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わが国の災害医療体制の現状と課題-国内外の地震から学ぶ-


わが国の災害医療体制の現状と課題-国内外の地震から学ぶ-
山形県立救命救急センター 診療部長 森野一真 氏
解説講演(要旨)

 2009年3月12日、製薬協会議室にて、メディアを対象とした製薬協メディアフォーラムが開催されました。“ 災害現場における医療体制について” をテーマに、山形県立救命救急センターの森野一真先生を講師に招きました。
森野先生は、2007年7月16日に発生した中越沖地震と2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震の際にDMAT(Disaster Medical Assistance Team)として、また2008年5月12日に発生した中国・四川大地震の際に、日本の国際緊急援助隊医療チームの一員として現地で災害医療活動に従事し、成都の四川大学華西病院で被災者の治療にあたりました。
その経験を基に、急性期救急医療の現場における課題等についての話がありましたのでその要旨を紹介します。


●現在の災害医療対応の原点
 阪神淡路大震災では、ヘリコプターによる患者の移送が十分に行われませんでした。被災地内における医療機関の診察能力は低下し、被災者の診療に多大な影響が出ているのにもかかわらず、域外への搬送を行わず現地で診療を行った結果、防ぎ得た死につながった可能性があると言われています。 当時は、災害医療に関するトレーニング経験のある人はほとんどいませんでした。阪神淡路大震災を契機に、医療機関の災害医療対応能力の強化が図られました。

●日本版DMATについて
 DMATとは、大地震および航空機・列車事故といった災害時、被災地に迅速に駆けつけ、救急治療を行うための専門的な訓練を受けた医療チームのことであり、日本版DMATは2005年より、急性期救急医療を担う目的で養成されています。とりわけ日本版DMATはメンバー5名と規模が小さいため、素早い対応が可能です。しかしながら、持参する具体的な使用薬剤と必要量について標準化がなされていないこと、麻薬・向精神薬・要冷品等については、管理上むずかしいといった問題点があります。

●新潟県中越冲地震における経験
 DMATが組織的に出動した最初のケースであり、約40チームが対応しました。この時は、破傷風トキソイドの不足について、対応方法さえわからなかったという状況でした。 結局、汚染創は刈羽郡総合病院に集めることで対応しました。
慢性疾患で常用薬のなくなった方に対しては、巡回診療を行ったDMATが処方箋を発行することで調剤薬局での入手が可能になりました。その際、『同効薬で可』との記載が必要であるという取り決めが行われました。
災害時の薬剤に求められる条件としては、備蓄(Reserves)、迅速性(Rapid)、実現性(Reality)、機動的運搬(Dynamic delivery system)、流通(Distribution system)の“R3D2”が挙げられます。

●岩手・宮城内陸地震における経験
 DMAT22チームが対応しました。受け入れ側の病院はDMAT受け入れについて「土足で入られた」という感覚に陥りやすく、支援側に注意が必要であるとの経験を得ました。

●四川川大地震における経験
 これまでの10年間の活動においては、自己完結およびフィールドホスピタルというスタイルが基本でしたが、今回は現場でのニーズはないとして、大学病院への支援を依頼され、四川大学華西病院での支援活動を行いました。何ができるか悩みましたが、それぞれの専門性を生かした支援を行うことになりました。
通訳を交えての診療となりましたが、通訳担当者自身、医療に携わった経験がなかったためストレスになったと思います。 国際緊急援助隊の持ち込んだ薬剤は英語表記がされていないため、救助隊の帰還後は廃棄処分にされてしまいます。製薬協で、医薬品への英語表記の付加と英字添付文書の追加を検討していただければ、と思います。
20数名で4,300床の病院をサポートするということで、サポートになってはいなかったのですが、被災国に感謝をされたということで、外交としては成功だったと考えています。


以上が今回のフォーラムの要旨でした。

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