トップニュース 「製薬協 Rare Disease Day 2024 シンポジウム」を開催

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2024年2月4日に製薬協とRDD Japan事務局※1は、野村コンファレンスプラザ日本橋(東京都中央区)で「製薬協 Rare Disease Day 2024 シンポジウム」を共催しました。以下に当日の講演およびフリーディスカッション、Q&Aの様子を紹介します。

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    Rare Disease Day(RDD):世界希少・難治性疾患の日

製薬協産業政策委員会は、難病・希少疾患とともに生きる方々やご家族が暮らしやすい社会を作るため、2021年10月に難病・希少疾患タスクフォースを立ち上げました。2023年2月には、「希少疾患患者さんの困りごとに関する調査」を実施し、製薬企業が取り組むべき課題として、「情報が少なく、必要な情報の取得に苦労する」「社会による疾患への理解・知識が不足している」「治療選択肢が限られている・根本治療がない」の3つを特定し、2023年7月に、これら課題の解決に向けた「難病・希少疾患に関する提言」を取りまとめました。今回のシンポジウムでは、上記の3つの課題のうち、「情報が少なく、必要な情報の取得に苦労する」「社会による疾患への理解・知識が不足している」に焦点を当て、製薬企業や患者支援団体、患者会、行政の各立場からの課題を共有し、今後の対策等について議論しました。

■開会挨拶

製薬協 森 和彦 専務理事                                     

製薬協は、研究開発志向型企業71社が参画する業界団体で、患者さんの希望、困りごとを把握することが大切と考え、難病・希少疾患タスクフォースを立ち上げ、その解決を目指して活動しています。

今回、初めてRare Disease Dayに関連した製薬協の活動として、本シンポジウムを開催することになり、こうした具体的な取り組みを通じてさまざまな関係者、特に患者さんやご家族の思いをしっかり受け止めていきたいと考えています。

■講演1

難病・希少疾患タスクフォースの取り組み

製薬協 産業政策委員会 難病・希少疾患タスクフォース 石田 雅大 リーダー               

難病・希少疾患の患者さんが抱えている課題を把握するために「希少疾患患者さんの困りごとに関する調査」を実施しました。調査で特定したさまざまな課題から特に重要な3つの課題に焦点を当て、「難病・希少疾患に関する提言」を取りまとめました。

「情報が少なく、必要な情報の取得に苦労する」という課題に対しては、行政や関係者と連携して対策を協議していく必要があり、患者さんが治験情報を簡単に得られる新しい仕組みを厚生労働省の難病対策課と連携して検討しています。

「社会による疾患への理解・知識が不足している」という課題に対しては、難病・希少疾患にかかわりのない方々にも難病・希少疾患の課題について知ってもらう活動が必要と考えています。

「治療選択肢が限られている・根本治療がない」という課題に対しては、必要な薬剤を迅速に患者さんへ届けるための研究開発の推進や薬事制度の整備が求められています。また、希少疾患の領域でも企業が収益を確保し事業を継続するためには、薬価制度の見直しも必要であると考えています。

■講演2

患者の「ために」、患者と「ともに」

特定非営利活動法人 ASrid 理事長/臨床試験にみんながアクセスしやすい社会を創る会 西村 由希子 氏  

特定非営利活動(NPO)法人ASridは、希少疾患・難治性疾患領域の中間機関という立場から、課題に応じて関係者をつなげたり、必要なエビデンス構築のための調査研究を行ったりしています。

また、「臨床試験にみんながアクセスしやすい社会を創る会」では、「患者/家族/医療者の臨床試験情報へのアクセス向上を目指した提言や発信を行い、医療現場と政策に反映する」ことをミッションとし、「みんなで臨床試験情報を「見える化」し、臨床試験に患者/家族/医療者/研究者がアクセスしやすい環境を創る」ことをビジョンとしています。専門的で膨大な情報が「きちんと、正しく、わかりやすく届いているか」を関係者みんなで協議し、要望を適切に伝える活動をしています。産学官患医で連携して議論を進め、2023年12月には、厚生労働省に臨床研究等提出・公開システム(jRCT)改修についての要望書を提出しています。2024年1月には、jRCTが実際に改修され、画面や検索方法がわかりやすくなりました。行政が実施している施策に対して、別の角度から要望を伝えることで適切な改修が進んでいくと考えており、今後も各関係者が意見交換していくことが必要ではないかと思います。患者さんのための情報を、患者さんとともに考えて、みんな(関係者)が一緒に伝えていくサイクルを回していきたいと考えています。

■講演3

難病・希少疾患に関する課題と取組 —家族会の立場から—

Potocki-Lupski症候群家族会 南里 健太 氏                             

Potocki-Lupski(ポトキ-ラプスキー)症候群は、日本で患者数が10人(1歳半~17歳の希少疾患であり、主な症状は言葉が出てこない等の発達の遅れや成長不全等があります。希少疾患に関して感じている課題として、「治療方法(治療薬や療育データ)がない」「情報が少ない」「周囲の認知が少ない」「家族会の運営が難しい(人手、資金が不足)」があります。

親として子どものためになにができるかを考え、Potocki-Lupski症候群の研究をしている東京女子医科大学遺伝子医療センターゲノム診療科教授の山本俊至氏と相談し、情報共有や指定難病への追加を目的として家族会を立ち上げました。現在は、グループLINEやオンライン懇談会、ウェブサイト作成等の活動を行っています。また、子どもの小学校入学時に放課後等デイサービスを探した際には空きがなかった経験から、妻と協力して資金を集め「児童発達支援 放課後等デイサービスHITONOWA南大泉教室」を始めました。

希少疾患に関する環境改善のための提案として、「患者や家族が必要な情報にすばやくアクセスできる環境」「療育に関する施策や取組の効果検証」「教育機関、家庭、施設等で連携し、必要なデータを蓄積し療育に活用していく」等のデジタルデータの活用や、将来のお金や身の回りの不安への対応についても目を向けてもらえればと考えています。

■講演4

希少疾患を取り巻く課題について ~厚生労働省の取組~

厚生労働省 健康・生活衛生局 難病対策課 課長 山田 章平 氏                     

国が難病対策を進めることになった発端は、1964年(昭和39年)以降のスモンの発生であり、1972年(昭和47年)策定の難病対策要綱では、対策の進め方として、1)調査研究の推進、2)医療施設の整備、3)医療費の自己負担の解消、が定められ、1974年(昭和49年)の受給者数は約1万7000人でしたが、近年では約100万人となっています。

以前は予算の範囲内で実施する事業でしたが、社会保障制度として法律を整備し平成20年代は消費税を財源として難病対策の予算を増やし、現在は2000億円ほどになっています。

難病は、「発病の機構が明らかでなく」「治療方法が確立していない」「希少な疾病であって」「長期の療養を必要とするもの」と定義されています。難病の定義を満たすだけでは医療費の助成はありませんが、指定難病の要件である「患者数が本邦において一定の人数に達しないこと」「客観的な診断基準が確立していること」を満たすと医療費助成の対象になります。ほかの行政分野と大きく異なるところは、ニーズや声が大きいところではなく、患者数が少なく声が挙がりづらい疾病から取り組んでいこうというところです。

指定難病の追加に関しては、まず研究班や学会で検討され、そこから厚生労働省の指定難病検討委員会に申請し、要件を満たせば指定難病に指定され、医療費助成の対象となります。最近では、研究班の医師がいない、研究者へのアクセスが難しい、といった相談を受けることがあります。今ある研究班で疾病を追加したり、新たな研究班を作ったりすることができる場合もあるので、連絡してくださればと思います。指定難病は順次拡充しており、2024年(令和6年)4月に341疾病となります。

2023年(令和5年)10月には、福祉や就労支援の強化や、相談支援事業を自治体の必須事業とする施策を進めています。2024年(令和6年)4月には、国の「指定難病患者データベース及び小児慢性特定疾病児童等データベース」(難病・小慢データベース)を研究者だけでなく、製薬企業を含む第三者へ提供していくので、製薬協の加盟会社のみなさんにも活用してもらえればと思います。

フリーディスカッション・Q&A

ディスカッションの様子 ディスカッションの様子

製薬協の「希少疾患患者さんの困りごとに関する調査」で特定された課題に加えて、視聴者のみなさんからいただいた質問について、登壇者でディスカッションを行いました。

1)「希少疾患患者さんの困りごとに関する調査」で特定された課題
「情報が少なく、必要な情報の取得に苦労する」課題について
「社会による疾患への理解・知識が不足している」課題について
2)視聴者からの質問
患者さんが1人しかいない希少疾患を取り残さないために、どのような支援が考えられるか?
製薬協の難病・希少疾患タスクフォースは、継続的に活動できる組織構成や予算となっているか?
診断に時間がかかる課題や未診断時の情報収集の課題を改善するためには、どのような対策があるか?
希少疾患においては医療者の認知も不十分な場合があり、診断が遅れる等、患者さんが不利益を被る課題がある。専門医ではない医療者の認知を高めるために、どのような対策があるか?

また、当日に回答できなかった質問は、以下に回答を掲載しました。

<回答まとめリンク>
https://www.jpma.or.jp/information/industrial_policy/rare_diseases/events/rs40ob0000000wl8-att/shitsugi.pdf

最後に、今回のシンポジウムが難病・希少疾患とともに生きる方々やご家族が暮らしやすい社会を作るための対話の場となり、さまざまな関係者の方々に取り組みの輪が広がることを願っています。

※本シンポジウムの動画はこちらからご覧いただけます。
https://www.jpma.or.jp/information/industrial_policy/rare_diseases/events/jpma-rdd240204.html
 

(産業政策委員会 難病・希少疾患タスクフォース ST2 リーダー 小泉 一二三

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