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「第29回 製薬協 政策セミナー」を開催
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製薬協 伍藤 忠春 理事長
■開会挨拶

製薬協 伍藤 忠春 理事長
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われわれ製薬業界はこのところ非常に大きな変動に見舞われています。本日のテーマであるイノベーションの結果、C型肝炎の治療薬と、免疫を介してがんを叩く薬剤が登場しました。このような革新的な新薬の登場は、これまでは世の中から大いに歓迎されることが常でありました。しかし、われわれの業界は税金や保険等の公的な分野との関係が非常に深く、革新的な新薬の登場が薬価制度の抜本改革の議論を引き起こすことになりました。
 このような流れを眺めてみると、われわれ製薬産業には、革新的な新薬を創出するというイノベーションを核としつつ、高い品質を維持しながらコストをいかに下げて効率的に生産するためのイノベーションや、安全性を確保するとともに早く製品化するためのイノベーション等、複数のイノベーションが総合的に求められているのではないかと考えています。本セミナーで、こうした議論が展開されることを期待しています。

日本医療研究開発機構 理事長 末松 誠 氏
■基調講演

AMEDのミッション:創薬イノベーションのための産学連携推進
日本医療研究開発機構 理事長 末松 誠 line03

日本医療研究開発機構の現状

日本医療研究開発機構(AMED)は、2015年4月に発足し、現在年間予算1400億~1500億円で運営されています。発足以来ほぼ2年が経過し、2016年までに研究費の効率的な活用のための「研究費の機能的運用」のルールについて文部科学省、厚生労働省、経済産業省の関係3省庁間との調整が進みました。ただ、大学の研究機関の中にはこのルールの浸透が十分でない点も見られ、いっそうの啓発活動が必要であると考えていますが、相当改善されたのは事実です。
 しかし、研究費の運用ルールの調整が進められただけで医療の研究開発(R & D)が加速されるものではないのは明らかです。なぜなら、スポーツにたとえると、R & Dはマラソンのように1人で全コースを走り切るものではなく、駅伝のように第1走者、第2走者から最終走者にいたるまで、タスキを次々につないでいかなければならないものだからです。そして、タスキの受け渡しを円滑に行う手伝いをするのが、われわれAMEDであると考えています。それはちょうどわれわれの生体内でエネルギーを生み出す、クエン酸回路(TCA cycle)にもたとえられます。TCA cycleでは、アミノ酸、グルコース、脂質の3つの異なる「燃料分子」を材料としてTCA cycle内でエネルギーのもととなるアデノシン三リン酸(ATP)が生成されます。この過程の円滑で急速な進行には触媒システム(電子伝達系)が必須です。R & Dにおいて、ATPに相当する研究の成果を得るための触媒システムにあたるものがAMEDであるともいえるのです。
 しかし、AMED発足当時の医療研究体制に はさまざまな課題がありました。 米国のScience誌の2015年5月8日号に、「Japan's ‘NIH’ starts with modest funding but high ambitions」というタイトルでAMEDについての論評が掲載されました。私はこのタイトルを「ボロは着てても、心は錦」と意訳していますが、この記事は問題点をなかなか的確に捉えていると思います。記事中に「Balkanization」という単語が出てきます。その意味するところは、同じ日本語を話すのに、たとえば、研究者と医師、研究者と官僚、大学と大学、大学と業界で話しが通じない、アイデアやデータが共有できない状態のことです。この約2年間創薬や医療機器開発にかかわってきて、最大の問題と感じたのは、「異なったセクター同士で一見話しが通ったように見えても実際にはそれぞれまったく異なることを考えている」という「Balkanization」の状態にAMEDがあることでした。
 この時思い起こしたのは、40年以上前にプロボクシングのモハメド・アリ氏とプロレスリングのアントニオ猪木氏の間で戦われた「異種格闘技戦」です。この一戦では、事前にルールの調整はあったものの、猪木氏は寝たまま、アリ氏は逃げ回るのみに終始して試合は終わりました。日本の医療研究でも、おそらく駅伝の走者間の関係がアリ-猪木と同様の関係となり、思うように進めることができなかったのではないかと考えています。

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