トップニュース 「製薬協会長記者会見」を開催 上野裕明新会長が所信表明

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2023年5月25日、ベルサール飯田橋駅前(東京都千代田区)にて、「製薬協会長記者会見」を開催しました。本会見では、同日に開かれた「第268回 製薬協総会」で新しく選任された上野裕明会長から所信表明が行われるとともに、「イノベーションが躍動する国を目指して」と題して、製薬業界が直面する厳しい環境と、製薬協が今後注力していく取り組みが語られました。会見は会場参加とオンラインのハイブリッド形式で行われ、22社29名の報道関係者が参加し活発な質疑が交わされ、製薬業界が向かう姿への高い関心がうかがえました。以下、上野会長の発表内容と質疑応答を紹介します。

会長会見の様子 会長会見の様子

イノベーションが躍動する国を目指して

製薬協 上野 裕明 会長                                         

1. 会長就任にあたって

COVID-19パンデミックを通じて

今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより社会・経済活動の停滞、医療現場のひっ迫、都市ロックダウンといったことが世界的に、また同時期に発生し、これまでわれわれが経験したことのないような大きな影響を世界に与えました。そのような中、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンや治療薬が創製され、日常生活を取り戻すきっかけの1つとなり、改めて感染症におけるワクチンや治療薬の有用性も再認識されました。

特にコロナ禍の前、mRNA技術は実用化されていませんでしたが、基礎研究は継続的に実施されており、今回のパンデミックを機にその技術は一気に実用化されました。また一方で、社会におけるさまざまなデジタル技術が普及かつ実装され、新たな生活様式や仕事のあり方が可能になりました。

改めてコロナ禍を経験して感じることは、mRNAワクチンに代表されるように、常日頃から新しい技術を大切にし、育てようと研究を続けること、いざという時に産学官が一体となり、スピーディな実用化に取り組むことの重要性です。すなわち、スピード感のあるイノベーションが正常化へのキードライバーであるということ、そしてそれを実現するためには、平時からの備えと、いざという時の瞬発力が重要だということです。

製薬産業の役割

製薬産業の役割は、イノベーションをスピーディに生み出し、それを患者さんへ届け、国民のみなさんや国・社会に貢献することだと考えます。そして、その貢献には2つあり、まず1つは患者さんや国民の「健康への貢献」ということです。まだまだ残っているアンメット・メディカル・ニーズに対して、革新的新薬を創出し続けなければなりません。そしてそれらを日本のみならず、世界の人々にも届けることで、世界中の人々の健康寿命の延伸に貢献していくことにつながります。

もう1つは、国や社会の「成長への貢献」です。製薬産業は知識集約型の産業であるため、天然資源に恵まれない日本に適した産業です。日本発の革新的新薬を創製することで、高い担税力と外貨獲得を通じた経済成長へ貢献するとともに、科学技術を牽引していく役割を担っていると認識しています。

これらの2つの貢献を通じて、製薬産業が基幹産業としてその役割を果たすためにも「企業の競争力強化」と「国家戦略としての産業政策」のかけ合わせが重要と考えます。

日本の製薬産業に対する危機感

私が今、「強く」感じている日本の製薬産業に関する危機感についていくつかお話しします(図1)。

図1 日本の製薬産業に関する危機感
図1 日本の製薬産業に関する危機感

1つ目は、日本発の新薬の創製が鈍化しているということです。特にそれは新規モダリティにおいて顕著になってきていると考えます。すなわち、治療薬のモダリティが進歩、多様化する中、十分にキャッチアップできていないのではないかということです。

2つ目は、国民の新薬へのアクセスが低下している懸念です。ご存じの通り、ドラッグ・ラグやドラッグ・ロスが拡大しています。そのような中にあって、海外の技術、資本、人材が呼び込めない環境になりつつあるのではないでしょうか。

3つ目として、医療安全保障上のリスクです。新薬でもジェネリックでも、医薬品の多くの原材料を海外に依存している状況です。その中で、必要な医薬品が十分に安定供給できていないという状況も顕在化しています。

そして4つ目が、これらの背景にある社会保障のあり方です。すなわち高齢化に伴う社会保障費の伸びに設けられるシーリング(上限額)、あるいは薬価改定に偏った財源捻出、こういったものだと考えます。

このような危機感のもと、日本の創薬イノベーションの状況を見ると、日本発の新薬の創製は鈍化し、またイノベーションの評価が不十分な状況にあるのではないか、そしてこれらが悪循環に陥っているのではないかと感じます。すなわち、イノベーションの評価の仕組みが十分でないために、せっかく日本から良いものが創製されたとしても十分に評価されず、次の研究開発投資を積極的に実施できない。そういった悪循環です。加えて、日本でのイノベーションの評価が不十分であれば海外からの新薬も入りづらい状況となり、海外の新薬が日本の患者さんに届かない、すなわちドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの拡大につながります。この悪循環を断ち切るには、「日本の創薬力強化」と「イノベーションの適切な評価」、この両方が必要と考えます。

目指す姿

悪循環を断ち切り、日本の創薬力強化によって日本発の新薬が継続的かつスピーディに患者さんに届けられ、またイノベーションが適切に評価されれば、その成果を次の研究開発へ早期に再投資することができ、好循環が実現されます。

また、海外発の新薬も日本にもち込まれ、日本の患者さんにも届くことでドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスも解消されるでしょう。さらに、日本発の新薬が世界に届くことによって、世界中の患者さんに貢献でき、その結果、外貨獲得機会にもつながり、日本経済にも貢献できます。つまり、日本の創薬力強化とイノベーションの適切な評価、それぞれを実現するだけではなく、これらをうまくつなげて循環させる。こういったことを目指して、今後、製薬協として取り組んでいきたいと考えております。

2. 製薬協の取り組み

日本の創薬力強化

従来、日本が強かった低分子創薬の時代から、サイエンスや技術の進歩によって新しいモダリティでの創薬が実現可能となり、創薬の幅が広がってきているのはみなさんご認識の通りです。

それとともに、創薬スタイルというものが大きく変わってきました。すなわち、モダリティが変化、多様化するに伴い、それらの製造法や、評価方法が変化し、多様になっています。このような環境の中でイノベーションを生み出すためには、さまざまなプレーヤーがかかわるエコシステムの存在がますます重要となり、それらのプレーヤーがいかにうまく連携して、スピード感をもってイノベーションを生み出すか、これがカギとなります。

新しい創薬スタイルにおいては、1社だけでイノベーションを生み出すことは難しく、さまざまなプレーヤーが参画したエコシステムを構築して、そこからイノベーションを生み出すことが重要となってきます。特に新規モダリティにおいては、技術革新のスピードが速いため、早期から要素技術の目利き力をもって社内に取り込むことが必要となっているうえ、研究初期から製造まで見据えた投資が必要であり、早いタイミングで大きな投資判断が求められるようになっています。

従来の低分子医薬をベースにした創薬スタイルでは、基本的には化学合成という基幹技術をそれぞれの製薬会社がもっており、研究から開発、あるいは製造に至るまで、自社の中で見出し、作り、届けることができました。もちろんそういう中にあっても、アカデミア、スタートアップ、あるいは医薬品開発業務受託機関(CRO)等との協業はありましたが、それは単発的なものが多かったと考えています。

しかしながら、モダリティが低分子からさまざまな新規モダリティに至ることによって、創薬スタイルも変化し連携のあり方も変わってきます。それはターゲット探索のための基礎研究だけではなく、新規モダリティ等の製品化に至るためのさまざまな機能において、高い技術をもっているパートナーとの協業、連携が必須となります。

それらは一対一の関係でなく、複数のパートナーとの連携が必要となり、その中で生み出されたイノベーションをわれわれ製薬企業が責任をもって実用化し、承認を取得して患者さんに届ける。そういった姿を実現するためには、4つのポイントが重要だと考えております。

1つ目は創薬基盤技術の実用化、2つ目がスタートアップの持続的起業と育成、3つ目が新規モダリティの製造力の強化、そして4つ目がデータ利活用の基盤整備です(図2)。それぞれの取り組みについて簡単にご紹介します。

図2 創薬エコシステムに重要な4つのポイント
図2 創薬エコシステムに重要な4つのポイント

まず1つ目の創薬基盤技術力の実用化です。日本のアカデミアは、創薬シーズ探索や創薬基盤技術開発につながる非常に高い基礎研究力をもっていると考えています。ただ残念ながら、アカデミアのそういった新しい基礎研究がなかなか実用化につながっていっていない状況にあると認識しています。この状況を変えるために、アカデミア研究者と企業研究者とが強力に連携して、基礎研究から創薬基盤技術開発を目指す仕組みを構築したいと考え、取り組みを始めています。

その仕組みは、単に資金的なものだけではなく、人材であり、物資であり、技術の交流、そして、循環がカギであり、われわれが積極的にアカデミアと交流することによって、実用化の道をさらに広げる、あるいは加速化することにつながると考えています。

次に2つ目のスタートアップについてです。これまで日本ではスタートアップの数が少ない、そして、成功事例も乏しかったと認識しています。創薬シーズの多くがスタートアップから生まれている米国の現実を見れば、日本でもスタートアップの育成が課題です。

政府において、創薬ベンチャーエコシステムの強化を目指した事業が開始され、スタートアップの資金面やハンズオン支援の土台になると期待しています。本事業の出口戦略の強化は極めて重要であり、それに対して製薬協としても協力していきたいと考えます。

製薬業界としては、資金だけではなく、知識・ノウハウ、人材リソースの面からもスタートアップの起業と育成を支援し、早い段階からシーズをもとにした連携を進め、そのシーズが育った暁には、製造技術をもった新しいパートナーとも一緒になって、イノベーションの実用化を目指していきます。

3つ目は、新規モダリティの製造力強化についてです。多くの製薬企業が有していた低分子医薬の製造技術とは大きく異なり、新規モダリティの製造技術に関しては、専門性を有する医薬品製造受託機関(CMO)/医薬品製造開発受託機関(CDMO)が増えています。ただ、その数やキャパシティーはいまだ十分でなく、「新規モダリティを製造するパートナーが少ない」という声を受け、政府でも、国内の製造設備の支援に取り組んでいます。

その取り組みをさらに加速化するためにも、ハードとソフトの整備が重要だと感じています。製薬企業の製造技術や知見、ノウハウ、および人材を活用し、バイオ医薬品の国内製造拠点の強化に向け、われわれも取り組んでまいりたいと思います。

そして4つ目の健康医療データ等の基盤整備です。これから医療が個別化する中にあって、個人の医療データ、健康データ、リアル・ワールド・データ(RWD)や全ゲノム情報といった健康医療データは非常に大切になります。

ただ、これらの情報は患者さん一人ひとりの大切な情報であり、個人のプライバシーに関する情報も多く含まれています。こういった情報を患者さんが安心して提供することができ、また活用する側も安心して使えるようにするために、国が主導してデータ基盤と法制度の整備、これらを両輪とした総合政策を進めていただきたいと思います。

これまで述べてきた、4つの取り組みは確実にやり切っていきます。しかしそれだけでは十分ではないと考えています。日本の創薬エコシステムに必要な「ミッシングピース」が何なのか、みなさんとともに考えて実行していきたいのです。

たとえば、創薬エコシステム構築に向けた議論は、これまで多くの人々がさまざまな観点で取り組んできました。一方、それらの施策が実効性のあるものとして十分に動かなかったのはなぜでしょうか。その要因の一つとして、私は「ヒト」への取り組みに切り込めていないことだと考えています。単なる人役ではなく、きちんと考えられる人、アイデアやパッションをもった人を企業の中で選抜したうえで送り込み、その人たちがエコシステムの中でつながる、そして、それが知の循環を生む。そういった仕組みをミッシングピースの1つとしてみなさんと議論していきたいと考えています(図3)。

図3 創薬エコシステムが上手く回るために必要なもの
図3 創薬エコシステムが上手く回るために必要なもの

イノベーションの適切な評価

創薬には多大な研究開発投資が必要であり、そのイノベーションを循環させる仕組みが重要となります。そして生み出されたイノベーションが適切に評価されることがなにより重要です。

日本における薬価制度の変遷について振り返ると、日本の薬価制度は2016年までは、2年に1度の薬価改定はあったものの、制度そのものについては大きな変更はなく、比較的安定的なものでした。企業経営をする立場では、予見性のある経営が可能といえます。

しかしながら、2016年以降、イノベーションが適切に評価されない施策が毎年のように、しかも突然に導入されるようになりました。これらの施策は、基本的には薬価引き下げを伴う施策であり、また予見性が低いものであったことから、中長期的な視点が必要な製薬企業の経営にとっては厳しい状況になりつつあります。

次に、日本における過去の医薬品市場の推移、将来予測です。2015年までは日本の医薬品市場は毎年緩やかに上昇してきました。しかしながら、度重なる制度改革によりその後は停滞、あるいは右肩下がりの状況になっており、外部の市場調査結果からもこういった状況は、将来も続くと予想されています。

では、グローバルではどうかというと、毎年プラス3%から6%程度の成長が予想されており、先進国の中で、唯一日本だけがマイナス2%からプラス1%程度の低成長となっています。こういった点からも、グローバルな視点から見れば、日本市場の魅力は低下している、あるいは今後も魅力が低下し続けていくことが懸念されます。

このような環境のもと、日本におけるドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの問題が深刻になってきています。欧米で承認された新薬の5年累計数はここ数年、右肩上がりに増加しています。一方、欧米で承認されているもののうち、日本で承認されていない医薬品の5年累計数は次第に増えています。その割合は2016年では56%であったものが、2020年時点では72%に増えており、いわゆるドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスが拡大しているということがいえます。したがって、現在のような状況が続けば、このドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの問題はいっそう深刻になるのではないか、という懸念を覚えます。

このような課題を解決するために、イノベーションを評価する制度を早急に導入すべきと考えています。2024年度の薬価制度改革に向けて、製薬協として2つ提言しています。

1つ目は新たな薬価維持制度として、「患者アクセス促進・薬価維持制度」の導入を求めます。特許期間中の革新的新薬を市場実勢による改定から除外する制度です。あわせて上市後に得られたエビデンスやガイドラインにおける位置づけの変化等に基づき、価値を再評価する仕組みも提案しております。

2つ目は革新的新薬の新たな価値評価の仕組みです。新たな価値評価プロセスや柔軟な類似薬選定、多様な価値の評価、こういった点を提案しております。これらの制度の実現に向け、取り組んでいきます。

このような私たちが提案する制度のもとで目指す姿としては、特許期間中の薬価が維持されることによって、メリハリのある制度となり、短期間で投資を回収し、その収益を次の研究開発への再投資に速やかに回すことができます。すなわち、早いターンオーバーで創薬サイクルを回すことが実現可能になり、革新的新薬をスピーディに患者さんに届けることができるのではないか、このように考えています(図4)。

図4 イノベーションの適切な評価により、新薬創製サイクルを加速
図4 イノベーションの適切な評価により、新薬創製サイクルを加速

3. イノベーションが躍動する国を目指して

2つの仕組み作りに取り組む

最後に、イノベーションが躍動する国を目指すうえで必要なものはなにか? その考えをお話しします。1つは「日本の創薬力強化に向けた仕組み作り」、もう1つが「イノベーションが適切に評価される仕組み作り」と考えています(図5)。

今後、製薬協としてこれらの2つの取り組みに邁進していきますが、ここで私がこだわりたいのは、「仕組み作り」という言葉です。もちろん日本の創薬力強化やイノベーションの適切な評価という点では、これまでも議論されてきましたが、「仕組み作り」という言葉に込めた想いは、それぞれの施策が単発的、あるいは一時的であってはいけないということです。つまり、各施策の「継続性」や「連動性」をもって効果的に機能することで、初めて「仕組み作り」ということが実現できるものと思っています。

図5 イノベーションが躍動するための2つの仕組み作り
図5 イノベーションが躍動するための2つの仕組み作り

イノベーションを日本から世界へ、世界から日本へ

改めて重要なことは、それぞれの取り組みが連動して、好循環につながるということです。すなわち、日本の創薬力が強化されることで、革新的な新薬がスピーディに患者さんへ届けられます。そしてイノベーションが適切な評価を受けることで、次の研究開発へ早期に再投資が可能となり、新たなイノベーションを生み出すという好循環が実現します(図6)。

図6 イノベーションが躍動する国を目指して
図6 イノベーションが躍動する国を目指して

そして、日本発の新薬が世界に届くことによって、世界中の人々の健康に貢献することになり、また、経済的にも日本の経済成長や担税力強化につながっていきます。さらに、日本でのイノベーションの適切な評価が進むことによって、グローバルに魅力ある医薬品市場が形成され、ドラッグ・ラグやドラッグ・ロスの解消となり、海外発の技術や資本、人材が日本に集まり、日本の創薬力強化につながっていくと考えます。イノベーションをスピーディに生み出し、届け、健康寿命の延伸、経済成長、科学技術の発展に貢献するべく、製薬協として取り組んでまいります(図7)。

図7 イノベーションを日本から世界へ、世界から日本へ
図7 イノベーションを日本から世界へ、世界から日本へ

主な質疑応答

質疑応答の様子"" 質疑応答の様子

現状認識についてうかがいたい。2023年は2022年に比べ国内の物価や賃金が上がり、経済の成長モデルに変わった。一方、防衛費、少子化対策、国民負担の増加に伴い、予算の削減圧力もあり、薬剤費はその一つとなっている。
2024年度トリプル改定を控えて薬剤費がどうなるか。防衛費や子育て支援に大きな予算が付く方向であり、薬剤費は重要な局面を迎えている。製薬協では、いかに薬剤費の中のメリハリをつけるのか、全体の薬剤費をどう広げていくのか、この2点が重要と考え、取り組んでいる。課題としては、必要な医薬品が届かないドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスや安定供給の問題をどう解決するか、薬価制度のあり方についても議論を進めたい。また、われわれだけではできないが、医療費全体として考えることも重要と認識している。
 
波型のイラストのスライドについて(図4)。上の図と下の図では投資と回収の幅が大きくなっている。また、横軸の時間が短くなっている。投資と回収の金額が大きくなるが、時間は短くなるという理解で良いか。
その通り。新薬が創出され、特許期間中の価格は維持され、特許満了後は後発品に譲るため、ビジネスのサイクルが短くなる。特許期間満了後のビジネスを当てにすると再投資のタイミングが遅れるが、収益期間の終わりがわかっていれば、その次の投資のタイミングがおのずと早くなる。またモダリティが変わる中、研究開発コストも増大しており、それに見合う回収がないと次の投資に回せない。
 
製薬企業としてもっと変わらないといけない点、企業が変わらなければならない一番重要なことはなにか。
 
われわれ自身が創薬力をもっと上げないといけない。世界で競合できる力をもたないとグローバルな競争には勝てない。平均か個社かの違いはあるが、早いものは数年、基盤としては5年から10年かかるだろう。役割分担で世界に勝てる力を付けることが重要である。
 
 
イノベーションに対する危機感は伝わってきたが、製薬協がこれまで訴えてきたことがいまだ実現できていない理由をうかがいたい。
 
それが、私が本日話したミッシングピースである。なにがボトルネックなのか、なにが足りないのか、製薬協内でもそのような議論はある。それをまず見つけていく。研究開発、パートナーシップ、システム、薬価といった観点で複数あると思う。1つ1つについて足りないものはそれほど多くない。どのような手を打てるか。人か、物か、金か、仕組みなのか、考えていく。
 
新型コロナワクチンについて。コロナ禍ではワクチンを輸入に頼らざるを得ない状態だった。日本は周回遅れとも言われた。改めてコロナワクチンの国産化の意義についてうかがいたい。
規模・形はどうあれ、ワクチンや治療薬の研究・製造を続けていくことが重要で、それを国がサポートすることで、来たるべきパンデミックに備え、ワクチンが生産できる体制につながると考える。
 
日本の場合、医療用医薬品は公的保険の現物給付である以上、財政でつじつまを合わせる話が必要ではないか。本日の話はどちらかというと、財源支出がプラスの話と感じた。出っ張る部分があれば引っ込める部分も提案したほうが理屈として通るのではないか?
本日のご説明した提言の部分は前会長の時からお話ししていることで、私の役割は提言をいかに実現するかだと考えている。財源の問題も避けては通れない。特許品ではメリハリのある制度となる。財源も含めて話をしていくことになる。大きな考え方はコンセンサスを得つつある。新薬であれば、特許期間が切れた後どういう薬価構造になるかがセットとなる。
 
本日説明にあったような薬価制度は、いつごろ、実現可能と見ているのか? また、日本の市場が伸びていないという説明だったが、望ましい伸び率はどの程度を想定するか?
特許期間の薬価維持と新薬の値付けという面があるが、特許期間の薬価維持をすべからく行うのではなく、「どういうカテゴリのもので行うか」となる。新薬の値付けも同様で、段階的にやるべきだと考える。伸び率に関しては、ここで具体的に申し上げるものではないが、諸外国と比較して、また日本の物価高騰を踏まえて、日本市場が魅力的だと思われる伸び率が必要だと感じる。
 
政府が少子化対策に取り組んでいる。医薬品では、小児適応が長い間課題になっている小児用医薬品について、どのように取り組むか?
 
小児用医薬品にもドラッグ・ラグやドラッグ・ロスがあり、その中には特に希少な疾患の医薬品が含まれると認識している。薬価の問題もあるが、薬事的な施策と合わせて、今後国に対してもそのような薬剤が患者さんに届くよう要望していく。
 

(広報委員会 委員長 泉川 達也

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