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くすり教育で変えたい未来の日本の医療~患者参加型医療の実現を目指して~


くすり教育で変えたい未来の日本の医療~患者参加型医療の実現を目指して~
慶應義塾大学薬学部 医薬品情報学講座 教授
望月眞弓 氏
解説講演(要旨)

 製薬協広報委員会は、7月22日、慶應義塾大学薬学部 医薬品情報学講座 望月眞弓教授によるメディアフォーラムを開催しました。望月教授はくすり教育の大切さについて長年訴え続け、学習指導要領にくすり教育を盛り込むことに、大変な尽力をしてきました。また、製薬協が2010年3月から開設している子ども向けのウェブサイト「くすり研究所」の監修もされています。
 今回のメディアフォーラムは、2012年4月から学校教育の場で始まるくすり教育について、その目指すところについての理解と、子どもたちが夏休みに入るこの時期に改めて「くすり研究所」を紹介し、知ることで、夏休みの自由研究等への活用を考えて開催しました。講演要旨は以下の通りです。


患者参加型医療の時代


望月眞弓教授

 くすり教育が2012年4月からスタートします。中学や高校でくすり教育を受けた生徒が大人になり、薬を上手に使って健康的な生活を長く続けることが願いです。さらには薬を良く知ることで健康全般への意識の高まりとともに、患者参加型医療への気付きにもつながってほしいと思っています。
 患者参加型の医療はすでに実現されつつあります。医薬品に限らず、すべての医療はベネフィット(有効性)とリスクのバランスの上に成り立っているので、大きなベネフィットを得ようとすればリスクを伴うことも多いのです。さらに、エビデンス(医学的根拠)に基づく医療の推進も大事なことで、今は患者が自分の受けている医療の医学的根拠を自ら確認できる時代です。医療者に聞く、インターネットで調べるなど手段は多くある一方、良い情報とそうでない情報が混在しています。何が本当に正しいのかを医療者と共有して判断し、選択するという時代ということです。さらには、選択するに当たって権利として自分が受ける医療について十分に説明を受け、内容に同意、納得したうえで医療を受ける時代、すなわち自分が受ける医療を自ら選択できる時代になってきているともいえます。
 この結果として、患者の満足度が向上し、医療行為の結果がより良くなり、さまざまなリスクが低下することが目標です。一方、患者側にも自分の体の健康管理の責任は自分にあるという意識が必要です。この考えは、ささえあい医療人権センターCOMLの提案した「新・医者にかかる10箇条」に良く表れていて、受診にあたって患者さん自身にも条件を課すことでより良い医療の実現を目指した内容になっています。
 日常のセルフケアにおいては具体的には生活習慣の改善、定期的な健康チェック、そして軽度の不調に関しては、すぐに病院を訪ねるのではなく、かかりつけの薬局で健康相談して、セルフメディケーションで対応できることと、そうでないことを整理することが参加型の医療につながります。


新・医者にかかる10箇条

健康管理は自己責任

 その中で一般用医薬品にかかわる制度が2009年4月より変わり、一般用医薬品は3つの区分に分かれました。区分に応じて情報提供の責任が明確になり、薬局がより積極的に健康相談にかかわれるようになってきています。同時に大学の薬学部の教育が4年から6年と1.5倍に増えました。新制度の最初の学生が現在6年生であり、より実践的な薬剤師として世の中に出て行き健康相談の場で活躍してもらうことを期待しています。
 現在の健康教育の根底にあるのは健康3原則である食事、運動、睡眠を通じての自然治癒力アップです。それで対応できないケースが初めて医薬品を含めた専門家による医療の対象になります。薬は必ず作用と副作用という、ベネフィットとリスクがあり、疾患や重篤度によって高リスクでも選択する意味がある抗がん剤のようなケースもあります。リスクを承知のうえでできる限り副作用を最小化して使うために適正使用が求められます。そこで今回のくすり教育のポイントが「薬を正しく使う」ということです。教育だけではわからないところも多く、氾濫するさまざまな情報から正しい選択をするという意味からも、専門家への相談がより重要になりますし、教育の重要なポイントになります。
 ノンコンプライアンス(薬を処方された通りにきちんと服用しない)という問題もあります。なぜこれが起きるか調べを進めると、副作用が怖い、自分の病気を忘れたい、もう治ったと誤解している等々の要因がみられます。これを防ぐには薬の必要性や病気について根拠に基づいて説明し、理解、納得してもらうことで改善できます。そして、薬を適正に使えば副作用リスクは小さくできることも理解してほしいと思っています。
 薬の適正使用とは正しい薬を正しい量、正しい時間に服用することです。薬の正しい品質が担保されていることは大前提です。薬は薬事法において、GMP(医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)という厳しい基準に沿って作られており、これが一般の商品との大きな違いです。また、薬の正しい使い方の情報源は法律に基づいた添付文書です。一般用医薬品の場合は一般国民がこれを読んで理解できる程度のくすり教育が必要ということです。また、薬の限界、医療の限界を知ることも重要です。無意味な薬の使用は百害あって一利なしということもあります。

学習指導要領の改訂

 学習指導要領の変更は大変な作業です。変更の検討は教育審議会で、2005(平成17)年5月から行われてきました。結論として審議会が定めた内容は「くすりの有効性や副作用を理解し、正しく医薬品を使うことができる」というところを最低線とし、これに基づいて中学、高校の保健体育教育に定められました。中学では「医薬品は正しく使用すること」の一行が入ったのですが、これだけのことが実は大変なことです。一方、高等学校ではかなり踏み込んだ内容となっており、薬は有効性と安全性が審査を経て確認されており、販売に規制があること、個々の薬の特性を理解して使用法を守ること、副作用には予期できるものと予期が困難なものがあることなどが記されています。
 この新しい要領を盛り込んだ教育は中学で2012年の4月、高校では2013年から行われます。教育は保健体育教諭が担当し、養護教諭がコーディネート、学校薬剤師がサポートする体制が基本です。くすり教育を推進するために日本学校保健会では研修会を開催し、教育用資材として生徒用と指導者用を用意しています。学習指導要領にくすり教育が盛り込まれた中学生、高校生用に加え、小学生用のくすり教育資料も用意しました。これは保護者と読んでもらうことによって保護者の教育という意味もあります。

くすり研究所

 さて、製薬協のウェブサイトに小中学生向けコンテンツとして「くすり研究所」を2010年3月より開設しています。授業の場等を通じてくすり教育を実践していくことも大切ですが、自ら知りたいことを調べるという学習方法も重要で、「学ぶ・調べる」をテーマとした「研究棟」のコンテンツはそのような学習に使えるように構成されています。また、頭を休めるような「楽しむ・参加する」をテーマとした「カフェテリア」のコンテンツも用意しています。2011年7月20日からは「カフェテリア」の「自由研究アイディア集」をさらに充実させて、夏休みの自由研究にも活用できるよう工夫をしています。


くすり研究所トップページ
http://www.jpma.or.jp/junior/kusurilabo/

まとめ

 薬には良い点もリスクもあり、良質な医療の実現には、指示を守って正しく使うことが前提であること、これを子どものころから当たり前のこととして学び、それが定着することで日本の患者参加型医療の推進の後押しができれば幸いです。くすり教育が学習指導要領に加わったことは誠に画期的なことであり、これを機に医療消費者が自ら医療を選択する時代に入ってくれれば、より質の高い、無駄のない医療が実現できる時代になると信じています。


以上が今回のフォーラムの要旨でした。

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