取決め(略称「日台薬事規制協力取決め」)を踏まえ、2013年12月に第1回を台北で開催してから11回目となるものです。「日台薬事規制協力取決め」では、日台間の薬事規制に対する相互理解と協力へ向けたプラットフォームの設定・日台の規制当局に対する協力要請等を行うこととしています。このような背景から、日台の薬事当局・産業界の協力体制の基盤形成を進めるとともに、各テーマについて掘り下げた発表・討論が行われてきました。新薬に関しては、日本で承認された新薬を台湾で効率的・迅速に上市するための新薬審査協働スキームが整備され対応が進んでいます。今回の交流会議では、医薬品・医療機器関係者から、日本・台湾あわせて650名(現地参加約200名、オンライン参加約450名)以上が参加しました。デジタルツールを利用した臨床試験の推進、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策や双方の医療保険制度に関して、日台の最新情報を共有しました。

日本側の主催は公益財団法人日本台湾交流協会、協賛として独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)・製薬協等が行っています。厚生労働省医薬局総務課国際薬事規制室長の古賀大輔氏、PMDA理事の矢田真司氏等、日本の規制当局、製薬協の中川祥子常務理事(国際担当)をはじめとする製薬協・一般社団法人日本医療機器産業連合会(医機連)等、関係各所から多くの方が参加しました。

台湾側は、台湾日本関係協会主催のもと、衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)・財団法人医薬品査験センター(CDE)・衛生福利部中央健康保険署(NHIA)・台北市工商会医薬品医療機器部会(JCCI PMDC)・台湾製薬工業同業公会(TPMA)・台湾研究開発型生技新薬発展協会(TRPMA)・中華民国開発性製薬研究協会(IRPMA)・台湾後発品協会(TGPA)・中華民国製薬発展協会(CPMDA)・台湾医療器材工業同業公会(TMBIA)・中華民国医療器材商業同業公会全国連合(TFMDCA)の協賛となっています。

1. Keynote Speeches

医薬品・医療機器に係る規制のアップデートとして、台湾側からTFDA、日本側からPMDAの最新状況の発表がありました。

PMDAからは、日本の創薬を取り巻く環境が変化したこと、日本発の新薬が少なくなってきており、創薬力が落ちてきていること、PMDAとして医薬品開発を早期からサポートする体制を構築していることの説明がありました。革新的医薬品のアクセス改善や、日本・米国・EUの薬事連携を深めるために、PMDAはアジアと米国に海外拠点を設置し、アジアでは規制当局との連携、米国ではベンチャー企業等の日本開発支援等、産業界との連携を考えて進めている旨の紹介がありました。

TFDAからは、医薬品安全性のモニタリング、再生医療の開発に関する規制、分散化臨床試験(DCT)等の最新動向について解説がありました。医薬品・医療機器の展望については、もっと便利にプラットフォームから情報を得ることができること、将来を見据えた政策策定を考えていることの紹介がありました。また品質管理を含め、国際的な規制上の連携も行っているという話がありました。

2. RWE/RWDを利用した臨床試験の推進

リアルワールドエビデンス(RWE)/リアルワールドデータ(RWD)に関する取り組みに関して現状の紹介がありました。

台湾側からは、バイオバンクの取り組みについて紹介がありました。台湾ではBiobank Management Actが制定されており、(1)broad consent(バイオバンクで集めた情報に関しては、新たに同意を取る必要がない)、(2)data safety management、(3)commercial benefit feedbackの3つの特徴があるとのことでした。台湾には複数のバイオバンクがありますが、効果がいまひとつであったとのことで、バイオバンクの連携を促進し、バイオバンクのお互いの情報を活用できるよう、2019年10月にNational Biobank Consortium of Taiwan(NBCT)を設立しました。NBCTには、血液サンプルだけでなくゲノムも含まれ、重要なバイオテクノロジー・リソースを目指しています。また、NBCTは34のバイオバンクから構成され、データは電子カルテから集められます。NBCTはCommon Data Modelを作り上げているところで、健康保険データを利用しています。現在、First Stepとしてデータの構造化段階です。NBCTを利用したPrecision Medicineのパイロットプロジェクトとして、6種のがんに関する2000名分のRWDを集積しており、本プロジェクトのゴールは、医療者や企業研究者に有益な情報をもたらし、医薬品開発や保険償還にRWEを利用するというものであるとのことでした。2023年8月までに1164名分のデータを集め、治療に結びついた事例も得られているとのことで、今後の成果に期待したいです。

厚生労働省からは、希少疾病のように患者数の少ない疾患では、臨床試験を実施することが困難であり、その結果、希少疾病や難病の医薬品等の開発が困難になっている現状があり、それを打破するためRWDを医薬品開発に利用しようとする動きが国際的に盛んになっていること、RWD活用を推進するため、日本においては、レジストリを医薬品承認申請等に活用するためのガイドライン、レジストリの信頼性を確保するための考え方に関するガイドラインを策定するとともに、相談体制を構築したことが述べられました。RWDの適切な活用を推進することにより、長期間かかるコストの高い臨床試験に代わり、より少ない症例数で短期間かつ低コストで行える試験での評価が可能になることが期待されます。

3. 新薬審査協働スキームについて

本セッションでは、新薬審査協働スキームに対する取り組みに関する現状および今後の方向性について紹介がありました。

PMDAからは、本スキームのパイロットが始まった2017年以前には、国際的にリライアンス・スキームはなかったこと、審査報告書を活用する事例はあったものの、各国で相手国のものを分析して独自に活用していたのみであったこと等の振り返りがありました。各国の薬事当局は革新的医薬品の自国への導入が必要な中、リライアンスは重要となってきていること、日台の新薬審査協働スキームはまさにそうした活動であり、両当局間で実務協力を強化してきた旨の話がありました。さらなる拡大のための検討として、適応範囲(承認後1年以内)の拡大について、市販後の安全性データの取り扱いの検討等を含めて、今後両当局間でより良いやり方を目指していきたいこと、次のステップとして、日台以外の国への拡大、新薬から適応拡大等の対象の拡大、利用を促すためのQ&Aの拡充等を考えている旨の話がありました。

TFDAからは、現在までに活用された5つのケースについて紹介がありました。まだ利用されているケースは限定的ですが、利用を促進するためのさまざまな施策が検討されていることから、今後より利用しやすい制度になっていくこと、またその経験を蓄積することでさらに本スキームを発展させることを期待しています。

4. 再生医療について

再生医療製品について、規制および承認品目事例について紹介がありました。

TFDAからRegenerative Medical PracticeはGTPに準拠する必要があること、再生医療製品はGMP、GDP、GCPに準拠する必要があり、TFDAへの許可・申請・承認取得が必要であること、Regenerative Medicinal Productsの臨床試験はリスクレベルに応じて3カテゴリ(標準審査:45日、Need AC:150日、Fast Track制度適用:30日)に分けられること、審査プロセスは新薬と同じであり、TFDAは申請・承認状況等のタイムコントロールをウェブサイトで公開し、企業にとっても進捗の把握が可能となっている旨の話がありました。

PMDAからは、The Act on the Safety of Regenerative Medicine(Safety Act)と、The Act on the Pharmaceutical and Medical Devices(PMD Act)が2014年に日本で施行され、Safety Actに関して、本法の見直しを図るためのワーキンググループが設置されGene Therapyを対象に含めることが検討中であること、PMD Actに関して、現在、再生医療等製品20品目が承認され、その約半数の9品目がGene Therapy製品であり、日本はがん領域、次いで眼科領域製品が多いこと、またPMDAでは、全製品の審査報告書を英語で公開している旨の紹介がありました。

5. 健康保険制度

両当局から薬価制度の紹介がありました。

厚生労働省からは、日本の医療費や薬剤費の状況、薬価制度・算定ルールおよび費用対効果評価制度について紹介がありました。新薬の薬価算定ルールに関して、イノベーションを促進するため有用性・新規性が認められた場合の特別加算があること、薬価改定の改定率は、薬価と市場実勢価の差を考慮して決定していること等の紹介がありました。

NHIAからは、台湾における保険制度および薬価制度の現状について共有がありました。西洋薬、漢方薬合わせて約2万5000品目の医薬品が保険収載されていること、台湾で細胞治療やゲノム治療等の新薬が出ているため、健康保険の面では新しいチャレンジがあること、保険収載のスピードを上げる施策としてConditional Listingを検討している旨の話がありました。

ドラッグ・ラグやドラッグ・ロスの課題が近年浮き彫りになっていますが、透明性と予見性をより明確にし、官民が協力して医薬品市場の魅力を上げていくことで投資を呼び込み、患者さんの医薬品アクセス向上につながる仕組みが必要であると考えます。

なお、日台医薬交流会議の翌日にNHIAに訪問し、より良い保険制度についても意見交換を行いました。

製薬協国際委員会アジア部会の小山辰也委員(写真左)とNHIA署長の石崇良氏(写真右) 製薬協国際委員会アジア部会の小山辰也委員(写真左)とNHIA署長の石崇良氏(写真右)

6. 総括

2013年に始まった本交流会議は今回で11回目を迎えました。これまでの取り組みの中で、新薬案件でも、2015年に台湾でのGCP査察制度の見直し、2016年に台湾の簡略審査制度に日本を追加、2019年に日台で新薬審査協働スキームに関するポジションペーパーの発行等、両当局間で確実な調和・協働が進んでいます。今後も、本交流会議を通じてコミュニケーションをとり、薬事当局・産業界が相互理解と信頼を深めていくことが不可欠であると感じます。

2024年は日本で開催予定です。これまでの協働を官民でさらに発展させ、日本および台湾の医薬品、医療機器に関する規制調和・協力、相互の規制制度の理解を促進し、必要な患者さんにいち早くお届けできる体制を官民で構築していくことを願ってやみません。

(国際委員会アジア部会 台湾チーム 小山 辰也池上 真悟

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