製薬協について 製薬協について

Topics | トピックス

最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前 pdf
201501タイトル
topics
前へ12345次へ
イギリスにおける医療技術評価(HTA)に関する議論の動向
line03 line03 line03

NICEの評価方法に関する議論

イギリスでは、政府と製薬企業の業界団体との合意に基づく(利益を抑制する)医薬品価格規制制度(Pharmaceutical Price Regulation Scheme、PPRS)という自由価格制度がとられています。2010年5月のキャメロン政権誕生時に、従来のPPRSから「価値に基づく価格づけ(Value Based Pricing、VBP)」への移行が発表され、自由薬価制度も終焉かとみられていました。VBP、すなわち新薬の価格付けの役割がNICEに追加されるともみられていましたが、保健省が具体的な価格付け方法を示さなかったことなどから見送られ、最終的に2013年11月、NICEは価格付けの役割は担わず、価格は従来からの自由薬価の基本原則は変えないことで決着し、改訂したPPRSが2014年から5年間にわたり継続されることが決定しました。
 その一方で、VBPは価格制度としてではなくNICEの評価方法の一部改定として名称を「価値に基づく薬価算定(Value Based Assessment、VBA)として受け継ぎ、2014年秋頃の改定を目指し、改定案を検討することになりました。このVBAでは、「疾病の負担(Burden of Illness、BoI)」や「より広範な社会的便益(Wider Societal Benefits、WSBs)」といった価値要素をどのようにNICEによる評価に取り込んでいくかが議論され、2014年3月にNICEが提案したVBA案に対しパブリック・コメントが実施されました。提案されていたVBA案では、従来のQALYに基づく評価方法で得られた結果を、QALYで導かれたBoIやWSBsによって最大2.5倍まで重み付けするというものでした。
 NICEのVBAの提案に対して製薬協からも意見を提出しましたが、全体としては121の団体や個人から900を超えるコメントが出され、2014年9月にその結果が発表されました。その内容はNICEの理事会資料によると、EoLを1つの価値要素に加える提案に賛同する意見は多かったものの、BoIをEoLに替えて価値要素に組み込むことには同意が得られなかったこと、WSBsをより広範な社会的影響(Wider Societal Impact、WSI)として価値要素に組み込むこと自体には賛同が得られたが、提案された方法に賛同したのは少数であったこと、提案されたように価値要素の重み付けをするのではなく、それぞれの価値要素に重み付けが可能となるような方法に賛同する、といった意見があったことが明らかにされました。
 総合してVBAはイギリスにおける新薬アクセス改善の根本的な問題の解決にはならないとされ、VBA案は賛同を得ることができず、2014年9月17日にNICEは現行アプローチを継続することを発表しVBAの議論は今後より広い観点からNICEの評価プロセスの根本的な見直しが必要とされ、イギリス製薬協(Association of British Pharmaceutical Industry、ABPI)もNICEの改革に協力の姿勢をみせています。

終わりに

今回の紹介の通りイギリスでは、NHSで医療費がカバーされているにもかかわらず、NICEが推奨しなかった新薬についてはさらに公費を用いた基金(CDF)などで新薬アクセスを確保するなどの対応をとらざるを得ない状況にあります。また、TAを導入しているために、薬事承認がされているにもかかわらず公的医療の中で使用されにくい、あるいは使用までに時間がかかるということで、新薬の利用が遅れ、医薬品へのアクセスの制限がもたらされていることがうかがえました。
 イギリスは2015年5月に総選挙を控えていることから、また大きな動きがあることも想定されます。英国ワーキンググループとしては、動向把握などを含め、今後も積極的に活動していきたいと考えています。

国際委員会欧米部会 英国ワーキンググループ

前へ12345次へ
最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前

このページのトップへ