トピックス 「2023年度くすり相談対応検討会 総会」を開催

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製薬協くすり相談対応検討会は、2023年度総会を5月17日に会場とオンラインのハイブリッド形式にて開催しました(表1)。くすり相談対応検討委員66名に加え、特別講演はオンライン参加での追加聴講を募り、合計102名の参加となりました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が第5類感染症に移行した後ということもあり、会員会社の約半数となる34名が会場にて参加し、企業間における交流を深めることができました。以下、概要を報告いたします。

表1 プログラム
表1 プログラム

くすり相談対応検討会 2022年度活動報告・2023年度活動方針

くすり相談対応検討会の一色義明委員長(当時)より、2022年度の活動報告および2023年度の活動方針について説明がありました。2022年度は重点課題として「くすり相談に関わる情報の収集・分析および会員会社への情報発信」「デジタル活用による顧客の医薬品情報アクセスの向上」「くすり相談に関連する団体等との連携強化」の3つを掲げ、8つの具体的な取り組みに対しての活動報告がありました。2022年度の活動にてアンケート結果等から課題の可視化ができたため、2023年度は打ち手に変えていく1年であるとの説明がありました。

最後に、画像生成A「I Stable Diffusion」、ChatGPT登場によるAIの革新的な進歩に触れ、これらジェネレーティブAI(生成AI)をくすり相談業務の中に技術としてどのように活かし、クリエイティブな活動につなげていけるのかを視野に入れて、さらに発展させていく必要があると締めくくりました。

製薬協 くすり相談対応検討会 一色 義明 委員長(当時) 製薬協 くすり相談対応検討会
一色 義明 委員長(当時)

医薬品情報検討部会 2022年度活動報告・2023年度活動方針

くすり相談対応検討会医薬品情報検討部会の三井士子部会長より、2022年度活動報告・2023年度活動方針について説明がありました。医薬品情報検討部会では、重点課題「くすり相談の現状や課題を把握分析し、タイムリーに情報を発信する」および「くすり相談に入る顧客の声(問い合わせ、苦情、要望等)の活用を促進する」に対して取り組んでいます。薬剤師を対象とした「製薬企業のくすり相談窓口の利用実態及び要望に関するアンケート調査」および会員各社を対象とした「VOC(Voice of Customer)の活用に関するWebアンケート調査」を実施し、現状把握・分析が進められている状況であり、その結果については2023年10月の定例会にて報告される予定との報告がありました。


製薬協 くすり相談対応検討会 医薬品情報検討部会 三井 士子 部会長 製薬協 くすり相談対応検討会
医薬品情報検討部会
三井 士子 部会長

情報提供のあり方構築部会 2022年度活動報告・2023年度活動方針

くすり相談対応検討会情報提供のあり方構築部会の福永孝部会長より、2022年度の活動報告・2023年度活動方針について説明がありました。情報提供のあり方構築部会は、重点課題「デジタル活用による顧客の医薬品情報アクセスの向上」に対して、「新しいシステム基盤(企業横断情報プラットフォーム)の検討」および「MI機能の将来に向けた情報提供のあり方の検討」の2つのテーマで取り組んでいます。「新しいシステム基盤」は、プラットフォームに必要な情報や機能の整理が進められており、2023年度は顧客のニーズをさらに深掘りし、「新しいシステム基盤」のあるべき姿をまとめていくことが報告されました。「将来のMI機能」は、製薬企業を対象とした「コールセンターにおいて電話以外で使用している新チャネル(デジタルツール等)に関するアンケート調査」、ベンダー4社を対象とした「新チャネル(デジタルツール)の技術調査(インタビュー)」を実施し、現状把握に注力してきたので、2023年度はそれらの結果を分析し、他部会のアンケート調査結果等も踏まえて連携をとりながら成果につなげていきたいと締めくくりました。

製薬協 くすり相談対応検討会 情報提供のあり方構築部会 福永 孝 部会長 製薬協 くすり相談対応検討会
情報提供のあり方構築部会
福永 孝 部会長

総会後の参加者アンケートにおいて、両部会で実施されたアンケート結果を待ち望むコメントが多く、関心の高さがうかがえました。

PhindMI促進WG進捗報告

くすり相談対応検討会PhindMI促進ワーキンググループ(WG)の杉本智香子サブリーダーより、PhindMI促進WGの活動報告がありました。医療用医薬品FAQ検索サービスPhindMIは2019年に参加企業5社で発足後、2023年5月時点で16社と着実に拡大し、2019年当時と比較し検索できる製品数は約400製品で約1.6倍、FAQ数は約8000件で約4倍と充実してきていることや、サイト有用性の向上のための取り組みが報告されました。医療関係者にとっての企業横断共通プラットフォームとしての有用性を向上させていくため、2023年度も参加企業の拡大を継続しながら、医療従事者への周知や利用拡大等の各種施策が報告されました。WGとして各社の個別相談にも対応しており、会員各社に向け参加への前向きな検討を依頼しました。


製薬協 くすり相談対応検討会 PhindMI促進WG 杉本 智香子 サブリーダー 製薬協 くすり相談対応検討会
PhindMI促進WG
杉本 智香子 サブリーダー

メディカルリレーション促進WG活動報告

くすり相談対応検討会メディカルリレーション促進WGの若杉昌宏リーダーより、メディカルリレーション促進WGの活動報告がありました。メディカルリレーション促進WGは、くすり相談部門と関連団体との連携強化を目的に2021年に発足したWGであり、主に一般社団法人くすりの適正使用協議会(RAD-AR)、一般社団法人日本医薬品情報学会(JASDI)等との関係構築を進めてきた経緯の説明がありました。今回の総会プログラムでは、RAD-ARと初のコラボ発表が行われました。

RAD-AR理事長の俵木登美子氏からは、くすりのしおりミルシル推進事業の現状報告として、2023年4月末時点で、49社により1187件の患者さん向け資材が、2267のくすりのしおりに連携されているが、これは掲載されているすべてのしおりの約14%であるとの状況が報告されました。くすりのしおりに連携された患者向け情報は、電子カルテ、薬歴管理システム、レセプトコンピューター、おくすり手帳等の医療系システムへのデータ提供も可能となっており、医療関係者および患者さんにいろいろなルートから届くよう取り組みを推進していることが紹介されました。今後、くすりのしおりへの連携資材の登録会社数を増加させるとともに資材数を充実していくことが重要であり、総会参加者に対して、社内の患者さん向け情報取り扱い部署への説明の機会や橋渡しに関する協力依頼がありました。

一般社団法人くすりの適正使用協議会 理事長 俵木 登美子 氏 一般社団法人くすりの適正使用
協議会 理事長 俵木 登美子 氏

製薬協 くすり相談対応検討会 メディカルリレーション促進WG 若杉 昌宏 リーダー 製薬協 くすり相談対応検討会
メディカルリレーション促進WG
若杉 昌宏 リーダー

■特別講演

医療DX推進に伴う保険薬局薬剤師業務の現状と課題
~今後の取り組み~

公益社団法人日本薬剤師会 常務理事 原口 亨 氏                              

講演の冒頭に、原口氏から薬剤師を取り巻くVUCA※1の時代に、薬剤師へ以下の3つを意識して取り組んでいくよう伝えていることが紹介されました。

1. 新たな情報の積極的なインプット(テクノロジーへの理解、制度、政策・規制改革の情報は積極的に取り入れる)
2. 迅速な意思決定と行動(変化を受け入れ、臨機応変に対応する、問題解決に向け考える力を養う)
3. ビジョンの明確化(判断に迷った場合は、薬剤師綱領や薬剤師行動規範に立ち戻る)

原口 亨 氏

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    「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」の4つの単語の頭文字をとり、環境が変化し将来予想が困難で多様化が求められる時代であることを示す造語

講演では「医療分野の情報化と医療デジタルトランスフォーメーション(DX)」「オンライン資格確認・電子処方箋」「薬局薬剤師の情報活動と情報通信技術(ICT)」「薬剤師・薬局DX」の4項目について説明がありました。まさに、オンライン資格確認制度が法制化されたばかりであり、電子処方箋の運用が開始されている過渡期ということで、製薬企業側も、薬剤師の動向を深く理解するうえで非常に有意義な内容となりました

「医療分野の情報化と医療DX」に関して、まず「医療DX」の定義について説明がありました。薬剤師がイメージしやすいように「薬剤師・薬局を取り巻く急速な環境の変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、地域住民や社会のニーズをもとに、業務や医療サービス・薬剤師サービスを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、文化・風土を変革し、新しい価値の提供や課題解決を行う」と言い換えていると紹介がありました。

厚生労働省「医療DX令和ビジョン2030」の中に示された方向性の一つである「全国医療情報プラットフォーム」の概要についても説明がありました。これは、医療保険者、医療機関・薬局、自治体、介護事業者が保有する情報を共有し、医療に活用できる仕組みです。各情報連携に向けて検討されている中で「用法・用量」に関する情報は組み合わせると数百万通りとなり、この膨大なパターンを標準化していくことが大きなハードルとなっているとの実状も紹介がありました。

次に、「オンライン資格確認・電子処方箋」に関しては、オンライン資格確認(2023年4月1日より原則義務化)の導入状況とともに、導入による薬剤師側のメリットとして「直ちに資格確認ができるため、返戻が減少する」や「保険資格の確認作業の効率化が可能になる」「レセプトに基づく各種情報が確認できる」の3点が紹介されました。

電子処方箋に関しては、現時点ではまだ十分に普及されていない状況であるが、医師、薬剤師、患者さんの間で処方箋が発行された時点でリアルタイムに情報が共有される仕組みであることから「患者さんの直近の処方状況が把握できる」「重複投薬等のチェックが入るようになる」「患者さんへの便益(電子処方箋の事前送付、マイナポータルを経由した情報共有)が得られる」等のメリットが得られることが紹介されました。厚生労働省の電子処方箋に関するモデル事業の中間報告(2023年3月末報告)においてもポジティブな評価が多かったことがあわせて共有されました。

「薬剤師の情報活動とICT」に関しては、公益社団法人福岡県薬剤師会の薬事情報センターが実施した、薬剤師会会員を対象とした日常業務の情報活動に関するアンケート調査(回答637件)について一部紹介がありました。新薬、後発品の医薬品情報の収集経路、医薬品情報源の利用頻度が多いツール、希望する情報発信ツールの項目に対してのアンケート結果が紹介されました。また「薬剤師から充実して欲しい情報」として、同効薬の効力比較、副作用の対処方法、妊婦授乳婦に対する情報、適応外使用に関する情報等がニーズとして高いことが共有され、われわれ製薬企業にとっても有用な情報を得ることができました。

最後に、台頭しているAIに関して、現時点では情報の欠損が多いため俯瞰的に判断し有効活用すべきであり、そのために各自判断できるよう自己研さんし活用するテクノロジーを理解することが必要であると締めくくりました。多くの質疑応答も行われ、参加者の講演会への興味の高さがうかがえる会となりました。

閉会の挨拶

製薬協の石田佳之常務理事より、くすり相談対応検討委員への参加に対して謝意を表すとともに、講演をお願いした俵木氏、原口氏へ謝辞が述べられました。

また、2022年度はくすり相談対応に関しての課題を可視化でき、2023年度は解決策を検討していく1年となるため、事務局としてもしっかりサポートしていきたいと述べました。さらに、外部ステークホルダーと密な連携をとっていくことは重要課題であり、製薬協内の各委員会を横断的に俯瞰もしながら、より良い活動を推進していきたいと締めくくりました。

製薬協 石田 佳之 常務理事 製薬協 石田 佳之 常務理事

(くすり相談対応検討会 委員長 盛田 敦子

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