トピックス 「CMC Strategy Forum Japan 2021」が開催

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2021年12月6~8日の3日間にわたり、CASSS(California Separation Science Society)主催の「CMC※1 Strategy Forum Japan 2021」が開催されました。新型コロナウイルス感染拡大の渦中でもあり、2020年同様にオンライン開催となりましたが、日本だけでなくアジア、北米、欧州等13ヵ国から約90名の参加登録があり、活発に意見が交わされました。

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    CMC:Chemistry, Manufacturing and Control.
    原薬の製造法・製剤化の研究、原薬や製剤の品質を評価する分析研究等の医薬品製造および品質を支える統合的な領域

CMC Strategy Forum Japan開催の経緯

CMC Strategy Forumは2002年にWCBP(Well Characterized Biotechnology Pharmaceutical)シンポジウムから独立し、米国で第1回が開催された後、2007年から欧州、2012年から日本、2014年からはラテンアメリカ、そして2021年からは中国でも開催されています。CMC Strategy Forumでは、企業、アカデミアおよび規制当局の専門家がバイオ医薬品のCMCについての研究開発、製造、規制等に関する課題に関して、十分に時間をかけて議論を行い、相互理解と課題解決を促進しています。

日本でのCMC Strategy Forumは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と製薬協で準備委員会を組織し、議論テーマの選定や議論の方向性だけでなく、2021年はオンラインならではの学会運営も含め、約1年をかけて準備を行いました。

会の開催に際し、2021年よりCASSSの代表を務めるGlobal Biotech ExpertsのNadine Ritter氏とPMDA理事の新井洋由氏からのwelcome commentの後、以下のテーマで議論が開始されました。

  1. Session 1(12月6日):
    Recent Trends in the Regulation of Biopharmaceutical Products
  2. Session 2(12月7日):
    Continuous Manufacturing of Biologics
  3. Session 3(12月8日):
    Challenges of Vaccine and Biotherapeutic Therapies for COVID-19

Global Biotech Experts
Nadine Ritter 氏

独立行政法人医薬品医療機器総合機構
理事 新井 洋由 氏

Session 1:Recent Trends in the Regulation of Biopharmaceutical Products

Session 1では、PMDA再生医療製品等審査部の奥平真一氏とGenentech社のCecilia Tami氏の司会のもと、各国の規制当局担当者から、バイオ医薬品を中心とした最近の薬事規制動向および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)下における臨時対応ついて幅広い内容が紹介されました。

PMDA再生医療製品等審査部の鳴瀬諒子氏からは、医薬品医療機器等法(薬機法)の一部改正に関するアウトライン、承認後変更管理実施計画書(Post-Approval Change Management Protocol、PACMP)の運用、承認事項の軽微変更、そして COVID-19治療薬に関する薬事審査のマネジメントについて紹介がありました。

米国食品医薬品局(FDA)生物製品評価研究センター(Center for Biologics Evaluation and Research、CBER)のCassandra Overking氏からは、COVID-19ワクチン開発のレギュレーション上、鍵となる検討事項や、緊急使用許可(Emergency Use Authorization、EUA)について、今回のパンデミックを通して得られた教訓等が紹介されました。

FDA医薬品評価研究センター(Center for Drug Evaluation and Research、CDER)のEmily(Xianghong)Jing氏からは、COVID-19治療薬開発の迅速化プログラムおよびEUA、COVID-19中和抗体薬の臨床第1相試験入りにおけるCMC要件のフレキシビリティ、EUA申請に必要なCMC情報、EUA後のCMCの変更管理等について紹介がありました。

Health CanadaのJason Turpin氏からは、COVID-19関連のカナダ保健省(Health Canada)、オーストラリア保健省薬品・医薬品行政局(TGA)※2、スイス医薬品局(SwissMedic)、シンガポール保健科学庁(HSA)および英国医薬品医療製品規制庁 (MHRA)とのアクセスコンソーシアム(Access Consortium)の取り組みや、ICH Q12の実装、規制に関する国際連携等についてのアップデート情報の紹介がありました。

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    保健省に属するオーストラリアの医薬品・医療機器に関する管轄機関

独立行政法人医薬品医療機器総合機構
再生医療製品等審査部 奥平 真一 氏

独立行政法人医薬品医療機器総合機構
再生医療製品等審査部 鳴瀬 諒子 氏

米国食品医薬品局
生物製品評価研究センター
Cassandra Overking 氏

米国食品医薬品局
医薬品評価研究センター
Emily(Xianghong)Jing 氏

Health Canada
Jason Turpin 氏

 

パネルディスカッションにおいては、パンデミック下での課題や学び、ICH Q12実装にについて活発な議論が展開されました。特に、パンデミック下での規制当局と企業間や規制当局間のコミュニケーション、GMP査察や審査の対応、限られた安定性試験結果に基づく有効期間設定、原材料の不足等について活発な議論が展開されました。

パネルディスカッションの様子(Session 1)

Session 2:Continuous Manufacturing of Biologics

Session 2では、PMDA品質スペシャリストの松田嘉弘氏とBioMarin社のErik Fouts氏の司会のもと、バイオ医薬品の連続生産に関する幅広い内容が紹介されました。

PMDA再生医療製品等審査部の櫻井京子氏からは、2021年7月にStep 2となったICH Q13ガイドライン・ドラフトの内容について紹介がありました。また、本邦を含めた各国でStep 2文書へのパブリック・コメントを収集中であること、2022年11月にStep 4を目指すことについても紹介がありました。

PMDA再生医療製品等審査部の奥平真一氏は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の分担研究にて検討された「バイオ医薬品の連続生産に関するPoint to Consider」文書(日本PDA学術誌、GMPとバリデーション23巻(2021)1号、 p13-22)の内容について紹介しました。

Sanofi社のRebecca Berger氏からは、同社におけるバイオ医薬品の連続生産の開発について紹介がありました。この講演では、同社が連続生産を強化する目的や、製法開発、規制当局との連携、製造施設の設計思想等についても紹介されました。

Merck社のLucy(Liuquan)Chang氏からは、同社がバイオ医薬品の連続生産を推進する背景、薬事的展望、技術的課題および薬事戦略等について紹介されました。

独立行政法人医薬品医療機器総合機構
再生医療製品等審査部 櫻井 京子 氏

Sanofi
Rebecca Berger 氏

Merck
Lucy(Liuquan)Chang 氏

パネルディスカッションでは、中外製薬の柳田哲博氏とNovo Nordisk社のAndrew Chang氏が加わり、バイオ医薬品の連続生産について議論が行われました。特にバイオ医薬品の連続生産のトピックスとしてProcess Dynamics、Residence Time Distribution、プロセス解析工学(PAT)、バイオバーデン・コントロール、プロセス・バリデーション、生産性、環境負荷への軽減等について、当局・企業間の活発な議論が行われました。

パネルディスカッションの様子(Session 2)

Session 3:Challenges of Vaccine and Biotherapeutic Therapies for COVID-19

Session 3では、国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部の石井明子氏とAstraZeneca社のFrank Montgomery氏の司会のもと、本邦で特例承認を取得しているCOVID-19に対するワクチンおよび抗体医薬の開発や、規制側の立場から、新しいモダリティにおけるCMC開発の加速に対処するための戦略、迅速審査等のCMCに関する薬事規制の柔軟性について紹介がありました。

本邦でも特例承認を取得しているCOVID-19ワクチンとして、Pfizer社のDavid Cirelli氏からは、迅速なCOVID-19ワクチン開発のための新規プラットフォーム分析技術の使用と日本での承認に関する考慮事項についての紹介がありました。また、Moderna社のJulia O'Neill氏からは、mRNAワクチンの開発促進について、そしてAstraZeneca社のNancy Kavanaugh氏からは、COVID-19ワクチンのグローバル開発の加速化における課題と教訓について、それぞれ紹介がありました。さらに、同特例承認を取得しているCOVID-19のいわゆるカクテル抗体については、Regeneron社のMohammed Shameem氏およびGenentech社のMaren Willcockson氏から、ロナプリーブ(一般的名称:カシリビマブ(遺伝子組換え)/イムデビマブ(遺伝子組換え))のCase Studyとして、記録的な速さにおけるベンチトップから承認までの取り組みについて紹介がありました。さらに、PMDAワクチン等審査部の三ツ木元章氏からは、COVID-19下のワクチンに関するCMC審査における薬事規制の柔軟性について紹介がありました。

Pfizer
David Cirelli 氏

Moderna
Julia O'Neill 氏

AstraZeneca
Nancy Kavanaugh 氏

Regeneron
Mohammed Shameem 氏

Genentech
Maren Willcockson 氏

独立行政法人医薬品医療機器総合機構
ワクチン等審査部 三ツ木 元章 氏

パネルディスカッションでは聴衆から多くの質問が挙がり、とりわけ製剤の有効期間を付与する際、開発段階から市販後に及ぼし得る影響も考慮に入れた広範囲の時間軸における考え方・戦略について、行政側と業界側で熱い議論が交わされました。

パネルディスカッションの様子(Session 3)

最後に

各セッション発表後に行われるパネルディスカッションをオンラインでも充実した内容にすべく、今回の「CMC Strategy Forum Japan 2021」でも、チャットを用いた即時質問、“いいね”機能を用いた質問への賛同機能等、運営にも工夫を凝らしたオンライン学会となりました。3つのセッション終了後、Genentech社のWassim Nashabeh氏から、本フォーラムの総括が実施され、閉会となりました。

このグローバル会議が、今後も日本で継続的に開催され、バイオ医薬品の研究開発の促進とCMC領域の活性化の一助になるよう、製薬協として支援を続けていきたいと考えています。今後ともみなさんのご支援をよろしくお願いいたします。

次回の「CMC Strategy Forum Japan 2022」は、2022年12月5~6日に開催を予定しています。

(バイオ医薬品委員会 篠崎 真、山田 正敏、久保寺 美典、中村 奈央、赤羽 宏友、伊藤 哲史

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