トピックス 「第4回 日本-ベトナム合同シンポジウム」開催される

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2023年12月5日に、「第4回 日本-ベトナム合同シンポジウム」が独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)およびベトナム医薬品管理局(DAV)主催で開催されました。製薬協およびベトナム日本医薬品同盟(JPAV)が協賛団体として運営に協力しました。本シンポジウムは両国の薬事の相互理解を深め、医薬品規制のより良き発展を目指すことを目的としています。2019年10月の第1回開催以来、4年ぶりの対面開催がかないました。医薬品の販売承認に関する規制の最新情報、革新的な医薬品へのタイムリーなアクセス、医薬品の適正使用の促進の3つのテーマで、両当局から講演がありました。

シンポジウム会場の様子 シンポジウム会場の様子

はじめに

シンポジウムはハノイ(ベトナム)のプルマンホテルを会場とし、オンライン聴講も加えたハイブリッド形式で開催されました。会場には日本から渡航した参加者も含め90名ほどが集まり、オンライン参加者を加えると総数は380名でした。うちベトナム側の参加者数は当局より12名、産業界から240名で、日本側の参加者を上回り、本シンポジウムへの関心の高さもうかがえました。

PMDA理事の新井洋由氏からの開会のあいさつ、DAV副局長のLe Viet Dung氏による開会のあいさつと基調講演でシンポジウムが始まりました。新井氏からは、開催関係者への感謝とともに、PMDAの経験や知識の共有が、ベトナムの制度改正、患者さんへの医薬品アクセスの向上に貢献すること、本シンポジウムを通じた薬事規制の理解と両国・アジア・世界の発展につながることへの期待が述べられました。Le Viet Dung氏は開催関係者への感謝と、2023年がベトナム・日本外交関係樹立50周年であることに触れ、ベトナム製薬産業が日本との経済連携協定の枠組みの中でさらなる成長を遂げること、本シンポジウムにおける新たな情報共有を通じて両国が協力事業を実施できることへの期待を述べました。

続いて、PMDA国際部長の田中大祐氏から基調講演として、PMDA発足以来の歩みと経験が共有されました。人員の拡充と審査期間の短縮、アジア医薬品・医療機器トレーニングセンター(PMDA-ATC)を通じたアジア各国へのキャパシティ・ビルディングの実施、国立研究開発法人国立がん研究センターを中心としたアジアがん臨床試験ネットワーク事業による連携、2017年以降のベトナムと日本の医薬品規制当局間の協力、医薬品承認審査におけるリライアンスの活用を紹介し、最後にPMDAからベトナムへの協力体制について述べました。リライアンスに関する説明の場面では、説明内容をカメラに納めようと、会場から多くのフラッシュが光り、リライアンスに対する関心の高さがうかがえました。

1. 医薬品の販売承認に関する規制の最新情報

日本側は厚生労働省国際薬事規制室の黒岩健二氏より、アジアにおける厚生労働省とPMDAの取り組みとして、アジアンネットワークミーティング、シンポジウム、2国間会合、PMDA-ATCの活動と、コロナ禍の取り組みとして特例承認制度および緊急承認制度、ポストコロナの取り組みとして今後に備えた緊急承認制度適用の見直しが検討されることを報告しました。

ベトナム側からはDAV医薬品登録部門次長のNguyen Tuan Anh氏より、ベトナムの主要な薬事規制と医薬品登録制度のアップデート、国際協力・国際調和活動、今後のDAV活動の方向性の説明がありました。2022年以降に新しく公布された、医薬品・医薬品原料の登録に関する通達、生物学的同等性(BE)試験を要する医薬品に関する通達、技術移転および委受託製造医薬品の登録に関する通達について、以前からの変更点として、電子申請の導入、輸入品登録時の要件である製剤証明(Certificate of Pharmaceutical Product、CPP)およびこれに準ずる法的文書の記載事項の緩和、今後の識別コードの活用や、BE試験を要する医薬品成分の倍増等について解説しました。国際協力活動として、東南アジア諸国連合(ASEAN)PPWG(Pharmaceutical Product Working Group)によるJACG(Joint Assessment Commitment Group)プログラムへのベトナムの参画や、リライアンスとレコグニションのワークショップへの参加が紹介されました。国際協力の点では、登録審査にかかわる人員不足について触れ、リライアンス・パスの必要性が強調されました。今後について、2024年中に薬事法の改正が予定されていること、オンライン申請システムの整備と申請資料の電子化、一次元バーコードや二次元コードを利用した医薬品情報の電子化が計画されていることを共有しました。

2. 革新的な医薬品へのタイムリーなアクセス

日本側からはPMDA新薬審査第四部の川路啓太氏より、日本における新医薬品の審査体制および承認後のライフサイクルの管理について講演がありました。新医薬品の審査体制については、PMDA審査チームとして進められ、申請者が効率的な開発ができるよう当局相談により助言も行われること、申請から承認までの時間は通常の品目の場合は12ヵ月以内、優先審査品目は9ヵ月以内であること、一部の審査報告書は英訳され公表されること等を紹介しました。承認後の管理としては、承認事項一部変更申請や軽微変更届出、再審査・再評価制度があること、製造所の定期的なGMP適合性調査も必要とされること、これらの制度を活用して承認後も有効性・安全性を評価、品質を担保できる仕組みが整えられていると説明しました。

ベトナム側からはDAV医薬品事業管理部門次長のHoang Thanh Mai氏より、ベトナムにおけるオーファンドラッグおよび特別な治療ニーズを満たす医薬品の輸入許可に関する規定について話がありました。オーファンドラッグ、特別な治療ニーズを満たす医薬品に関する輸入許可基準および許可申請については2017年の政令で定めており、オーファンドラッグの許可要件として、公表されるオーファンドラッグリストに収載されていること、他国で流通が許可されていることという2点が求められ、特別な治療ニーズを満たす医薬品(緊急性を要する医薬品および抗中毒、拒絶反応抑制薬、HIV、がん、結核、マラリア薬、ワクチン等)のうち、たとえばワクチンの場合、その品質、安全性、有効性を保証する海外製造業者および供給者のコミットメントが求められるといった要件について解説しました。

3. 医薬品の適正使用の促進

日本側からはPMDA安全性情報・企画管理部の養老真紀氏より、医薬品適正使用への取り組みとして、日本の医薬品安全性監視システムとPMDAによる情報提供業務に関して紹介しました。市販後の副作用情報をもとに医薬品の適正使用を検討する必要があり、行政、製造販売業者、医療関係者、患者さんといった関係者が協力して取り組むことの重要性を強調しました。PMDAは安全対策として副作用情報の収集や分析・評価、添付文書の改定等を行っており、安全性情報はウェブサイトやメール配信サービスにより迅速に提供していること、日本の添付文書の電子化の経緯についても説明しました。

DAVからは医薬品品質管理部門次長のTran Thi Phuong Thanh氏より、ベトナムにおける規格外医薬品と偽造医薬品の取り扱いについて講演がありました。

品質管理活動として、保健省や各地方当局による製造所査察や医薬品品質管理センターによる市場からのサンプリングが実施されて、薬事法違反があれば処分も行っている旨説明がありました。市場からの回収の対象となるのは、未承認、規格外医薬品や表示の間違い、海外で回収対象になっているもの等で、過去5年の回収件数が減少していること、また市場モニタリングにおける規格外品も10年間で減少の傾向にあることが報告されました。偽造医薬品に関しては、その検出率が10年を通して0.1%以下であったことは良好と見ている一方で、その対策を困難にしている理由として、ベトナムは長い国境があり密輸が多く、中でも偽造医薬品は小型で持ち込みが容易かつ利益率も高いこと、製造や供給元に関する情報に小売店や消費者の関心が薄いこと、オンライン購入が増えてきていることを挙げました。今後の対策方針として、法整備や、製造から販売までのネットワークによる製品管理、査察の強化、近隣国との協力に加え、米国やEU、オーストラリア、日本の管理体制も参考にするといった案も示しました。

最後に

テーマごとに設置されたQ&Aセッションでは、会場からいくつも質問が挙がり、設定時間いっぱい議論が行われました。DAVからの参加者やベトナムの業界団体からは日本当局に対し、申請が多く対応が間に合わない場合はどう対処するのか、アジア・ASEANの複数国がすでに採用しているPMDAの審査報告書を利用した審査における情報はどのように共有されるのか、副作用情報の入手後どう対応するのかといった具体的な質問が寄せられ、情報や経験の共有への期待の高さがうかがえました。一方で、設けられたテーマの中で各当局が採り上げる内容が大きく異なるところもあり、両国間で議論するテーマの選択の難しさも感じられました。

質疑を交わす製薬協国際委員会アジア部会ベトナムチームの
松田玲奈サブチームリーダー

質疑を交わす製薬協国際委員会アジア部会の今井亮翔副部会長

閉会のあいさつでは、新井氏とDAV副局長のLe Viet Dung氏より、久しぶりの対面での会合をハノイで実施できたことへの喜びと感謝、そして両国のさらなる協力・連携強化への期待が述べられました。

DAV、JPMA、JPAVの交流の様子

4年ぶりとなった対面開催のシンポジウムは、関係者の入れ替わりで対面開催の経験者が少なく、ベトナム国家安全保障の観点からベトナム外務省への国際会議開催許可申請が新しく求められるようになり、その運営は簡単ではありませんでした。しかし、開催を迎え、会場で直に関係者と集い議論し、また休憩時間や昼食の間も互いを理解するために言葉を交わすという大切な時間を過ごすことができました。コロナ禍でオンラインをうまく活用できるようになり、本シンポジウムもオンラインで多くの参加者を得ることができた一方、オンラインではかなわないコミュニケーションの重要性とありがたみも改めて実感できました。今後の医薬品の早期アクセスに向け、両国官民の関係性を発展させるプラットフォームはバーチャルもリアルも必要であると強く感じています。

会場参加者全員の集合写真 会場参加者全員の集合写真

(国際委員会 アジア部会 ベトナムチーム リーダー 東山 昌代

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