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「新薬アクセスと市場ダイナミズム~市場要因による国内新薬開発への影響」


「新薬アクセスと市場ダイナミズム~市場要因による国内新薬開発への影響」
日本製薬工業協会 医薬産業政策研究所 主任研究員 岩井高士 氏
解説講演(要旨)

 2008 年12 月24日(水)、東京・千代田区で製薬協メディアフォーラムが開催されました。『新薬アクセスと市場ダイナミズム』をテーマとして医薬産業政策研究所・岩井高士主任研究員から報告がありました。わが国では、新薬アクセスを阻害する様々な要因が存在し、その結果、いわゆるドラッグラグが生じている現状があります。岩井主任研究員は、わが国においてはR&D原資の確保、早期回収を行う上で、市場構造のダイナミクスが十分ではないとの現状を分析、新薬アクセスを向上させるためには、薬価制度改革による特許期間中新薬市場の拡大が必要であり、現在の政府による後発品使用促進策のみが一方的に推し進められた場合、国内における新薬開発にマイナスの影響が及ぼされ、新薬アクセスが更に阻害される結果となりかねないことを指摘しました。


●新薬アクセスの現状と市場特性・構造
 2002年から2007年にかけて、国内で承認・上市された新有効成分含有医薬品121品目について、日本での上市時期を見ると、欧米よりも4年前後、遅延しています。また、同期間における国内における開発品目数を見ると、欧米では1.2倍~1.4倍程度、増えているのに対して、日本に限っては、ほぼ横ばいとなっています。このことからも、欧米と比較して、わが国においては、新薬の上市の遅延、開発品目数の伸びの停滞が顕著となっています。

 わが国では、2年ごとに実施される薬価改定によって、薬価が持続的に下落するために、研究開発コストの回収期間が長期化する傾向にあります。そのためにわが国における製品の売上成長曲線は横に長く、ピークに達成するまでに時間がかかるとともに、ピーク水準も極めて低位となっています。その結果、わが国における製品シェアの変動は小さく、医薬品市場はダイナミズムに欠ける様相を呈しています。これに対し、新薬アクセスに優れる欧米市場では、( 1 )新薬上市後の成長ピーク水準が高い、( 2 )ピーク到達までの期間が短い、( 3 )特許失効後の成長が急激に低下するとの特徴が見られ、換言すれば、極めてダイナミックな市場構造を有していることがわかります。また、世界主要国の医薬品市場においては、製品シェアの変動が大きい市場ほど、企業シェアの集中度が高くなる傾向が見られます。このことからもダイナミックな市場構造は産業のダイナミズムを生む可能性が示唆されます。

●国内新薬開発と市場要因との関連性
 一方、国内新薬開発と市場要因との関連性を一定のモデルを用いて推計しました。日本を含むOECD加盟国11カ国を対象に、1993年~2006年のパネルデータを用い、説明変数として「市場規模実質額」、「医薬品価格水準」、「後発品数量シェア」、「製品シェア変動」、「トレンド」、「各国固有の要因」を採用し、これらが開発品目数の増減に与える影響を定量的に分析しました。その結果、国内医薬品市場規模および医薬品価格水準の1%の上昇は、それぞれ国内開発品目数を0.2~0.3%押し上げる効果があることが判明しました。すなわち、国内医薬品市場規模、医薬品価格水準が開発品目数増加に大きく寄与する因子であると言えます。

●国内医薬品市場予測にみる後発品拡大の影響
 続いて、現在の後発品の使用促進策が一方的に推し進められた場合の医薬品市場に及ぼす影響を分析しました。その結果、後発品が使用促進策により拡大した場合、2020年度の医薬品市場規模(全体)は、過去のトレンドで変化した場合と比べ、0.4兆円~1.5兆円程度、抑制されることが明らかとなりました。また、新薬市場だけを取り出すと、2020年度の市場規模は0.6兆円~1.7兆円も抑制されることが明らかとなりました。国内新薬開発決定要因分析の結果とあわせると、後発品使用促進策のみが推し進められた場合、新薬市場の拡大が大きく抑制され、国内開発品目数は更に減少することが考えられます。

●まとめと結論
 国内における新薬開発を促進し、新薬アクセスを改善するためには、研究開発型製薬企業による新薬開発コストの早期回収と再投資を可能とするダイナミックな市場構造への転換が必要です。また、後発品の使用促進策のみが一方的に推進された場合、新薬市場の更なる拡大抑制が予想され、そのことは国内新薬開発のさらなる停滞をもたらすと思われます。後発品の使用促進を図る一方で新薬の価格水準を引き上げることが、ダイナミックな市場構造への転換を可能とします。ダイナミックな市場形成は、独自の創薬技術を強みに持つ創薬ベンチャーの成長や企業再編の活発化など、産業のダイナミズムを生むことにつながり、わが国の経済成長にも資することは明らかです。


 以上が今回のフォーラムの要旨でした。講演後多くのジャーナリストとの質疑応答がおこなわれ、盛況のうちに費閉会しました。なお今回のフォーラムの内容は医薬産業政策研究所発行のリサーチペーパー・シリーズ№43 に詳しく掲載されています。

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