トピックス 「第9回 日台医薬交流会議」開催される

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2021年10月14日、「第9回 日台医薬交流会議」が開催されました。当初は台湾での開催を予定しておりましたが、コロナ禍ということもあり、2020年に引き続き、日本側、台湾側ともに、発表者・事務局以外の聴講者はオンラインでの参加となりました。

オンラインでの会議の様子

本交流会議は、日本・台湾間で2013年11月5日に「医療品規制に関する協力の枠組み設置のための公益財団法人日本台湾交流協会(日本側)と亜東関係協会(現・台湾日本関係協会、台湾側)との間の取り決め(略称「日台薬事規制協力取決め」)」が締結されたことにより、2013年12月に台北市で「第1回 日台医薬交流会議」が開催されたことから始まりました。「日台薬事規制協力取決め」の主な内容としては、日台間の薬事規制に対する相互理解と協力へ向けたプラットフォームの設定、および日台の規制当局に対する協力要請等を行うこととされています。このような背景から、双方の協力体制の基盤形成とあわせ、各テーマについて毎回より掘り下げた発表および討論が行われ、新薬に関しては新薬審査協働スキームも進んでいます。そこで今回の交流会議では、医薬品・医療機器関係者から、日本、台湾あわせて800名以上が参加し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策、希少疾病医薬品に関する薬事規制や健康保険制度について最新の情報を共有し、双方の課題について議論することで、アジアにおける高齢社会に対応した革新的な新薬創造に向け、いっそうの相互理解を深めることができました。

日本側は日本台湾交流協会の主催、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、製薬協の協賛のもと開催されました。厚生労働省医薬・生活衛生局総務課国際薬事規制室長の安田尚之氏、PMDA理事の宇津忍氏等、日本の規制当局や、中川祥子常務理事をはじめとする製薬協、一般社団法人日本医療機器産業連合会(医機連)等、関係各所から多くの方が参加しました。

台湾側は、台湾日本関係協会が主催となり、衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)署長の呉秀梅氏をはじめ、財団法人医薬品査験センター(CDE)、衛生福利部中央健康保健署(NHIA)、台北市日本工商会医薬品医療機器部会(JCCI PMDC)、台湾製薬工業同業公会(TPMA)、台湾研究開発型生技新薬発展協会(TRPMA)、中華民国開発性製薬研究協会(IRPMA)、台湾後発品協会(TGPA)、中華民国製薬発展協会(CPMDA)、台湾医療器材工業同業公会(TMBIA)、中華民国医療器材商業同業公会全国連合会(TFMDCA)の協賛のもと開催されました。

はじめに主催者挨拶および祝辞として、日本台湾交流協会専務理事の花木出氏、台湾日本関係協会副秘書長の林慶鴻氏より、COVID-19の世界的な流行下においても、継続的に実施されている本会議に対する期待、すなわち双方の薬事規制の調和を図ることや、医療保険制度についての相互理解を深めること等が述べられました。また、花木氏からは、2011年の東日本大震災での支援に関して改めて感謝の意が述べられ、林氏からは、日本から台湾に390万回分の新型コロナウイルスワクチンが供給されたことに対する感謝の意が述べられました。

第9回となる本交流会議では前回に引き続き、医薬品、医療機器についての議論が行われました。まずは、医薬品・医療機器共通のkeynoteセッションとして両当局から規制に関する情報のアップデートが行われ、その後、COVID-19に対して種々の対応に関する台湾および日本双方の取り組みの共有、希少疾病医薬品に関する薬事規制の紹介、さらに健康保険に関する議論が行われました。

1. Keynote Speech

医薬品・医療機器に係る規制のアップデートとして、台湾側からTFDA、日本からPMDAの最新の状況について発表がありました。

TFDAからは、COVID-19ワクチンの緊急使用許可(EUA)および国産ワクチン評価方法(Immune bridging法)や臨床試験および医療機器に関する最新動向について紹介がありました。共通技術文書(CTD)のデジタル化やe-ラベリングを推進したいと考えていること、医療機器に関して新しい規制(医療器材管理法)を2021年5月1日から運用していること、AIスマート医療機器に関するガイドラインが発行されたことが共有されました。また、2019年から開始された日本との新薬審査協働スキームに関して、これまで3件が完了し、現在は2件が審査中であり、本スキームが双方にとって有益なものであると示しました。最後に、これまで実施してきた連携により貴重な経験ができていることに関する日本への感謝、および今後も積極的に連携を図っていきたいと述べました。

PMDAからは、(1)新型コロナウイルスのワクチン開発に対して最新の取り組み、(2)添付文書のe-ラベリング対応、(3)レギュラトリーサイエンスに関する動向、アジアにおける臨床試験の考え方、リアルワールドデータ(RWD)の活用について紹介がありました。そして最後には、コロナ禍においても、9回目の交流会議が開催できたこと、また今後も継続的に最新の情報を共有し、日本と台湾相互のため、またアジア諸国発展のため継続的な協働を希望していることが伝えられました。

2. COVID-19に関する取り組み

本セッションでは、COVID-19に対する取り組みに関しての現状が紹介されました。

台湾からは、COVID-19の感染者が他国に比べて抑えられていることや、患者登録、オンライン診療、治験薬の提供、モニタリングおよび監査/査察等、COVID-19流行下での臨床試験に対する取り組みについて紹介されました。COVID-19ワクチン開発のため、被験者登録プラットフォームを構築し、わずか1ヵ月で2万人を超える人が登録され、ITを用いた迅速かつ適切な素晴らしい取り組みを実施している状況が紹介されました。

日本からは、COVID-19の状況、薬事規制当局の取り組みについて紹介がありました。日本におけるCOVID-19は、ワクチンの接種が進んだこと等により、直近では1000人を下回るまで減少していること、また、ワクチンや治療薬を迅速に導入するための日本における特例承認に関して紹介しました。

さらに、今後の世界共通の課題として、(1)既存ワクチンとの比較試験による次世代ワクチン開発、(2)ブースター接種、(3)生産能力の拡大の検討が挙げられました。さらに、国際的薬事規制当局の会議体であるInternational Coalition of Medicines Regulatory Authorities(ICMRA)の取り組みが共有され、現在のパンデミックだけでなく、将来のパンデミックに備える、また新しいNew Normalを作り上げていくうえで、今後も国際連携がますます重要となっていくことが述べられました。

3. 希少疾病医薬品に関する規制

本セッションでは、両当局から希少疾病医薬品に関する規制が紹介されました。

台湾からは、(1)希少疾病薬の規制環境、(2)希少疾病薬のレビュープロセス、および(3)承認後の要求事項について説明がありました。台湾における希少疾患認定の基準として、1万人に1人以下が定められていること、認定された際のインセンティブ、レビュープロセス(希少疾患指定(Rare Disease Designation)⇒希少疾患治療薬の指定(Orphan drug designation)⇒承認申請)、「希少疾病・オーファンドラッグ法」第21条による年次報告の提出が必要であること等、台湾における希少疾病医薬品に関する規制に関して詳細に紹介がありました。

日本からは、1993年から始まった希少疾病医薬品等の指定制度について紹介がありました。希少疾病医薬品等の指定制度の指定要件として、(1)日本で患者数が5万人未満、または指定難病であること、(2)重篤な疾病で医療上の必要性が高いこと、(3)開発の可能性が高く妥当性があること、また、開発企業へのインセンティブとして、助成金の交付、税制措置、優先相談、優先審査、薬価の加算、再審査期間の延長等があることが共有されました。また、希少疾病用医薬品は優先審査で行われ、疾患の指定から承認取得まで約9ヵ月間と、通常審査に比べて約3ヵ月短縮されることが紹介されました。

4. 健康保険制度

本セッションでは、両当局から薬価制度の紹介がありました。

台湾からは、保険制度および薬価制度に関して、現状が共有されました。まずは、単一支払い制度に加えてGlobal Budget制度を導入し、年間の医療費総支出総額が決められた中で運用されていること、また、新薬算定ルールに関しては、先進10ヵ国(指定されている10ヵ国)の価格を参照する制度があること、審査期間の実態、Managed Entry Agreement(MEA)やHorizon Scanningに関して紹介がありました。また、健康保険のリソースが限られているので、Precision medicineに対する期待が高まっている旨が共有されました。最後に、NHIAは効果のある薬剤に支払う、必要なところにリソースを使う方針であること、また産業界とも連携し、良い薬、コストパフォーマンスの良い薬を患者さん・台湾の国民に提供したいと考えていることを示しました。

日本からは、薬価制度・算定ルールおよび費用対効果評価制度について紹介がありました。新薬算定ルールに関して、類似薬効比較方式(類似薬がある場合)、原価計算方式(類似薬がない場合)と有用性・新規性が認められた場合の特別加算、加えて、海外薬価調整等、幅広い算定ルールが共有されました。費用対効果評価制度に関しては、台湾が薬価収載前に実施するのに対し、日本では薬価収載後、薬価を調整する際に利用しています。その理由について台湾側から質問があり、費用対効果評価には時間を要するため、新薬を患者さんに早く届けるためであると、日本側の考え方を共有しました。

5. 総括

2013年に始まった本交流会議は今回で9回目を迎え、両当局間では医薬品や医療機器の作業部会が立ち上がり、人材交流や新薬審査協働スキームが進んでいます。2020年に引き続き、COVID-19により対面での開催はできませんでしたが、その中でも活発な議論ができ、薬事規制に関しては、両当局が、いかにイノベーション等を規制に取り込んでいるかが理解できました。またCOVID-19の状況や取り組みに関しても、双方が柔軟かつ迅速に対策を進めていることが紹介され、今後も、両当局間で継続的にコミュニケーションをとり、相互理解と信頼を深めていくことが不可欠だと感じました。2022年は第10回の節目となり、日本で開催予定です。2022年はぜひ、対面での開催を期待するとともに、この枠組みのもとで、日本および台湾の医薬品、医療機器に関する規制協力、理解の促進が官民でなされていくことを願ってやみません。

(国際委員会 アジア部会 台湾チーム 小山 辰也池上 真悟香川 治

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