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レギュラトリーサイエンス
-医療イノベーションへの期待”3R”の勧め-


レギュラトリーサイエンス
-医療イノベーションへの期待”3R”の勧め-
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 理事・審査センター長
内海英雄 氏
解説講演(要旨)

 広報委員会では9月21日に独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事・審査センター長 内海英雄氏による「製薬協メディアフォーラム」を開催しました。「レギュラトリーサイエンス ~医療イノベーションへの期待 “3Rの勧め”~」をテーマとして、当日は台風の直撃を受けましたが、多くの記者の方々の参加がありました。


新薬創出を取り巻く最近の動き


内海英雄氏

 わが国の医師の治療満足度と薬剤の貢献度をみると、大型新薬のある高血圧症などで治療満足度が高く、患者さんや医療従事者の方々の新薬への期待は大きいといえます。また、医薬品産業は納税力が高く、日本の経済を支えるうえで重要な地位を占めています。この2つが医療イノベーションを考えるうえで共通の概念になっています。
 日本で生まれた医薬品の数は世界第3位になり、日本の内資系企業の開発力の向上がみてとれます。
 ところが、日本で開発された医薬品が最初にどの国で上市されたかをみてみると、20品目の中で日本の患者さんが最初に使うことができた医薬品は9品目です。日本のメーカーが開発したにもかかわらず最初に使うことができたのはわずか半分にも満たないのです。
 また、国別の未上市製品数をみますと、アメリカでは未上市製品はありませんが、日本では28製品も使えないのです。日本では最先端の医療ができないのではないかと思ってしまいます。また、医薬品が世界で初めて上市された時点と、それぞれの国で上市された時点の差(期間)の平均を比較してみますと、日本とアメリカとの間には約2.5年の差があります。このドラッグ・ラグを解消することが非常に重要なことになります。

PMDAの役割

 わが国の科学技術基本計画に基づいてPMDAは変遷を遂げ、承認審査の迅速化と体制の強化を図りました。具体的には2002年の医薬品産業ビジョンのアクションプランを受け、2004年4月にPMDAを設立しました。この中には、医療上特に必要性が高い医薬品の開発を促進するため、承認審査との連携を重視した治験相談の充実や、優先審査の運用の見直しなどが含まれています。また、新成長戦略で謳われている「ライフ・イノベーションによる健康大国戦略」では、医療・介護・健康関連産業を産業牽引産業として位置づけ、産官学一体となった取り組みを進め、日本発の革新的な医薬品・医療機器の研究開発を促進することに対してPMDAができる限りサポートしていくこととしています。そしてドラッグ・ラグ、デバイス・ラグの解消、治験環境の整備、承認審査の迅速化を進めていきます。
 2011年4月1日現在の人員は、審査部門415名、安全部門133名の合計648名です。2013年度末には751名にする予定ですが、欧米の約5,000人体制での審査と比較すると日本は約1/10の人員です。
 日本発の革新的医薬品・医療機器の迅速な実用化に向けてやらなければならないことは、基礎研究で生まれたシーズの実用化です。実用化を見据えた開発と、迅速な実用化を可能とするために、有効性と安全性を確保するためにもレギュラトリーサイエンス研究の推進が不可欠です。

レギュラトリーサイエンス“3Rの勧め”

 レギュラトリーサイエンスとは、科学技術進歩の所産のメリットとデメリットを予測・評価する方法を研究し、社会生活との調和のうえで、最も望ましい形に調整(Regulate)する科学です。
 科学技術の成果を人と社会との調和のうえで最も望ましい姿に調整するための科学がレギュラトリーサイエンスです。これを充実、強化し、根拠に基づいた審査指針や基準の策定等につなげる必要があります。PMDAでは、審査機関におけるレギュラトリーサイエンスの研究機能の充実、これらに精通した人材の養成および確保を推進していきます。
 PMDAは、2009年4月にレギュラトリーサイエンス推進部を設置しました。また、2010年4月には同部に研究課を設置し、レギュラトリーサイエンスを推進しようと取り組んでいます。そのためにはレギュラトリーサイエンスを支える研究が必要で、連携大学院制度を導入し、現在7つの大学と連携しています。
 昨今の医薬品・医療機器を取り巻く環境と社会からの期待に対し、科学技術の進歩、グローバル化、安全性の要求に対応していかなければなりません。治験ではプロトコール(規定)どおりに適用しても、症例数が少ない、合併症・併用薬がない、小児・高齢者への組入れ(治験への参加)が難しい、投与期間が短いなどの限界があります。しかし、市販されると多くの患者さんが使用することになり、いろいろな有害事象が起こる可能性が激増します。医薬品の副作用には、承認後に多くの人が使用して初めてわかるものがあります。しかし、副作用がすべてわかるまで承認しなければ、新薬が世の中に出にくいということになります。このことをご理解いただくことが重要になります。かつては、現在の行政・製薬企業における承認後の体制が承認前に比べてあまりにも脆弱でした。また、「副作用報告」に依存しすぎている現状があります。もう少し別の形での情報を得る体制を作ることが求められます。
 このようなことを踏まえ、PMDAでは、2011年度から医療情報データベースの活用による医薬品等の安全対策を向上させようと取り組んでいます。これも正にレギュラトリーサイエンスです。1,000万人規模のデータベースを2015年を目処に構築しよ うというものです。
 現状の医薬品・医療機器開発の問題点は、日本発のシーズであるにもかかわらず、欧米での臨床試験・開発が先行し、日本の患者さんがその恩恵を受けるのが欧米より遅れるケースもあるというドラッグ・ラグの問題があり、患者さん、国民の理解が得られないのです。
 日本の中で誕生したシーズをいかに早期に承認申請できるようにするかが課題です。これらを解消するために新たに「薬事戦略相談事業」を立ち上げました。この事業の目標は、日本発の医薬品・医療機器の早期承認、そしてドラッグ・ラグやデバイス・ラグの解消にあります。
 「科学と技術は既存するものでなく、地道な研究活動(research)から創造されるものです。医薬品・医療機器の創出には基礎研究で生まれたシーズ(結果)を臨床に橋渡しをするtranslational research(橋渡し研究)と、安全に活用するための レギュラトリーサイエンスならびにそれを創造する広範な dry &wet researchesが不可欠です。この3つのリサーチを把握して業務に活用してください」とPMDAの職員には常々伝えています。


以上が今回のフォーラムの要旨でした。

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