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ライフイノベーションによる経済成長戦略
-和製バイオベンチャーの果たした役割とこれからの役割-


ライフイノベーションによる経済成長戦略
-和製バイオベンチャーの果たした役割とこれからの役割-
大阪大学大学院医学系研究科 教授 森下竜一 氏
解説講演(要旨)

 製薬協広報委員会は、9月8日、大阪大学大学院医学系研究科森下竜一教授によるメディアフォーラムを開催しました。菅政権下で進む国家新成長戦略で注目される和製バイオベンチャーの現状と今後の展望について報道関係者に解説しました。



森下竜一先生

 9月8日に開催された本メディアフォーラムには、台風接近による大雨の中、多くの報道関係者が集まりました。悪天候にもかかわらず本フォーラムが注目を集めた背景には、2010年6月に閣議決定された国家新成長戦略において「ライフイノベーション」が新たな市場開拓の土壌を提供するものとして位置づけられたことがあげられます。中でも、バイオ医薬品の領域は、これまであまり手がつけられてこなかったprotein-protein interaction(タンパク-タンパク相互作用、PPI)にかかわる創薬を可能にするため、その周囲にはさまざまな市場が形成されるといわれています。バイオベンチャーは、その主役でもあり、大学発ベンチャー創設の草分け的存在である森下先生の講義は、日本の高い科学技術力を示す多くの実例紹介とともに、それらを経済成長に結びつけるために、産学官が一体となって取り組むことの必要性を訴求するものとなりました。以下、講義の内容をまとめたものです。

●主役はビッグファーマからベンチャーへ

 世界のバイオ医薬品市場は、年々成長の一途であり、2007年には4製品が医薬品売上トップ10に入る時代となりました。特にオンコロジー領域では、分子標的薬が次々と市場に現れ、がん治療のパラダイムを大きく変えつつありますが、そのほとんどがバイオベンチャーで創出されたものを大手製薬企業が商品化したものです。オンコロジー領域以外でも関節リウマチなどの自己免疫性疾患に対する治療薬の創出にバイオベンチャーは大きく貢献しているといえます。また、大学での研究成果を実用化させるためにもベンチャーは必要で、企業との間の橋渡し役を担っています。たとえば、「コーエン・ボイヤー特許」として知られる米国スタンフォード大学の遺伝子組換え技術ですが、巨大ベンチャー企業Genentech(ジェネンテック)社を生み、年間2億ドルを超えるライセンス収入を同大学にもたらしています。

●日本国内の環境も大きく変化

 2004年に全国の国立大学が独立法人化したことで、同年の産学共同研究の数は10,000件を超え、2005年には、1,100社超の大学発ベンチャーが誕生しました。さらに、2006年に発表された第三期科学技術基本計画では、持続的かつ発展的な産学連携が奨励され、基礎から応用までも見通せる研究が推進されるようになってきました。このような環境の変化により、2008年の大学による特許実施許諾件数は、5年前に比べて約30倍の5,306件となりました。そして研究成果を企業に提供する対価として受け取るストックオプションの実施権も大学は行使できるようになり、いよいよアメリカ並みの環境になってきました。

●最近の製薬企業の動き

 主に抗がん剤のパイプライン強化の目的で、多くの製薬企業がベンチャーとのM&Aまたは業務提携を進めています。たとえば、武田薬品が米国ミレニアム社を買収。エーザイとアステラスも米国ベンチャーを傘下におさめています。国内ベンチャーとの提携も、大塚製薬とオンコセラピー社、協和発酵キリンとリブテック社、武田薬品とキャンバス社に代表されるように活発化してきています。抗体医薬に続き、核酸医薬の開発が進み、現在主流の低分子化合物薬のシェアは、2025年までに60%程度まで下がると予想されています。

●大阪・彩都バイオヒルズがアジア最大のバイオクラスターに

 北大阪の彩都と大阪大学、国立循環器病センターなどからなる「彩都バイオヒルズ」は、米国サンフランシスコ・ベイエリアやサンディエゴ・バイオテックビーチを筆頭とする世界のバイオクラスターランキングで第7位。さらに上位を目指し、大阪府は在阪の企業、特許事務所、大学などから構成される「バイオ応援団」を作り、バイオファンドの設立や人材マッチングを積極的に進めています。さらに、構造改革特区として位置づけ、府独自の規制改革や治験相談窓口(医療機器)を設置するなどの取り組みを進め、「彩都バイオヒルズ」を世界でトップクラスのバイオクラスターにすべく、産学官が一体となった活動を展開しています。

●危機的な和製ベンチャーのビジネス環境

 しかし、国内バイオベンチャーをとりまくビジネス環境は決していいとはいえません。新興企業の株式運用を支える東証マザーズも、ライブドアショック以降、大きく衰退しており、ベンチャー企業の経営そのものが危機的な状況にあります。また、公的研究費全体の予算が欧米に比べて少ないのにもかかわらず、3つの省に分散することで有効活用されていないといった現状もあります。製薬業界に絡むところでは、国内の臨床試験と審査の期間が長く、また、その費用も他国と比較して高額である点があげられ、上記の件と合わせてベンチャー企業にとっての大きな障害となっています。

●医師が創薬にかかわれるよろこび

 最後に、森下先生は「医師をしていると、治療の限界を感じる時が必ずあり、そんな時、『こんな薬が今あれば』と思います。それだけに、医師自らが医薬品の創出にかかわれることは、なにより幸せを感じます。製薬企業は、そのための重要なパートナーです」という嬉しい言葉とともに「産学官がさらに団結し、政府の新成長戦略を支えていくことで、経済成長や雇用の確保だけでなく、国民のさらなる健康を維持できると私は考えています」と述べ、講演を終えました。


以上が今回のフォーラムの要旨でした。

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