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公演の記録


新薬の価値を反映する薬価制度
―申請価格協議方式の提案―
日本製薬工業協会 医薬産業政策研究所 主任研究員 藤原尚也 氏、笹林幹生 氏
リサーチペーパー・シリーズ№28
「新薬の価値を反映する薬価制度――申請価格協議方式の提案――」の解説講演(要旨)

 2005年8月9日(火)、東京・経団連会館にて製薬協メディアフォーラムが『新薬の価値を反映する薬価制度』をテーマに、多くのジャーナリストを迎え開催されました。

 本テーマは製薬協・医薬産業政策研究所が7月に発行したリサーチペーパー・シリーズ№28にまとめられており、その解説と質疑応答が今回のフォーラムの内容でした。薬価基準制度のあり方によっては、国民の新薬へのアクセスや、産業の国際競争力に大きな影響を及ぼします。よりよい創薬環境を整備するための重要な政策の一つとして、申請価格協議方式が提案されました。以下にその提案の要旨を記します。


●提案の3つの柱
 今回の提案は3つの柱から構成されています。一つは申請価格協議方式の導入であり、薬剤の情報を一番持っている製薬企業が、自らの説明責任を前提に価格を算定し、その価格について薬価算定組織と企業が直接協議するというものです。二つ目に、個々の新薬の薬価算定にある程度の柔軟性をもたせる一方で、適正な薬剤費のあり方、例えば医療費に占める薬剤費の比率などを政府と産業とが協議して合意することです。三つ目は、医療政策と産業政策とのバランスを図り、新薬創出を促進するための環境整備について、当事者間で直接協議する「政府と産業との対話の場」を設置することです。

●新薬創出サイクルと3つの貢献
 新薬を創出し、収益をあげ、研究開発に投資してさらなる新薬の創出を目指す、この新薬創出サイクルを活性化することは、「人々の健康への貢献」「高付加価値産業としての経済成長への貢献」「高度な研究開発活動による生命科学発展への貢献」という3つの貢献に結びつきます。薬価制度の検討にあたっては、新薬創出サイクルを促すような仕組みが必要です。

 日本では薬の価格は薬価制度で決められているわけですが、現行の薬価制度には多くの問題点があります。新薬の価値を十分に反映しない薬価や恣意的な薬価引き下げ、保険財政の悪化による新たな薬剤費抑制策などは、製薬企業の研究開発インセンティブを低下させ、海外シフトを促す一因となります。それは、日本の創薬の場としての競争力を低下させ、結果として、日本での新薬創出数が減少してしまい、国民の新薬へのアクセスを悪化させることにつながります。

●世界の中で後退する日本の製薬企業
 近年では、医療の中で薬剤の持つ重要性が高まっており、ほとんどの国で薬剤費の伸び率が医療費の伸び率を上回っています。医療費の伸び率より薬剤費の伸び率が少ない国はOECD22カ国の中では、日本を含めわずか5カ国です。また、この10年間に世界の医薬品市場で日本はシェアを9%も落としており、世界における相対的なポジションは大きく低下しているといえます。さらに、世界での売上上位150品目について、日米英独仏の5カ国の中での日本の上市順位を見ると、4割が最も遅い5番目、3割がまだ日本では発売されていない薬が占めています。つまり、患者さんの新薬へのアクセスにおいて、わが国は大きな問題を抱えています。

 私たちは「創薬の場」としての競争力を指標化しランキングしてみましたが、「イノベーションを促す制度・政策」は先進5カ国中最下位であり、このままでは日本の相対的地位がさらに後退する可能性が大きいのです。新薬創出を促進する環境要因は治験環境、知的財産に関する政策、市場規模・成長性などいくつかありますが、もっとも重要なものは価値に見合った価格の実現であると考えます。

 薬剤費の抑制が産業の競争力に及ぼした例としてドイツの状況を見ますと、この10年間で世界市場の売上高ランキングの上位15社からドイツ企業はいなくなり、また国内の売上ランキング上位3位を占めていた研究開発型企業もシェアを激しく落としました。変わって売上上位には後発品メーカーが入ってきたのです。

●申請価格協議方式の提案と概要
 基本的な考え方として、第一に、医療へのアクセスの公平性が保たれた制度であることが挙げられます。現在の国民皆保険制度、フリーアクセス、フルカバーの堅持を前提とします。第二に、新薬創出を促進する制度であること、第三に、新薬の価値に基づく価格制度であることです。第四に、新薬を開発した製薬企業には説明責任があるとともに、第三者による科学的、経済的、社会的な評価が必要です。最後に、政府の医療政策と産業政策はバランスがとられるべきであるとも考えています。

 具体的な薬価決定プロセスは、製薬企業から薬価算定組織に価格を申請し、薬価算定組織では医薬品の価値を評価し申請価格の妥当性を審査します。申請価格に問題がある場合は算定委員、専門委員、製薬企業が協議し薬価案を設定します。その後、薬価算定組織は中医協に薬価を報告し了承後に薬価収載となるわけです。

 この方式の考え方のポイントは、製薬企業が研究開発を通じて蓄積した情報を価格決定のプロセスで十分に活用するとともに、製薬企業が直接価格算定の議論に参加することが必要だということです。米英独仏では製薬企業は新薬の価格設定に何らかの形で関与していますが、日本のみが申請資料の提出や不服がある場合の意見表明ができるといった程度で関与は非常に限定的といえるのです。

 われわれの提案する価格説明においては、従来の価格決定要素をベースにし、付加価値、支払い意思額調査、薬剤経済学的評価などとの組み合わせが考えられます。具体的な評価の枠組みや基準については、製薬産業と算定組織とで協議して新たに構築することが必要と考えます。算定組織も従来の専門委員に、看護学、生物統計学、医療経済学、会計学、バイオテクノロジー等の専門家などを加えて、多様化する新薬の価値の評価に対応できるよう組織強化も必要と考えています。さらに、申請価格や決定した薬価の算定根拠などについて情報公開を積極的に進めることにより、客観性・透明性は確保できると考えます。

 申請価格協議方式では「政府と産業との対話の場」の設置が特に重要になります。ヨーロッパにおいては、タスクフォースが設置され、政府と産業との対話が積極的に行われています。日本においても、医療政策と産業政策との調和を図り、よりよい新薬創出のための環境整備について当事者が直接議論をする場が必要です。議論のテーマとしては、適正な薬剤費のあり方のほか、治験環境や承認審査体制の整備など、新薬創出を促進するための環境整備が考えられます。


 以上が当日の解説の要旨でした。申請価格協議方式について、多くのジャーナリストから、現在の制度との比較や背景などについて質問が出るなど、質疑応答が活発に繰り広げられました。

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