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医療技術評価(HTA)の諸外国での利用状況と課題


医療技術評価(HTA)の諸外国での利用状況と課題
国際委員会 欧米部会 東美恵氏
解説講演(要旨)

製薬協広報委員会は2012年8月24日、製薬協産業政策委員会産業振興部会および国際 委員会欧米部会の東美恵氏によるメディアフォーラムを開催しました。 「医療技術評価(HTA)の諸外国での利用状況と課題」をテーマに、医療技術評価の定義や 費用対効果評価との関係から、欧米各国での導入状況とその影響など、幅広い内容の紹介 があり、多くの記者の方々の参加がありました。講演の要旨は以下の通りです。


医療技術評価と費用対効果

東 美恵氏
東 美恵氏

●医療技術評価
 医療技術評価(HTA)は、EUnetHTAによって「医療技術の利用に関する医学的・社会的・経済的・倫理的な問題についての情報を、システマティックに、透明性を持って、偏見なく、着実にまとめていく学際的なプロセスである」と定義され、その目的は「患者中心の安全で効率的な医療政策を作るために情報を提供し、最良の価値を達成しようとするものである」とされています。HTAは、「費用対効果評価」に加えて「比較対象治療(薬)に対する相対的な有用性」や「社会的・倫理的価値」のすべてを含むものです。

●費用対効果
 費用対効果においては、費用と効果に加えて代替案も比較されます。費用とは、ある疾患について副作用や合併症の治療費まで含み、効果とは、臨床検査値の変化や延命年数、QOLの改善などを含みます。代替案には、従来の標準的な治療方法、無治療や手術が含まれます。これらに基づき増分費用効果比(ICER)で結果が表現されます。
 その効果指標の1つにQALY(質調整生存率、Qualityadjusted Life Year)、すなわち「質(健康に関連するQOL、効用値)」 x「 量(生存年数)」があり、効用値についてはEQ-5Dという5項目からなる患者さんへのアンケート結果を数値化したものです。QALYには数式を使って結果を出すことにより、疾患横断的に評価できるというメリットがありますが、QALYという単一の指標を用いることで、患者さんに対するさまざまな価値を評価から漏らしてしまう恐れがある、というデメリットもあります。

●欧米諸国と日本における「費用対効果評価」の利用
 QALYを「狭義の費用対効果評価」、そして相対的有用性を複数の段階で評価し費用を考慮する手法を「広義の費用対効果評価」とした場合、現在、主要国である日本および英国・ドイツ・フランス・米国のうち、狭義の費用対効果評価を利用しているのは英国だけです。英国では狭義の費用対効果評価は、新薬の償還決定や診療ガイドラインに利用されており、既存薬の再評価にも一部利用されています。一方、広義の費用対効果評価については、ドイツ・フランス・日本では新薬の償還決定に利用されており、フランスでは既存薬の再評価にも利用されています。


質疑応答;東氏と製薬協 仲谷専務理事

●欧米4ヵ国のHTA利用状況

英国
 英国では1999年にNICE(国立医療技術評価機構)が設立され、QALYを指標とする費用対効果評価に基づき、30千ポンド/QALYを上限として、NHS(国民医療サービス)で支払う上限の閾値として医薬品や医療技術の償還に関する意思決定を行っています。この閾値を越えて費用対効果に優れないと判断された場合は、NHSでの使用を実質的に拒否する内容のガイダンスが発行されることになります。
 QALYを指標として評価することにより、高価な薬剤は償還を推奨されないケースが多くなります。2008年~2012年3月の間にNICEで評価された抗がん剤については、59品目中、4割以上の25品目が償還非推奨となっており、その他の医薬品が償還非推奨となる割合を上回っています。

ドイツ
 ドイツでは、2011年に薬剤関連支出を抑制するために「医療品市場再編法(AMNOG)」が制定され、新薬は比較対照薬に対する追加的有用性が評価され、評価結果が価格交渉に使用されることとなりました。また、それまでの自由薬価制度から、AMNOG制定後、自由価格は上市後1年間に限定されています。IQWiG(医療の質・効率研究所)がAMNOG下において、企業が提出した新薬の追加的有用性書類を審査しています。有用性は6段階で評価され、評価が低い場合には、新薬であっても参照価格制度の下で価格が決定されます。また、IQWiGが評価に用いる比較対照薬が医薬品メーカーの要望と異なるなどの問題で、採算割れの懸念があるとして、ドイツでの新薬発売を見合わせるケースが出てきています。

フランス
 フランスでは、公的保険による医薬品の償還率決定、既存治療薬との比較による相対的有効性を含めた評価に基づく薬価決定に、QALYによる費用対効果評価は利用されていません。一部の新薬については上市後に費用対効果評価を導入する予定とされています。

米国
 米国では2009年の米国再生再投資法により、比較効果研究(CER)に11億ドルの資金提供が決定され、当該研究の中心的役割を担う、患者さん中心のアウトカム研究所(PCORI)が設立されました。しかし、PCORIの研究結果を保険償還の推奨に利用することや、診療ガイドライン上の義務とすることは法律により禁じられています。

費用対効果評価の導入による影響

医薬品アクセスの問題
 費用対効果評価が導入された結果、患者さんの医薬品アクセスが問題化しています。具体的には「革新的新薬の利用の遅れ」、「承認後、償還されないことによるアクセス制限」、「承認から償還決定までに時間を要することによるアクセスの遅れ」、そしてドイツでみられる「採算割れ懸念による新薬上市見合わせ」などです。特に英国ではNICEの評価結果に対する患者団体のデモ抗議、さらに英国製薬協がNICEでのQALYに基づく範囲の狭い価値評価の問題点を、保健大臣に指摘する事態となっています。
 英国では2008年~2009年頃から、医薬品アクセスを改善するための政策補完策・救済策が導入されています。QALYによる画一的評価に限界があるとして、2014年から、「負担の高い疾患・アンメットニーズの高い疾患に対する医薬品」、「革新性と進歩がみられる医薬品」、「社会的便益が認められる医薬品」という点も勘案したValue Based Pricingに移行する予定となっています。


以上が今回のフォーラムの要旨でした。

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