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製薬企業に係わる税制の国際比較と創薬の国際競争力


製薬企業に係わる税制の国際比較と創薬の国際競争力
日本製薬工業協会 医薬産業政策研究所 首席研究員
長澤優 氏
解説講演(要旨)

 製薬協広報委員会は、2011年8月24日、製薬協において、医薬産業政策研究所 長澤優首席研究員の講演によるメディアフォーラムを開催しました。今回のテーマは「日本の経済成長に貢献する国内製薬産業」でした。国内の製薬産業がもたらす日本の経済成長への貢献とともに、今後も日本経済に貢献を続けるための課題について、特に税制が研究開発投資や戦略的な投資に及ぼす影響という視点から概説しました。以下に、講演要旨を紹介します。


国内製薬産業の日本の経済成長への貢献


長澤優氏

 日本経済の成長は90年代初頭のバブル崩壊から20年、極めて低い水準にとどまり、世界のGDPに占める日本の構成比は17.7%(1995年)から8.1%(2008年)に低下、また一人当たりGDPの順位は3位から22位へ後退しました。このような現状の中で厚生労働省は人口減少社会における新成長戦略の目標として一人当たりGDPの上昇を掲げています。
 経済産業省の2008年工業統計によると、医薬品製造業の一人当たり付加価値額は製造業平均の約3.6倍の43.8百万円であり、製造出荷額に対する付加価値比率は58.4%と化学工業の2倍以上となりました。また、製薬協加盟55社の2008年納税額は5,021億円であり、医薬品を含む化学工業全体の55.7%を占めました。2009年度の製造業の技術貿易について見てみると、医薬品製造業は2,163億円と14.9%を占め、技術貿易収支を牽引しています。また、海外進出の進んだ国内大手製薬4社の2009年度の売上高・営業利益の海外比率は、売上高52.1%、営業利益29.1%であり、他業種と比較して国内への利益還元の度合いが高いことがわかります。
 このような現状を分析すると、医薬品産業は景気の動向に大きく左右されることなく、製造業全体の付加価値の向上に貢献しており、高齢化・人口減少という構造変化が進展する日本とって知的創造の重要性は高く、国内製薬産業には、日本経済において高付加価値化、生産性の向上、財政基盤の強化を通じて貢献することが強く期待されます。

国内製薬産業の可能性と課題

 2004年から2009年までの日本の製薬企業26社および海外製薬企業16社の国内売上高の年平均伸長率はそれぞれ1%、6%でした。日本企業の海外売上高の年平均伸長率は10%であり、日本企業は拡大する世界の需要を取り込み、一定の成長があった国内においては海外企業の存在感が増しました。また日本国内での医薬品生産および輸出入の推移と日本国内の需要を比較すると、日本企業の海外生産が増加していること、海外企業の日本進出(生産面での)が停滞していることがわかります。
 一方、国内大手製薬4社と世界売上高上位10社の海外大手との2009年業績などの比較分析をすると、日本企業は研究開発投資の余力が劣っていました。法人税などの税負担を考慮した研究開発余力を(営業利益-法人税+研究開発費)/売上高と定義すると、国内大手製薬企業は世界大手と比較して約6ポイント低いことがわかりました。日本の製薬企業は研究開発投資の負担余力の低下を大きな課題ととらえ、革新的な新薬の創出のために、財務基盤の強化が求められます。

製薬産業の国際競争力と税制

 海外大手製薬10社平均の実行税率と国内4社平均を比較すると12.7ポイントの差がありました。純利益で6倍以上の差があるうえに、海外企業21.1%に対し、日本企業33.8%と実効税率に開きがあれば、研究開発費への投資の減少などグローバルでの競争力の低下が懸念されます。国内外大手製薬各社の国籍別の実行税率を個別に比較しても日本企業が高いことは明確でした。法定税率が特に低いスイスの製薬企業はもともと優位ですが、日本と法定税率にあまり差がない米国企業は軽課税国の活用等で実効税率を10~20%下げています。日本の製薬4社では研究費の税額控除が効いていますが、海外10社との差は大きいです。国内4社の平均実効税率と海外10社の実効税率の差から生まれる余裕資金を個別に試算すると4~29億ドルであり、日本企業にとっては 平均で247億円の低減効果額となります。
 今後の省資源、新興諸国との競争という環境を考慮すれば、先進諸国では知的財産という無形資源を活用し、高い付加価値を生み出す先端産業の振興にいっそう重点が置かれていることがわかります。成長の源泉であり国際競争力に直結するイノベーションの創出を促進するため、研究開発投資の活性化に直接働きかける「研究開発投資促進税制」や、自国での知的財産の開発、保持を促進する「知的財産優遇税制」がこれまで以上に重視されると考えられます。

まとめ

 日本の財政が厳しい中で法定税率の引き下げには困難が伴いますが、英国が23%への引き下げを打ち出すといった動きもあり、日本国内製薬産業の創薬力がさらに強化され、その成長産業としてのポテンシャルが日本で生かされるためには、日本が世界中の優秀な人材や企業を惹きつける「世界に開かれた魅力的な創薬の場」となることが不可欠です。研究開発への投資や知的財産の創出を促進する税制は、その実現のための重要な政策となります。


本講演の内容は、政策研ニュースNo.30、No.31、No.32、No.33 に掲載されています。内容の詳細についてはこれらを参照してください。

以上が今回のフォーラムの要旨でした。

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