トピックス 「バイオジャパン2020」開催・参加報告 バイオ医薬品委員会セミナーについて

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「バイオジャパン2020」が2020年10月14日~16日に、パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)にて開催されました。2019年同様に併催された「再生医療Japan 2020」に加え、"BioJapan"でフォーカスしていた「ヘルスケアゾーン」と「デジタルゾーン」を統合した「healthTECH JAPAN 2020」が本年より開催されました。本年は新型コロナウイルスが感染拡大する中、リアルとオンラインのハイブリッド開催となりましたが、展示会では参加794社(海外22ヵ国、146社)、来場者数は約1万3700名超にのぼりました。参加者・会社の減少が懸念された本年でしたが、2015~2016年と同規模となり、事務局のご努力とともに、海外も含め幅広く事業機会を求めるオープンイノベーションの指向が、本会の成功につながったものと確信しました。製薬協も主催団体の一つとして参加し、会員会社のみなさんが多数発表するとともに、多くの会社・団体がアライアンスブースを出展する等、活発な情報交換と交流が行われました。

セミナー会場の様子

バイオ医薬品委員会セミナー

製薬協バイオ医薬品委員会では、バイオ医薬品の製造へのAIの導入について、大学および産業界のそれぞれの立場で議論することを目的として、「バイオ医薬品製造最前線」と題した取り組みを過去4年間にわたり続けています。最新の話題として、2018年は「バイオ医薬品の連続生産」、2019年は、「AIを応用したスマート工場」に関して議論をしてきました。2020年は第4弾として「バイオ人材は足りていますか?~バイオ医薬品のモダリティは多様化する」というタイトルで、10月15日に開催しました。本セミナーでは、最近求められているバイオ医薬品市場でのモダリティの多様化とバイオ生産へのデジタル技術の活用も含めた次世代製造技術の革新という、一見関連のなさそうな課題の根底で共通となる人材育成という観点について議論しました。

神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科特命教授、バイオ医薬品委員会の内田和久技術実務委員長がコーディネーターとなり、会合が進みました。内田技術実務委員長による現状のオーバービューでは、「抗体医薬等の狭義のバイオ医薬品から、遺伝子治療、再生医療とモダリティが多様化・拡大している。しかし、それらの研究開発を行う人材は、それほど急に社内で手当てできるものでもない。また、モダリティが増える中で、開発期間は短縮を求められることになり、従来の研究開発手法だけでは加速化は望めず、バイオの開発生産へのデジタル技術の導入が必須になってきている。しかし、そこでもプロセス開発を理解し、かつ、ITに関する知識をもった人材の開発が必要となる。したがって、新規モダリティの開発研究も行え、IT技量も併せもつ人材が育成できると生産性の向上につながる」ということでした。その後、4名の発表者から報告がありました。

コーディネーターの内田技術実務委員長

アンケート調査の結果を発表する渡辺実務委員長

製薬協の立場からバイオ医薬品委員会の渡辺佳宏政策実務委員長より、アンケート調査の結果として「バイオ医薬品、再生医療等製品の開発・製造に関わる人材ニーズ」についての発表があり、「遺伝子治療用ウイルスベクターや再生医療の製造開発要員が今後必要になる」との結論でした。バイオ人材育成を行う立場である、一般社団法人バイオロジクス研究・トレーニングセンター(BCRET)からは、代表理事の豊島聰氏よりBCRETでの人材育成についての発表があり、国内においてはBCRETにバイオ医薬人材育成の実績とノウハウが蓄積されていることについて紹介がありました。デジタル側の立場からは2名の発表があり、製薬企業の研究開発過程のIT化を推進し、開発の効率化を推し進める外資系企業ジーンデータの日本法人代表取締役である下広英樹氏より「Digitalizing Biopharma R&D - What type of skills are needed in the industry?」について、また、アマゾンウェブサービスジャパンに在職した経験をもち、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの4社)等の大手IT企業による製薬会社へのデジタルトランスフォーメーション(DX)の導入に詳しい大阪大学共創機構産学共創本部特任教授の堂田丈明氏より「デジタルトランスフォーメーション(DX)等の企業への導入の海外事例」に関して紹介がありました。両者の発表から、「DXが近い将来、バイオ医薬品の研究開発生産の現場に早急に導入され、生産性の向上に寄与するとともに、それを実行するには、バイオ医薬品の製造プロセス側とIT側の両方を理解して相互の立場を取りもつような人材の育成が必要であり、これらの状況を推進するためには、研究所や工場等の現場の担当部署の理解はもちろんであるが、会社の経営側とも同じ情報を共有し、経営幹部と連携してDX化を進めることが早期の導入成功に重要である」との指摘がありました。

2020年はCOVID-19の影響で、海外からの演者を迎えることができず、また、入場者も一部オンラインになる等、"三密"対応で制限もある中、所属の異なる立場から幅の広い議論が行われ、会場は満席となりました(参加者約100名)。

展示ブース

次回の「バイオジャパン2021」は2021年10月13日~15日、パシフィコ横浜にて開催されます。

(薬事・バイオ医薬品担当部長 伊藤 哲史、バイオ医薬品委員会 技術実務委員長 内田 和久

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