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国際比較にみる日本の製薬企業


国際比較にみる日本の製薬企業
―直近の10年間の財務データの分析より―
リサーチペーパー・シリーズ№23「国際比較にみる日本の製薬企業」
日本製薬工業協会 医薬産業政策研究所 主任研究員
山本光昭 氏
  2004年12月9日(木)、東京・経団連会館にて製薬協メディアフォーラムが『国際比較にみる日本の製薬企業』をテーマに、多くのジャーナリストを迎え開催されました。本テーマは製薬協・医薬産業政策研究所が10月に発行したリサーチペーパーNo.23にまとめられており、そのデータ説明と質疑応答が今回の内容でした。巨大M&Aが話題になる世界の製薬産業ですが、この10年間、日米欧の企業はどのように行動し変化してきたのか、売上高、コスト構造、研究開発費の変化などについて、財務データを用いて比較分析がなされました。

●日本の上場29社―10年間の軌跡
 まずこの10年間、日本の製薬企業の業績分析がなされました。この10年を3区分に分け、92年から95年までが新薬登場による「国内主導型安定成長期」、次の96年から98年までを3年連続薬価改定による「マイナス成長期」、そして1999年以降は「海外主導型の拡大期」とみることができると区分しました。

 しかしながら、輸出の拡大によって現在の成長は保たれているものの、29社が一様に輸出を拡大させているのではなく、一部の大手企業6社の輸出比率が伸びていることが指摘されました。また、その大手6社の海外売上高は、02年度において、ブロックバスターと呼ばれるわずか11品目で海外売上高の88.1%を占めています。つまりブロックバスターが海外の売上高を牽引してきたといえます。

 先ほどの11品目のうち、地域別売上高が公表されている5製品をみると、米国市場での売上高が74.3%を占め、米国市場への依存が明らかといえます。6社の売上シェアも97年には米国が12.6%であったものが、02年には24.5%と倍増していることからもそれが裏付けられています。この10年間の日本の製薬企業の成長は、一部のブロックバスターによる、しかも米国市場での売上拡大によって支えられてきたといえるでしょう。

●世界の医薬品市場は米国が牽引している
 世界の医薬品市場は93年から03年までの間、実額で2倍以上の伸びを示しています。なかでも米国は3倍、欧州は2倍に拡大しています。しかし日本は大きな伸びはみられず、したがって日本企業のシェアは相対的に低下し、93年には20%であったものが03年には12%にまで低下しています。国別に市場の伸長率をみると、93年を基準とすると03年は米国が3倍、イギリス2.3倍、フランスとドイツが1.7倍に伸長しているのに対して、日本は1.3倍とこの5カ国のなかでは最も伸びが小さいことがわかります。

 ブロックバスターの10年間の推移ですが、93年には8製品で6.4%のシェアだったものが03年には71製品で35.3%のシェアを占めるに至っています。世界レベルでブロックバスターが医薬品市場を牽引してきたことがわかります。

 また企業別の売上高ランキングをみますと、この10年の変化で3つの特長が挙げられます。まずM&Aを行った企業が上位にランキングされていること、それからバイオベンチャー企業の大型化、そして、新薬の研究開発を行う企業とは異なる、新たな特色を持つ企業が成長していることです。後発品に特化した企業や開発・販売に特化した企業が急成長し台頭してきたことは、新たなビジネスモデルとして注目されています。

●日本企業と海外企業との比較
 対象企業は、年間医薬品売上高120億ドル以上の海外企業8社を海外大手、売上高25億ドル以上から海外の企業5社を海外準大手、日本企業を7社選定し比較しました。また、地域別に比較する際には、海外企業を本社所在地の国籍によって米国企業5社、欧州企業8社に分けています。

 売上高において、93年を100とする伸び率の比較では、3者ともに伸長しているものの、海外大手の240、海外準大手の212に対して、日本企業は148と伸び率は小さく、その結果、海外大手と日本企業の売上高格差も、93年の3.2倍から03年には5.3倍に広がりました。

 世界的な流れとして、いずれの3者も医薬事業への集中が見られることもこの10年間の傾向といえます。また、売上高の地域別構成比をみると、海外企業の地域別構成比は世界市場の地域別構成比と類似しており、グローバルに事業展開していることがわかります。日本企業も、97年と比較すると欧米市場でのシェアを急激に拡大させていますが、海外企業と比較すると半分の水準に留まっています。

 営業利益は、海外大手と日本企業の格差は93年の3.9倍から03年には6.0倍と、売上高以上に格差は広がっています。

 コスト構造の変化をみると、研究開発費率が上昇し、また、販売管理費率も若干上昇していましたが、売上原価率が大幅に低下した結果、営業利益率は向上しています。日本企業も10年前と比較すると非常にコスト構造は改善されていますが、海外企業と比較すると収益性には差がみられます。特に欧州企業はこの10年間でM&Aを通じてコスト構造を大幅に改善していることが注目されます。

●研究開発投資とその成果の格差拡大
 研究開発投資は3者ともに大幅に増加させており、その結果売上高に占める比率も高まっています。しかし、売上高や営業利益と同様、海外大手と日本企業の絶対額の格差は93年の3.4倍から03年には5.3倍にまで広がっています。

 新薬数、ブロックバスター数、パイプライン数を研究開発の成果の指標としてみると、日本企業はすべてにおいて海外大手と差がみられます。企業国籍別でみると、米国企業と欧州企業では研究開発投資額とその成果には大きな差はありませんでした。相関関係をみてみると、研究開発投資とその成果にはタイムラグがあることを考慮する必要はあるものの、総じて研究開発費が多い企業ほど、成果は多い傾向にありました。

●M&Aによる財務構造の変化
 製薬企業のM&Aにおける重要な目的としては、研究開発費の確保や、研究開発費の拡大による研究開発力の強化が挙げられます。今回の分析では、財務データ上の分析であることから、短期的な売上増加効果とコスト削減効果についてどうであったかを表しました。

 7つのM&Aをサンプルとして抽出し、M&A実施年を100とした場合の実施2年前と実施3年後をまず比較しました。実施前後で、従業員数が大幅に削減されていること、一人当たり売上高、総資本営業利益率、営業利益率など、生産性や収益性が大きく改善されていること、売上原価率が大きく改善されているなどのパフォーマンスがみられました。

 また、M&A実施企業とM&A非実施企業の、M&A実施年を100とした3年後について比較した結果、M&A実施企業の方が、M&A非実施企業に比べて、従業員数の削減や売上原価率の改善、生産性や収益性も大きく改善されていることがわかりました。短期的には、M&A実施に伴うリストラクチャリングにより収益性や生産性は向上していたことが明らかとなりましたが、製薬企業の競争力の原点ともいえる「新薬創出力」の向上が今後の課題といえるでしょう。

●今後に向けて-日本企業の課題-
 日本企業全体の課題として3つ挙げられます。第一は研究開発力の一層の強化です。
 研究開発費が高騰し、また、海外企業との研究開発費の格差が拡大している中で、日本企業は研究開発投資を拡大するとともに、新薬創出のプロセスをより効率化する必要があります。第二に製品の海外展開が挙げられます。今後の日本市場の成長を考えますと、制約要因が少なくなく、大きな成長は期待できません。売上拡大のためには海外展開が必須のものとなってきます。第三は収益基盤の強化です。さらなる研究開発費を確保するためには、海外展開による売上成長とともにコスト削減により収益性を高める必要があります。

 日本企業がこれらの課題を解決し、競争力を向上させるためにはどのような行動を取ればよいかについてですが、研究開発型の製薬企業の原点は、新薬の創出を通じて収益を得るとともに、その資源を研究開発に投入し、さらなる新薬の創出を目指すことといえます。

 つまり、ここに示しました新薬創出サイクルを促進し続けることが企業の競争力の向上につながるといえます。しかしながら、このサイクルを促すためには、そうした企業の行動に加え、新薬創出を促進するような環境整備も必要です。生命科学の発展や健康への貢献は当然のこととして、とりわけ、経済成長のドライビングフォースとしての製薬産業の発展と、社会保障の一部としての薬価制度との折り合い、バランスをどうとっていくかは、世界共通の課題となっており、日本においても早急に対応していく必要があります。

 そうした中で、日本企業においても、前述の3つ課題を解決し、新薬創出サイクルを促進していく、つまり競争力をつけるためには、今後の環境変化を踏まえた上で、海外企業のビジネスモデルを参考に、多様なビジネスモデルの中から自社の経営資源に合った最適な戦略を選択することが重要かと思われます。


 以上の山本研究員の発表に対して、多くのジャーナリストから質問があり、データの分析の背景や視点に対しての指摘など、質疑応答が繰り広げられました。また欧州各国の行政と製薬企業との関係の相違など、日本の企業と行政との関係も比較しながら問題点を指摘されるなど、有意義な討論が展開され、盛会のうちに終了しました。

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