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予防接種の有効性と安全性~知るワクチンから始めよう

予防接種の有効性と安全性~知るワクチンから始めよう
国立感染症研究所 感染症疫学センター 第三室 室長 多屋 馨子 氏

製薬協広報委員会は2015年4月23日、「製薬協メディアフォーラム」を開催しました。今回は「予防接種の有効性と安全性~知るワクチンから始めよう」をテーマに、国立感染症研究所 感染症疫学センター 第三室 室長の多屋馨子氏が講演しました。講演の概要は以下の通りです。


会場風景


「知るワクチンから始めよう」というサブタイトルにあるように、ワクチンの現状を知り、その対応をとることが多くの感染症予防につながると考えられます。しかし、対策が効を奏し患者さんが少なくなっていくと、それがワクチンの効果であることに思い至らず、ワクチンの役割が見えにくくなる場合があります。今回は感染症予防対策の成果などを「見える化」、すなわち明らかにしながら予防接種の有効性と安全性についての話しを進めていきます。

●総論

予防接種の役割は、社会に対しては感染性微生物が広く伝播することを防ぐこと、そして個人に対しては発症、重症化を予防することです。ワクチン接種により免疫を十分に獲得できる人、あるいは病気を予防することで利益を得る人に対して接種されることになりますが、免疫を獲得できることと病気を予防する必要性との間には、その時期などのバランスを取ることが必要です。そうしたことによりワクチン接種は乳幼児のみならず、妊婦や高齢者など成人にも広く予防効果を示すことができるのです。

●ワクチンを知ろう

日本で接種可能なワクチンは表1の通りです。定期のワクチン接種は「予防接種法」をもとに、接種に関して細かく規定されています。また、厚生労働大臣が定める有害事象が現れた場合は、2013年4月から医療機関に報告が義務付けられました。2014年11月からは報告先が厚生労働省(以下、厚労省)から独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency、PMDA)に変更になりました。PMDAから厚労省や国立感染症研究所に情報が提供されるという仕組みです(図1)。

表1 日本で接種可能なワクチンの種類(2015年4月現在)


図1 有害事象報告の仕組み


ワクチン投与により患者数が減ってきているという成果も「見える化」することが必要です。いくつかのワクチンにより患者数が激減していることが表2からわかります。Hibと肺炎球菌にはワクチンがありますが、GBS(B群溶連菌)にはワクチンがありません。

表2 公的助成前後での小児期侵襲性細菌感染症の罹患率変化(5歳未満人口10万人あたり)


参考資料:
2008年12月/Hib導入、 2010年2月/PCV7導入、 2010年11月/ 子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業開始
2013年4月/Hib/PCV7定期接種化、 2013年11月/PCV7⇒PCV13に変更

個々の疾患に対するワクチンの状況を見てみます。

1) 水痘

水痘は乳幼児のみならず、大人がかかると重症化する感染症です。重症化に至るハイリスク集団は表3の通りです。たくさんの合併症もあります。健康な人でも水痘で亡くなることがあり、成人では重症化することが多く、死亡例も見られます。1987年から任意接種が始まり、2014年には定期接種に導入されています。
この定期接種導入により患者報告数は激減しています。また、それとともに2014年9月からは入院例に関する全数サーベイランスが導入され、24時間以上入院した水痘は全例届け出ることがすべての医師に義務付けられています。

表3 水痘のハイリスク集団


2) 肺炎球菌感染症

ワクチン導入のおかげで大きく疫学が変わった感染症です。サーベイランスを積み重ね、ワクチンの種類が変更されてきたことなどが表4からわかります。また、インフルエンザ菌、髄膜炎菌や肺炎球菌による侵襲性感染症が定点報告から全数報告になりました。

表4 肺炎球菌のサーベイランスとワクチンの変遷


3) 日本脳炎

2005年に、日本脳炎ワクチンを接種後に急性散在性脳脊髄炎を発症した患者さんが報告され、厚生労働大臣により健康被害救済制度の認定がなされました。その患者さんの病状が重症であったこともあり、ワクチン接種の積極的勧奨の差し控えが行われました。その後、製造方法の異なるワクチンが製造販売承認され、感染発症の重大性に鑑み、2010年からは以前のように積極的勧奨が再開されたという経緯があります。
日本脳炎ウイルスは毎年活発に活動しています。厚労省の事業である感染症流行予測調査事業により、全国約35の自治体(地方衛生研究所)でブタの抗体保有状況調査が行われており、速報として国立感染症研究所のホームページに公表しています。
急性脳炎や急性脳症は、日本脳炎ウイルス以外に、インフルエンザウイルスやヘルペスウイルスによるものなども多く、診断した医師は全例を届け出ることが義務付けられています。厚生労働科学研究班(研究代表:多屋馨子)を組織し、原因不明の症例についてその究明の検討が行われています。

4) B型肝炎

B型肝炎ウイルスの母子感染予防に関しては、生後すぐにB型肝炎ワクチンとHBグロブリンをセットで接種する体制ができ上がっています(図3)。また、父親や祖父母などからの水平感染も見られることなどから、厚労省で定期接種化の議論が進んでいるところです。

図3 母子感染予防


5) 麻疹

2015年3月、日本は麻疹の排除状態であることが世界保健機関(World Health Organization、WHO)西太平洋地域事務局により認定されました。ワクチンの接種は1978年から定期接種に導入されましたが、麻疹は5年おきぐらいに大流行が繰り返されてきました。
2007年に10~20歳代を中心とした大規模な全国流行が発生し、ワクチンや抗体検査キットが不足して社会問題となりました。このことをきっかけに、国から特定感染症予防指針が出されています。それを契機として、2008年以降は国を挙げて日本から麻疹をなくす活動が始まったという歴史がありました。2回の定期の予防接種率をそれぞれ95%以上に維持すること、麻疹を全数届け出にすること、全例の検査診断を実施すること、患者が1人発生したらすぐに対応することなど、さまざまなレベルでの対応がとられた結果と考えています。
WHOの排除状態の認定を受けた2015年3月からは、それを維持しようという活動が進んでいます。日本国内の患者さんは、現在では海外感染がほとんどです。今後は、海外から持ち込まれても広がらないようにするために、1歳以上で麻疹風疹混合ワクチン2回の接種記録をもつことと、それがない場合は、かかったことが検査で確認されている人を除いて海外に行く前に予防接種を受けることが重要です。

6) 風疹

現在、国は平成32(2020)年度までに排除を達成することを目標としています。1995年4月に生後12~90ヵ月未満の男女に定期接種が取り入れられてからは患者数が目に見えて減っていますが、2013年には全国規模の流行があり、患者数の9割を成人が占めました。男性が女性の3倍に上り、職場関連での感染が報告されています。
妊娠20週頃までに、母親から胎内で感染すると、発症することがある先天性風疹症候群にはさまざまな症状があります。女性は非妊娠期に2回のワクチン接種を受けることが大切です。妊婦と胎児を守るために成人男性も予防接種を受けることを啓発しています。

7) 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

5年に一度くらいの周期で流行を繰り返しています。子ども以外にも、30〜40歳代の成人男性の症例報告が多く、精巣炎での入院事例が報告されています。おたふくかぜにかかった患者1000人に1人程度が難聴を発症すると報告されており、罹患することのリスクと、予防接種の副反応の両方を十分に理解して、予防接種の検討を勧めています。

8) ロタウイルス感染症

3~5月に流行することが多い感染症です。子どもばかりでなく大人もかかり、何度でもかかりますが、重症になるのは1回目が多いです。ワクチン接種が始まったおかげで発症例が減ってきました。また、ロタウイルスの検出数がワクチン接種の効果によって減少傾向にあるといえます。

9) インフルエンザ

全国約5000の内科・小児科からの報告とは別に、病床数300床以上で内科・外科両方を標榜する医療機関のうち約500の基幹定点において、患者さんの数が毎週、報告されています。このうち、ICUに入室した症例、人工呼吸器を装着した症例、脳症を疑って頭部の検査を受けた症例については別途報告されています。また、インフルエンザ脳症については、急性脳炎(脳症を含む)として、全例報告が法律で義務付けられています。2014-15シーズンは、世界でも日本でもAH3亜型が流行の中心で、シーズンの後半はB型の報告が増えてきています。


以上が今回のフォーラムの要旨でした。

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