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乳幼児以外を対象としたワクチン ~ ワクチンの広がる可能性

乳幼児以外を対象としたワクチン ~ ワクチンの広がる可能性
川崎医科大学 小児科 教授 中野 貴司 氏

製薬協広報委員会は2014年6月6日、製薬協メディアフォーラムを開催しました。今回は「乳幼児以外を対象としたワク チン~ワクチンの広がる可能性」をテーマに、川崎医科大学小児科教授の中野貴司氏が講演を行いました。講演の概 要は以下の通りです。


川崎医科大学 小児科 教授 中野 貴司 氏

 2013年4月に施行された改正予防接種法により、定期接種対象疾病の追加、副反 応報告制度の法定化、新しい予防接種の評価・検討組織としての「予防接種・ワクチン 分科会」の設置、そして予防接種の総合的な推進を図るための予防接種基本計画の策 定など、国内の予防接種行政には大きな変革がもたらされました。特に、予防接種・ ワクチン分科会では、被接種者の負担を減らすための混合ワクチン開発やいまだ予防 手段が確立されていない疾患に対する新規ワクチン開発への期待が示されました。さ らに、国際化社会における渡航ワクチンの必要性や、近年の青年期における風疹の 流行、高齢化社会における疾病予防のニーズの高まり等を踏まえると、ワクチンが果 たす役割は、従来の「乳幼児の疾病を予防する」という枠を超えて広がりをみせている ことは明らかです。








●子どもばかりではない、ワクチンによる感染症予防

 ワクチンで病気を予防するのは子どもばかりではありません。主な感染症の動向を整理します。

風疹
 2013年の性別風疹累積報告によると、流行の中心は成人男性となっています。報告数の8割は男性で、そのうち20代〜 40代が8割を占めています。これは、1979年(昭和54年)4月1日以前に生まれた男性は、定期予防接種の機会がなかった ことが影響していると考えられています(図1参照)

図1 風疹の定期予防接種制度の変遷

(参考:予防接種に関するQ&A集 2013年版)


講演の様子

講演の様子

破傷風
破傷風患者は減少せず、現在報告されている患者のほとんどは中年から高齢者となっており、減少していません。
  わが国における破傷風患者と死亡数(1947〜2008年)をみると、小児期にDPT接種をしていない55歳以上に多くみられ、毎年100人ほどが罹患し、約10人が死亡しています(図2)

  また、震災で被災した宮城県内沿岸部では、破傷風の発生が相次ぎ、宮城県は2011年4月12日、がれきの撤去作業時の負傷で感染する恐れがあるとして、各市町村や保健所を通じ注意を呼び掛けました。

図2 わが国における破傷風患者と死亡数( 1947~2008年)

患者数 : 1998年までは伝染病統計、以降は感染症発生動向調査  死亡数 : 人口動態統計

狂犬病
 厚生労働省は、2006年にフィリピンで犬にかまれた京都市内の60代の日本人男性が帰国後狂犬病を発症したと2011年11月16日に発表。日本人の狂犬病患者は1970年以来36年ぶりでした。

髄膜炎菌感染症
 「髄膜炎菌性髄膜炎」は、学校において予防すべき感染症である「第2種感染症」として、2012年4月に追加されました(学校保健安全法)。
 髄膜炎菌感染症に関するわが国の公衆衛生対応上の問題として、次の3点が挙げられます。

1. 法律上の問題点は、届出基準が髄膜炎菌性髄膜炎に限定され、敗血症など他の侵襲性髄膜炎菌感染症への迅速な対応が困難であること、また類型が5類感染症に分類され対応が遅れがちとなること(感染症法による届出基準は2013年4月に「侵襲性髄膜炎菌感染症」に変更された)。
2. 感染拡大防止策実施上の問題点は、速やかな予防内服に対応できる体制が未整備であること、また髄膜炎菌ワクチンが国内で未承認であること(注:2014年7月に承認された)。
3. 髄膜炎菌感染症に関する情報(臨床的事項・公衆衛生対応)が不足していること。

黄熱
 黄熱ワクチンの安全性については、微熱・頭痛・筋肉痛などの軽微な副反応が、接種後5〜10日目頃に10〜30%の頻度で発現します。アナフィラキシーの頻度は、接種10万例当たり1.8例です。免疫不全宿主への接種、および6ヵ月未満乳児への接種は禁忌です。アメリカでは生後9ヵ月以上の黄熱リスク地域への渡航者が一般的な接種対象となっています。授乳婦へ接種し、1ヵ月児が脳炎を発症した報告もあります。
  Yellow Fever Vaccine-Associated Viscerotropic Disease(YEL-AVD)では、野外株感染による重症例に近い臨床症状を呈する副反応により、多臓器不全を呈します。高齢者では本副反応のリスクが高くなります。接種して数日〜1週間後に発症(平均3.5日)し、初回接種は追加接種よりもリスクが高く、予後不良で致命率53%となっています。YEL-AVDのアメリカでの頻度は、接種10万例当たり0.4例であり、60〜69歳では1.0例、70歳以上では2.3例と上昇します。
  なお、2014年6〜7月に開催されたサッカー・ワールドカップ(W杯)観戦のためにブラジルへ渡航する旅行者に対して、厚生労働省は1月、黄熱のワクチンを早めに接種するよう呼び掛けました。

A型肝炎
 わが国における各年齢層別のA型肝炎抗体保有率をみると、衛生状態の悪かった第二次世界大戦の頃以前に生まれた者の多くはすでに感染して免疫を持っています。しかし、現在50歳代以下の者にはほとんど免疫がありません(図3)

図3 わが国における各年齢層別のA型肝炎抗体保有率

(国立感染症研究所データより引用)

●思春期世代や成人に対するワクチン

海外渡航者
 「海外渡航者のためのワクチンガイドライン2010」が作成されていますが、その目的は以下の5点です。

(1) 渡航者に対する予防接種が、有効かつ安全に実施されること。
(2) 接種の場は日本国内であり、国内諸規定に則った予防接種について解説すること。
(3) わが国では未承認・適応外・適応対象が制限されているワクチンについて、世界の標準的指針に関する情報提供を行うこと。
(4) 国内未承認ワクチンを使用する際等に、心得ておくべき法律的事項について情報提供を行うこと。
(5) 上記(1)〜(4)により、海外渡航者に対する適切な予防接種が普及すること。

岡山県予防接種センターの活動報告
 同センターが開設されてからの2年間で814件の電話相談があり、その内訳は地域住民が70%、自治体が15%、医療機関が15%でした。その中でも海外渡航前の相談が最多で(35%)、次いで予防接種計画(16%)、接種間隔が規定から外れてしまった場合の対応(15%)、副反応に関する相談(7%)、アレルギー疾患を有する者への接種対応(5%)などがありました。
ワクチン種別では、海外渡航者へのワクチン(30%)、MR(麻疹・風疹混合)ワクチン(12%)、ポリオワクチン(7%)などが上位を占めました。安心して予防接種を受けることのできる体制が整備できるよう、さらに活動を充実させたいということです。

●医療関係者など職業感染予防

 医療関連感染対策(=院内感染対策)の強化の目的は、より良い医療や看護の提供を行うため、医療関係者の健康を守るためであり、その対象は医師、他の医療職、事務部門、委託業者、実習生のすべてです。
  感受性者対策は、感染症予防の重要な手段です。感染源に曝露される前に予防接種で能動免疫を付与しておくことが最も大切ですが、一部のワクチンでは曝露後接種という手段もあります。

麻疹・風疹・水痘・ムンプス
 医療関係者は、免疫を獲得したうえで勤務や実習を開始すること、および当該疾患に未罹患の場合、接種回数はそれぞれ2回を原則とします。接種記録や罹患記録は、本人と医療機関の両方で保管し、免疫がないか不十分にもかかわらず、ワクチンが接種できない場合、個人のプライバシーと発症予防に配慮して勤務や実習体制を考慮します。    

B型肝炎ワクチン
 定期接種化が検討されているB型肝炎ワクチンは、肝臓がんや劇症肝炎を予防でき、特に小児期の接種は抗体獲得が良好です。B型肝炎ウイルスの感染経路は、針刺し、血液・体液曝露等の医療関連、チェック不十分な血液製剤や医療器具、母子感染、父子・家族内感染や集団での感染、性行為による感染、de novo 肝炎です。

●国民すべてに推奨したいワクチン

 わが国の予防接種施策の基本的な理念は、「予防接種・ワクチンで防げる疾病は予防すること」です。現在、ワクチンギャップの解消と定期接種の充実が検討されています。中でも、水痘と成人用肺炎球菌ワクチンの2ワクチンについては、定期化に向けたスケジュール案が次のように示されています。

国民すべてに推奨したいワクチン

肺炎球菌多糖体ワクチン
 年齢別の肺炎球菌による侵襲性感染症の発生状況をみると、肺炎球菌による侵襲性感染症の発生は高齢者で多く、肺炎を主体として発生している場合が多くなっています(図4)。そのため、高齢者に対しては肺炎球菌多糖体ワクチンを使用することが提案されています。

図4 年齢別の肺炎球菌による侵襲性感染症の発生

参考:McIntyre et al. Differences in the epidemiology of invasive pneumococcal disease, metropolitan NSW,19972001.NSW Public Health Bulletin

●アメリカにおける成人への接種スケジュール

 アメリカでは、成人に対するワクチン接種は、次のようなスケジュールになっています。

アメリカにおける成人への接種スケジュール

●日本人が注意すべき点

 血清疫学調査の結果より、1975〜77年生まれの日本人は、ポリオ抗体価中でもⅠ型に対する血清中和抗体価保持率が他の世代よりも低いことが判明しています。この世代がポリオ流行地へ渡航する際には、任意接種ではありますが、接種が推奨されています(厚生労働省保健医療局エイズ結核感染症課、1996年11月)。
  また、日本脳炎抗体保有率は40代〜60代で低く、患者は40歳以上が85%以上を占めています(2005〜2013年)。

●今後、開発が期待されるワクチン

 現在申請中のワクチンには、次のようなものがあります。
  また、開発優先度の高いワクチンとしては、麻疹・風疹(MR)を含む混合ワクチン、ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ(DPT - IPV)を含む混合ワクチン、改良型インフルエンザワクチン、RSVワクチン、ノロウイルスワクチン、帯状疱疹ワクチンがあります。

ワクチン 申請会社 申請日

[1] 本講演時には未承認でしたが、2014年7月4日に承認されました。


以上が今回のフォーラムの要旨でした。

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