トピックス 「医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領」改定に関する説明会を開催

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2023年10月13日に「医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領(以下、作成要領)」の改定に関するWeb説明会を開催しました。製薬協会員会社、非会員会社、広告代理店等から約1800名の参加があり、プロモーション用資材作成に関する製薬協の自主基準である作成要領の改定に対する関心の高さ、適切な資材を作成したいという熱意がうかがえました。以下、本説明会の概要について報告します。

会場の様子会場の様子

表1 医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領改定に関する説明会プログラム
表1 医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領改定に関する説明会プログラム

1. 開会挨拶

開会にあたり、製薬協医療用医薬品製品情報概要審査会の近藤充弘委員長より今回の説明会に会員会社、非会員会社、広告代理店各社から約1800名の方が登録いただいたことの御礼が述べられました。

また作成要領改定の目的、改定作成要領の周知期間・運用・本日の説明会の内容についても紹介がありました。

医薬品を適正に使用していただくためには、提供する情報の適切性が最も重要であり、適切性の基準が各社で異なる場合、情報の示し方が不正確な場合は、情報を受け取る医療関係者が正確な判断や評価ができなくなり、最終的には、患者さんに不利益が生じてしまいます。このようなことが起きないようにするには適切な情報を提供できる資材が重要です。作成要領は一定の基準を設けて各社が適切な資材作成ができるように作られています。

正確な情報提供の基本は、各社が作成する資材であり、今後も作成要領にのっとって、適切な資材を作成していただくように注意を促しました。

2. 医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領(作成要領)改定について

製薬協医療用医薬品製品情報審査会より、作成要領の改定について解説を行いました。

説明(1)改定全般について

木村正彦委員は改定全般について説明しました。

医療関係者に対して「誤解をまねくおそれのある内容」を改めるとともに、「より正確に伝えるための内容」とすることを目的に改定しました。

主な変更点は、「製品情報概要等を作成する際の考え方の明確化」「臨床試験等についてより正確に医療関係者に伝えるための変更」「適正使用推進のため学会等が作成する診断・治療ガイドライン等を出典として引用する場合の一部変更」「日常活動性、QOLについて参考情報からの一部除外」「審査会レポートで周知してきた内容についての変更や記載整備」です。

製薬協 医療用医薬品製品情報概要審査会 木村 正彦 委員 製薬協 医療用医薬品製品情報概要審査会
木村 正彦 委員

以下の通り周知期間を設けるものの、今回の改定作成要領を遵守した資材を作成するように理解を求めました。

2023年10月1日改定とする(9ヵ月の周知期間を設ける)
2024年7月1日施行 新規資材:2024年7月1日以降、既存資材:2024年7月以降の資材改定時

説明(2)基本的留意事項・データについて

上秀明委員は改定の主なポイントについて以下の通り、解説しました。

ガイドラインのCQとステートメントに自社医薬品の承認範囲外の記載がある場合には、CQとステートメントは原文のまま記載することとなっていることから、そのCQとステートメントは引用することができないことの追記
ガイドラインに自社医薬品の承認外の記載が含まれる場合は掲載しないことの追記
ガイドラインに自社医薬品の承認外の記載が含まれていたとしても、電子添付文書の効能または効果や用法および用量に関連する注意等に、「最新のガイドラインを参照の上」などの記載があったうえで、特定のガイドライン内の記載が当該薬の承認時に評価されたことがわかる場合、その承認時に評価された部分に限っては、使用可能であることの追加

製薬協 医療用医薬品製品情報概要審査会 上 秀明 委員
製薬協 医療用医薬品製品情報概要審査会
上 秀明 委員

安全性の記載にあたっては、有効性の結果を示す本文と同じかそれ以上の文字サイズで記載することとされているが、「有効性の結果を示す本文」についての解説の追加
評価指標や評価スコアの定義が明確・一般化されたものは参考情報に該当しないことの追加
サブグループ解析の結果を示す場合には、「全体集団の解析を実施している場合には、全体集団の解析結果とともに記載」することの追加

説明(3)総合/特定項目製品情報概要について

竹内裕恵委員は改定の主なポイントについて以下の通り、解説しました。

開発の経緯について海外での承認状況ではなく、海外で承認申請中であることや海外で実施中の国内未承認の疾患の試験については記載できないこと
承認外の効能または効果や用法および用量が含まれる臨床成績を特徴(性)に記載する場合の対応
各臨床試験の結果のみをまとめて記載する場合は特徴と見なさないこと、記載方法の留意点の追加
検証的な解析結果あるいは名目上のP値について明確にわかるように記載することの追加と検証的な解析結果と名目上のP値についての解説
特徴の記載において重大な副作用がない場合についての対応の追加

製薬協 医療用医薬品製品情報概要審査会 竹内 裕恵 委員製薬協 医療用医薬品製品情報概要審査会
竹内 裕恵 委員

対照薬と公平に比較された試験成績における解説の追加
承認時評価資料における冒頭注記の記載内容の変更
試験デザインに検証的な解析項目を明確に記載することの追加
Gate Keeping Strategyや閉検定手順等において、検定の手順が終了した場合の対応の追加
事前に特定の副作用・有害事象について確認することが定められている場合の対応の追加
特定項目版における関連情報の記載変更
原著論文中に安全性に関する記載がない場合の対応方法の変更

説明(4)専門誌(紙)掲載広告・その他の資材について

沖村直昭委員は改定の主なポイントについて以下の通り、解説しました。

GS1バーコードの記載の追加
規制区分への「緊急承認医薬品」「条件付き承認医薬品」の追加
通常広告の広告等DIに記載する副作用については、すべてが記載できない場合は、重大な副作用を記載し、その他の副作用は主なものだけ記載すれば良いことへの変更
「品名のみを主体とする広告」の解説の一部項目を本文へ移動の変更
記事体広告や自社主催・共催の講演会・研究会記録集において臨床試験を掲載する場合、「臨床成績を紹介する冒頭頁の上段に本文より大きなポイントで『「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は○○頁をご参照ください』等と記載すること」の追加

製薬協 医療用医薬品製品情報概要審査会 沖村 直昭 委員 製薬協 医療用医薬品製品情報概要審査会
沖村 直昭 委員

記事体広告や自社主催・共催の講演会・研究会記録集に「見出し・タイトルの記載については、有効性の虚偽・誇大となる表現、安全性の強調・保証となる表現はしないこと」の追加
プレゼンテーション用コンテンツに「試験結果を記載する際には試験デザインに則り記載すること」の追加
自社講演会等で医療関係者に講演いただくことを目的に提供するスライドセットに「自社との利益相反がある場合は、書誌事項とともに記載すること」の追加
自社主催・共催の講演会・研究会記録集の発表者コメントに「治療経験による印象やデータに基づかない感想等は、断定的な表現は避け、有効性、安全性を強調・保証しないこと」の追加
文献別冊に「自社医薬品の有効性に関する文献は、総説、レビュー、記事、寄稿等を含まないこと」の追加

3. 作成要領の科学的な側面について

作成要領を正しく理解していただくため、製薬協医療用医薬品製品情報概要審査会の小宮山靖副委員長より以下について解説が行われました。

P値の意味の解説と、P値の誤用に関する米国統計協会(ASA)の声明が示した原則
検定の論理は背理法であり、差がないことを示せる論理ではないこと
P=0.01等、小さなP値は、強いエビデンスでないこと
検証的な解析によるP値と名目上のP値について
検証の枠組み
内部整合性と外部整合性に基づいたエビデンスの高め方

製薬協 医療用医薬品製品情報概要審査会 小宮山 靖 副委員長 製薬協 医療用医薬品製品情報概要審査会
小宮山 靖 副委員長

多重比較法におけるP値の留意点
サブグループ解析の2つの目的について、(1)有効性や安全性に影響を及ぼす因子の探索的検討、(2)特に注目すべき集団での有効性/安全性の検討

4. 販売情報提供活動と情報提供資材について

厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課広告指導官の古江道顕氏より、本説明会に非常に多くの方が参加されていることから、作成要領改定への関心の高さ、遵守する意識の高さを感じているとお話がありました。また改定については、当課にも事前に連絡があり、改定内容について相談があったことが紹介されました。

監視指導・麻薬対策課が実施している「医療用医薬品の販売情報提供活動監視事業」においても、「医薬品医療機器等法(薬機法)」や「医薬品等適正広告基準」、そして 「販売情報提供ガイドライン」だけではなく、「作成要領」を参考に不適切事例の検討を行い、本事業を推進していることも紹介されました。

また、2022年度の監視事業についても簡単に紹介がありました。2022年度事業を通しての印象として、多くの企業では、社内体制が整備され、プロモーション資材そのものに違反があるというケースは減っています。しかし、作成要領等に基づき、製品情報概要等の資材を適切に作成しても、実際に活用する中で、不適切なプロモーションが報告されていることから、製品情報概要等が適切に活用されるための指導についても、検討するように依頼がありました。

厚生労働省 医薬局 監視指導・麻薬対策課 広告指導官 古江 道顕 氏 厚生労働省 医薬局 監視指導・麻薬対策課
広告指導官 古江 道顕 氏

最後に「本日紹介があった内容をまずみなさんがしっかり理解して、改定された作成要領に準じた製品情報概要等を作成していただき、審査部門では適切に審査をして、適切に情報提供活動に活用されることを期待します」との言葉で締めくくりました。

5. 閉会挨拶

閉会にあたり、製薬協の石田佳之常務理事より参加した多数の方と、本改定にあたって尽力された方々に御礼が述べられました。

行動経済学・認知心理学者の著作を読んで、自分なりに理解すると、人間は、ミスリードされやすいということです。医療関係者の方、製薬会社の方も同様にミスリードされやすい可能性があります。今回の改定は、ミスリードをなくしてより正確に伝えるというコンセプトです。適切に資材を作成したとしてもミスリードされてしまう可能性もあります。押さえるべき点は、適切な資材を作成するだけでなく、適切に説明する方法も確立することではないでしょうか。医薬情報担当者(MR)・メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)に限らず医療関係者の方に、適切な情報提供、プロモーション活動をすることで良い医療に貢献したいと述べました。

製薬協 石田 佳之 常務理事 製薬協 石田 佳之 常務理事

最後に、「改定作成要領をまず理解して、適切な資材を作成していただき、その先には、その資材をどのように適切に活用するか、どうすれば正確に理解してもらえるかについても考えていただきたいのです。そうすることで製薬業界における情報提供の質が高まっていくと思っています」と締めくくりました。

(医療用医薬品製品情報概要審査会 木村 正彦

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