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カウンターフィット薬(偽造医薬品) 拡がる汚染、追う対策


カウンターフィット薬(偽造医薬品) 拡がる汚染、追う対策
金沢大学医薬保健研究域薬学系 国際保健薬学 教授 木村和子 氏
解説講演(要旨)

 2009年6月19日、製薬協会議室(東京)にて「製薬協メディアフォーラム」が開催されました。講師として、金沢大学・国際保健薬学の木村和子先生を招き、カウンターフィット薬問題の最新状況についての講演を聞きました。
木村先生は、カウンターフィット薬問題における第一人者であり、2007年12月26日に開催された製薬協メディアフォーラムにおいても、「カウンターフィット薬(偽造医薬品)の現状」として講演しています。
1年半を経て、ますます深刻さを増してきた現状、国際機関や各国政府の取り組み、また、日本を含む先進諸国におけるカウンターフィット薬問題についての講演要旨を以下に紹介します。


●カウンターフィット薬とは
 カウンターフィット薬とは、“内容や出所に関して故意に虚偽の記載がなされた医薬品” のことであり、犯罪行為です。有害物質が含まれていることによる健康被害、有効成分が入っていないことによる治療機会の逸失などが問題点としてあげられます。

●偽造医薬品の世界的増加


講演中の木村先生

 Center for Medicines in the Public Interest(米国)は、2010年のカウンターフィット薬の販売額は750億ドルになり、2005年に比較して90%増になるだろうと予測しています。また、この金額は日本における医薬品の販売額とほぼ同等です。
地域ごとの事例数としてはアジアが突出しており、南アメリカ、ヨーロッパと続きます。アフリカについては報告数が少ないだけであり、実態が掴めていないというのが本当のところだと思っています。
事例報告の上位国としては、第一位が中国であり、韓国、米国、インド、日本と続きます。日本については、事例があった時点で即座に報告があがるということが、ランキング上位にいる理由と思われます。しかし、日本もカウンターフィット薬に無縁な状態というわけではなく、事例報告や押収・発見において上位に顔を出す国になっているということは認識して欲しいと思います。ただ日本の場合、その多くがインターネット経由で入手されたものであり、正規の流通ルート外でのケースであるというところが、一般の人が脅威を感じられない理由となっています。
従来、カウンターフィット薬は、薬のない発展途上国での問題であると考えられてきましたが、近年は先進国でも大きな問題として取り上げられるようになってきました。ED治療薬が不正使用の需要を掘り起こしたことに起因していると考えられています。また、市場がグローバル化したことで大きくなったことや、インターネットの普及により消費者がアクセスしやすくなっていることなども要因となり、カウンターフィット薬が出回りやすくなっています。
カウンターフィット薬は、他の薬物犯罪に比較すると低リスクで利益が上がるため、犯罪組織やテロ組織が資金源としてカウンターフィット薬の売買に乗り出しています。
日本における対策ですが、税関に対して輸入差止申立をすることができます。実際、ED治療薬およびタミフルの商標権侵害、クエン酸シルデナフィル錠の特許権侵害に対して申立がなされています。

●健康被害
 健康被害で顕著な例は、甘みをつける目的で使われるグリセリンやプロピレングリコールの替わりにジエチレングリコールを使ったために起こったケースです。知られているだけでも10件以上、腎障害や神経障害を引き起こし、命を落とされるというケースが繰り返されています。
1995年のハイチでの事例、2006年のパナマでの事例を見ると、どちらの事例も中国産のジエチレングリコールが使われました。工業用薬品を作っている会社のものが、何回もの取引を経て分析証明書も偽造された末に、最終地で医薬品として使われたのです。そして、それを患者さんが服薬して、命を落とすこととなったのです。
1995年ニジェール共和国における髄膜炎ワクチンの例も有名です。生水を注射されて2,500人もの方がこれにより亡くなられています。なお、これらの偽ワクチンは隣国からの善意の寄贈でした。

●対策の進展
 2006年、WHOが中心となって、偽造医療品の製造、取引、販売をなくすため、国際偽造医療品対策タスクフォース(International Medical ProductsAnti-Counterfeiting Taskforce ; IMPACT)が結成され、偽造医療品の定義の修正、対象を医療機器にも拡げるための作業、インターネット販売のガイドライン作成などについて取り組んできました。
しかし、カウンターフィット薬の定義見直しをきっかけに、医薬品の知財問題がIMPACTに持ち込まれてしまいました。 2008年のWHO総会(WHA)でカウンターフィット薬の決議案を提出するも、インド、タイ、ブラジルなど16ヵ国の反対により、採択見送りとなりました。
その後、IMPACTで定義の見直しを行い、2009年WHAに再び決議案を提出する予定でしたが、提出見送りとなりました。そのかわり、WHOが偽造品と保健衛生に関して報告書を作成し、それについて総会で議論する予定でしたが、新型インフルエンザの発生に伴い、それも次期総会送りとなりました。
タイ、インド、ブラジルなどは、IMPACTの意図は医薬品の知財保護強化であり、カウンターフィット薬対策と称してジェネリック医薬品の流通を阻害しようとしていると主張しています。それに対しWHOは、“カウンターフィット薬” という名称が疑念を抱かせるなら用語を検討するが、“カウンターフィット薬” は重大な保健衛生上の問題であり、WHOの関心事項であると主張しています。


以上が今回のフォーラムの要旨でした。

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