トピックス 「第5回 ICHフォーラム:ICH Quality Guideline Update」を開催

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2023年12月13日、厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、製薬協の共催で「第5回 ICHフォーラム:ICH Quality Guideline Update」を開催しました。本フォーラムでは、医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use、ICH)のQガイドライン(品質ガイドライン)のうち、Q2(R2)/Q14ガイドライン(分析法バリデーションの改訂および分析法の開発)、Q5A(R2)ガイドライン(ヒトまたは動物細胞株を用いて製造されるバイオテクノロジー応用医薬品のウイルス安全性評価)、Q9(R1)ガイドライン(品質リスクマネジメント)およびQ13ガイドライン(原薬および製剤の連続生産)について、改訂および作成作業に携わった専門家から概要が説明されたほか、最新科学およびリスクの観点からパネルディスカッションが行われました。また、ICHガイドラインの検討に功績があった専門家を表彰する「ICHアワード」について、日本から受賞した2名に記念品が贈呈されました。

開催要領

ICHでは、各ステークホルダーへのICHガイドライン理解促進のために、オンラインや各ICH地域でトレーニングの取り組みをサポートしています。本フォーラムも日本におけるステークホルダー・エンゲージメントの取り組みの一環として、ICHの基金により厚生労働省、PMDA、製薬協の共催で開催しました。今回は、その5回目の開催となりました。

本フォーラムは、表1に示すように午前から午後にかけて、各ガイドラインに関する講演とパネルディスカッションが行われました。午前の最初にICH Awards授賞式が行われ、その後、ICH最新動向概要をテーマにパネルディスカッション、PMDAの松田嘉弘氏によるICH Qガイドラインの最新動向と展望についての講演が行われました。その後、休憩をはさみながら、Step 4に到達したICH Q13、ICH Q5A、ICH Q9(R1)、ICH Q2(R2)/Q14の状況が各ワーキンググループの専門家から紹介されました。最後に、作成されたガイドラインの内容を受ける形でパネルディスカッションが行われました。

なお、本フォーラムは、会場である東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)での現地参加とオンライン参加とのハイブリッド形式での開催とし、事前質問および現地での当日質問を受け付ける形で実施されました。講演資料はこちら(https://www.pmda.go.jp/int-activities/symposia/0140.html )をご参照ください。

表1 プログラム
表1 プログラム

ICH Awards授賞式

ICHガイドラインの検討に功績があった専門家を表彰する「ICHアワード」が2022年に新設され、今回が2年目となります。日本からも2名が受賞し、厚生労働省大臣官房審議官の吉田易範氏を通じて、ICHからの記念の盾が受賞者に贈呈されました。製薬協の関係者として、2023年まで医薬品評価委員会ICH S1B(R1)のトピックリーダーを務めた久田茂氏が受賞しました。

ICH Awards授賞式の様子 ICH Awards授賞式の様子

パネルディスカッション

ICH最新動向概要

午前のパネルディスカッションでは、ICHの現状と課題についてディスカッションが行われました。パネルディスカッションのテーマとして、ICHメンバーシップが先進国だけでなく新興国にも拡大し、それに伴うトレーニングの重要性や効率的なワーキンググループの運営等が討議されました。

トレーニングについては、まず製薬協ICHプロジェクト委員会の横田昌史委員長より、トレーニングの概要(公開説明会の充実、トレーニングツールの多様化、トレーニング・アソシエイツへの業務委託等)が説明され、その後パネリストからトレーニング資材の重要性やトレーニングの評価プロセス等が議題に挙がり、ディスカッションが行われました。

効率的なワーキンググループの運営については、ポストコロナを踏まえたICH運営に関するコスト意識と、効率的な議論の実施への課題提起が行われました。製薬協ICHプロジェクト委員会の柳澤学副委員長から、製薬協は創設産業団体としての存在感を堅持し、ワーキンググループの議論に貢献することにより、製薬協での活動が世界へとつながっていくというメッセージが示されました。

午前のパネルディスカッションの様子 午前のパネルディスカッションの様子

最新科学とリスクに基づく医薬品開発(ICH Qガイドラインの観点から)

午後のパネルディスカッションでは、「連続生産実用化への展望と課題、企業と規制当局側の品質リスクコミュニケーションのあり方について、Analytical QbDへの期待と課題」をテーマとし、ディスカッションが行われました。今回、講演された4つのトピックが同時期にStep 4に到達したこともあり、以下の4テーマを中心に討論が行われました。

(1) 連続生産、分析QbD新ガイドラインへの期待
(2) 新しいガイドラインの課題
(3) 品質リスクコミュニケーションについて
(4) ICHガイドラインの浸透に向けて

パネルディスカッションに登壇した専門家からは、ガイドライン作成の背景等が丁寧に説明され、ガイドラインは概念的な内容ではあるが、文書として発出されたことによって、企業が導入にチャレンジしやすくなったと考えること、品質領域では、新しい手法が開発され、技術の進展が進む一方で、規制当局と産業界のコミュニケーションが円滑に進まなかったが、その解決の手段の一つとして、ガイドラインが言語化されたことにより、コミュニケーションが進むようになることが期待されること等のコメントがありました。

午後のパネルディスカッションの様子 午後のパネルディスカッションの様子

まとめ

今回、講演およびパネルディスカッションでは、新しいガイドラインの作成の経緯や内容が説明されるとともに、新しいガイドラインの実装(トレーニング)について議論されました。

ガイドラインを作成した専門家が共通してコメントしていたこととして、「ガイドラインに例示を含めて詳細な記載を試みるとガイドライン自体のボリュームが多くなってしまい、書ききれないことが多い。よって、結果的には、ガイドラインの記載自体は、シンプルで概念的な内容になっていることが多い。その記載を補足する資料として、多くのワーキンググループでは、ガイドライン作成後にトレーニング・マテリアルを作成する作業をしている。ガイドラインを作成したことですべてが解決したわけではなく、規制当局と産業界が議論する基礎作りができたと考え、コミュニケーションを行うことが重要である」ということが印象に残りました。

また、複数の規制当局の専門家からは、「新しい技術は、1つの会社だけでは開発できない。産業界全体で議論を進めていきたい。共有すべき知識(自社だけでは解決できないこと)もあるため、新たな技術を世間に知ってもらうために戦略的にさまざまな発信をしてもらいたい」というメッセージもあり、改めて規制当局と産業界とのコミュニケーションのみならず、産業界の各社間での情報共有と情報発信の重要性を考えさせられました。

(ICHプロジェクト委員会 小林 剛

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