トピックス 「第40回 広報セミナー」を開催 ~SNS・Webリテラシーセミナー~

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製薬協広報委員会は、2023年11月13日に日本橋ライフサイエンスハブ(東京都中央区)において、「第40回 広報セミナー」を開催しました。今回のテーマは、「SNS・Webリテラシーセミナー」と題して、昨今、製薬業界でも公式アカウントを設けている企業も多いSNSや、その運用に注目し、デジタルリスクのコンサルティングを行っているジールコミュニケーションズの酒寄雄太氏に講演を依頼しました。

講演の様子 講演の様子

スマートフォンが普及し、日本におけるSNS利用者は2022年末では8000万人を越えたというデータもあります。SNSの利用が当たり前になってきている一方で、情報漏洩や炎上被害等のデジタルリスクも増加の傾向にあり、軽い気持ちで配信した不適切な動画によって、裁判になるケースや損害賠償を請求される事例も報道されています。

今回のセミナーでは、SNSの利用が企業や社会にもたらす影響をきちんと理解する重要性と、使用する一人ひとりのネットリテラシーを高める必要性といった基礎的な内容を説明いただくとともに、ショートトピックスとして、昨今増えてきている各種SNS(例:X、Instagram、LINE)の特徴や、企業としての使い分け、日米の違い等についてもご紹介いただきました。

当日は広報委員に加え、会員各社の広報担当者の方にもオンラインにて聴講いただき、39社約80名の参加がありました。事後のアンケートでは、「SNSは興味のあるテーマでした」といった声が多く寄せられ、関心の高さがうかがえました。また「今回のような基礎的な内容から、より製薬業界に特化した事例や運用方法も聞いてみたい」といった、今後のセミナートピックスに対する要望や期待の声もありました。

以下、セミナー内容の採録を紹介します。

SNS・Webリテラシーセミナー

ジールコミュニケーションズ 酒寄 雄太 氏                             

近年、スマートフォンが普及しSNSの利用が当たり前になっています。SNSとはソーシャル・ネットワーキング・サービスの略で、登録された利用者同士が交流できる会員制サービスのことです。SNSの利用率は全世代で6割程度ですので、日本全体で約8200万人が利用していることになります。そのためSNS上では、多様な価値観や考え方を尊重して、コミュニケーションを行うことが重要です。

最近、SNS利用時のリスクや、炎上というニュースを耳にする機会がよくあると思います。炎上とは、インターネット上において不祥事や失言・暴言等をきっかけに、非難・批判が殺到して、収拾がつかなくなる状態を指します。また、インターネット上で公開された書き込みや個人情報等は、1度拡散されてしまうと完全に削除するのが不可能であることから、タトゥーを完全に消すことが不可能であることに例え、デジタルタトゥーという言葉で呼ばれることもあります。SNSの不適切利用により、自身の個人情報を特定されたり、所属する会社の評価や信頼に影響を及ぼしたりしてしまう可能性が生じます。

ジールコミュニケーションズ 酒寄 雄太 氏

SNS上に発信してはいけない情報に関して事例を4つ紹介します。1つ目は特定の相手を攻撃するような表現、2つ目は差別的な表現です。特に最近は価値観の変化や、多様性の観点から、同性愛や女性蔑視に関しては炎上しやすい傾向があります。以前までは許されていた内容でも、今の社会とズレが生じていないか、1つ1つ確認をする必要があります。

3つ目は、権利侵害に該当する表現です。悪気がなくても友人の写真を無断で投稿したり、放送中のテレビを動画に撮ってSNSで投稿したりといった権利侵害に該当する表現は発信してはいけません(図1)。

図1 権利侵害に該当する表現
図1 権利侵害に該当する表現

なお、権利侵害を未然に防止する策としては、保有者へ確認が取れる場合は、1. 投稿前に必ず許可を取る、2. 個人情報が特定される映り込みを確認する、3. 削除依頼には必ず応じる等が対策になります。権利保有者への確認が取れない場合には、写真のぼかしや、トリミング加工をする等、個人情報が特定できない形で投稿する必要があります。またできる限り人が多い場所で撮影した写真の投稿は避けるというのも重要です(図2)。

図2 権利侵害を未然に防止する策
図2 権利侵害を未然に防止する策

発信してはいけない情報の4つ目は業務に関する情報です。取引先にかかわるような情報や、顧客にかかわる情報、社内人事・決算情報等、基本的に業務上入手した情報の発信は控えてください。

主なSNSの特徴

ここでは、最近よく使われているSNSであるX(旧Twitter)、Threads(スレッズ)、Instagram、LINE、YouTube、TikTokの特徴を紹介します。まずXの特徴ですが、2006年に米国で発表されたSNSです。日本で普及したのは2008年頃からといわれており、20代の利用者が最も多く、国内のユーザー数は第3位のSNSになります。2023年7月に、Twitterからブランド名をXに変更しています。Xの特徴としては、短い文章でのコミュニケーションが中心であり、匿名でも投稿できるため、過激な意見や本音等が発信しやすいという特徴があります。従ってSNSの中で、最も拡散力が強い一方、最も炎上が起こる危険性も高いといわれています。

続いてThreadsです。こちらはFacebookのMeta社によって2023年7月にリリースされた新しいSNSになります。Xと同様20代の利用者が最も多く、リリース後5日で登録者数が1億人を突破する等、話題を集めました。またXは約140字の字数制限がありますが、Threadsは長文での投稿(500文字)が可能であり、より自由に思いや情報発信をすることができるSNSになっています。

次に、Instagramですが、こちらもMeta社のSNSで、2010年6月にリリースされました。基本的にはテキストよりは、画像や動画での投稿がメインとなるSNSです。

続いてLINEです。2011年6月に日本で企画開発され、国内ユーザー数1位のSNSです。LINEは会話が可能なチャット型のアプリとなっており、特徴的な機能としては、メッセージを相手が読んだかどうか確認できる既読機能があります。

5つ目はYouTubeです。こちらは2007年6月に日本語版サービスが開始し、基本的には動画を共有するSNSとなっています。コロナ禍で利用者数が飛躍的に増加し、最近では小学生のなりたい職業の1位がユーチューバーとなる等、注目が集まっています。

最後にTikTokです。こちらは2016年に日本に進出しました。音楽素材や動画編集機能がとても充実しているSNSです。TikTokで投稿された動画は、さらにInstagram等、ほかのSNSで拡散されやすいという特徴があります。

続いて、SNSを企業で利用する際の使い分けについて解説します。例としてXとInstagram、LinkedIn(リンクトイン)の3つを紹介します。まずXですが、拡散性が高いSNSですので、目的としては認知拡大やブランディングに多く利用されています。また、10代から20代の若年層の採用を目的として利用する企業があります。

続いてはInstagramです。SNSの特徴として、画像にURLを貼り付けられる機能や、ライブ配信機能があるので、商品やサービスの紹介等に多く利用されています。ネット販売(EC)サイトへの流入等が効果的に狙えるため商品やサービスの営業目的に使用される特徴があります。

最後にLinkedInです。こちらは、あまり日本では知られていないかもしれませんが、Facebookと類似したSNSで、30代から50代をターゲットとした、よりビジネスに特化したSNSです。LinkedInはダイレクトリクルーティングに適しており、海外ではハイクラスな人材獲得を目的に採用に利用する企業が増えています。

企業の採用活動を目的に利用されるSNSの違いに関してもう少し紹介します。日本では、XやInstagramを企業の採用活動にも使用しているところが増えています。若い世代へのアプローチに適しており、ダイレクトメッセージ(DM)機能があるので直接アプローチすることも可能になります。一方、非常に匿名性も高いので、採用活動に使用した場合、ミスマッチが起こる可能性も高くなるのが特徴です。

一方、海外で採用活動をSNSで行う際には、基本的にはLinkedInで行う企業が多いです。日本のように、XやInstagramを利用するケースはかなりまれになります。LinkedInは、所属している企業や部署・役職等、かなり細かい情報を登録するため、採用活動の際にミスマッチが起こりづらく、正確なターゲティングが可能です。さらに30代から50代の利用者が多いことから、ハイクラスな人材にアプローチすることが可能になるのが特徴として挙げられています。このような日本と海外の違いは、情報精査の能力や、リスクに対する危機管理の差によって生まれているといわれています。

SNS運用体制

次に、SNSの運用体制に関して説明します。SNS運用時の前提として、炎上等のリスクを回避するためのポイントが3つあります。1つ目がリスクの抑制、2つ目がリスクの早期発見、3つ目が有事対応フローの整備です。1つ目のリスクの抑制は、SNS運用ガイドラインや、ソーシャルメディアポリシーの策定、SNS運用担当者への教育等があてはまります。2つ目のリスクの早期発見としては、SNS上での情報監視や、そこから収集したリスクの分析等になります。3つ目の有事対応フローの整備に関しては、危機対応マニュアルの作成や、エスカレーションフローの整備、また有事の際のメディアトレーニング等が該当します(図3)。

図3 SNS運用時の炎上を回避するために必要なこと
図3 SNS運用時の炎上を回避するために必要なこと

ここで重要なことは、3つのポイントは、それぞれ1度策定しただけで終わりではないということです。たとえば、リスクの早期把握で抽出した情報やトレンドを、SNS運用ガイドライン等にしっかりと反映させ、循環させていくことが重要になります。そうすることによって、最新の炎上トレンドや社会情勢を考慮した社内体制が構築されていきます。

次に、SNS運用者の役割です。通常、責任者と担当者を設置し、SNS運用責任者はガイドラインの作成や企画作成、作業指示、投稿内容のチェック等を行います。SNS運用担当者は責任者のもと、実際のSNS投稿や情報収集等を行います。一般的な作業フローとしては、コンテンツの作成は担当者が実施し、作成したコンテンツを責任者がガイドライン等に照らし合わせ確認した後、最後に担当者によって投稿される、という手順となります。

投稿に際し、個人情報に関しては注意が必要です。意外と些細な情報からも、昨今は特定されるケースがあります。次に情報漏洩です。在宅勤務が増えたことで、自宅で撮った写真に社内情報が映りこんでしまうケースも多くなっています。最後にデバイス管理・各種設定に関する注意です。公開範囲の指定や、パスワード管理等、SNSを利用するうえでデバイスの管理や各種設定に関してはトラブルも多く、細かな注意が必要となります。

最後にトラブル発生時の注意点を紹介します。1つ目は、不適切な投稿を行ってしまった際やトラブルに気づいた際は、その時に問題になっていない場合でも放置しないことが重要です。情報自体が拡散されるまで猶予があることが多く、放置せず早めに対処することで、炎上を未然に防ぐことができるケースもあります(図4)。

図4 トラブル発生時の注意点
図4 トラブル発生時の注意点

炎上やトラブルに巻き込まれた場合は、すぐに上司や担当部署へ連絡することが重要です。またトラブル発生時は対応方法を勝手に判断しないことです。たとえば、なにか問題が起きた際に、焦って自分の判断で行動をとってしまうことで、さらに事態が悪化したり、取り返しがつかなくなったりするケースもあります。日ごろから有事対応フロー等で注意点を確認しておくことが重要です。誤った方法でSNS等を利用してしまうと、会社に迷惑がかかるだけでなく、個人情報の漏洩等では自身の人生にとっても大きなマイナスとなります。本セミナーも参考に知識を習得いただきながら、日ごろから正しいSNSの利用を心がけてください。

(広報部長 足立 尊史

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