イベント・メディア向け情報イベント・メディア向け情報

我が国におけるアカデミア創薬の現状と課題 
---創薬支援ネットワーク


我が国におけるアカデミア創薬の現状と課題 ---創薬支援ネットワーク
独立行政法人 医薬基盤研究所 理事 創薬支援戦略室長 榑林陽一 氏

製薬協広報委員会は2013年8月21日、「我が国におけるアカデミア創薬の現状と課題」をテーマに、独立行政法人 医薬基盤研究所 理事 創薬支援戦略室長 榑林陽一氏の講演と製薬協 川原章常務理事の「創薬支援ネットワークに対する期待」の紹介、ならびに榑林氏と川原常務理事のディスカッションを行いました。その概要は次の通りです。


創薬パラダイムの変化

 高齢化社会の進展による医療ニーズの急激な変化や医薬品開発における国際競争の激化など、我が国の製薬業界はまさに「Perfect Storm=大嵐」に直面しています。そして、この大嵐を乗り切るための“創薬力”の強化が国家的命題となっているわけですが、日本ではアカデミア発創薬の停滞によって創薬力が伸び悩んでいるのが現状です。
  米国においては、1990年代以降のメガファーマの吸収合併により創薬人材の流動化が促され、多くのバイオベンチャーが台頭した結果、創薬パラダイムは大きな変化を遂げました。すなわち、従来の自前主義の研究開発に依存したメガファーマのビジネスモデルは事実上崩壊し、大学の研究成果をバイオベンチャーがインキュベートして磨き上げ、本格的な臨床開発や申請は製薬会社が行う、という新たな創薬パラダイムが定着したのです。事実、最近FDAで承認されたアメリカ製新薬の約6割が、この新しいパラダイムによって創り出されたアカデミア発創薬の所産であることが報告されています。特筆すべきことは、これらのアカデミア発創薬から生まれた新薬は、いわゆる優先審査の対象となった革新的医薬品が多数を占めるということです。

我が国のアカデミア創薬の現状
 一方、我が国では、大学等で発見された新しい創薬ターゲットなどの、基礎研究の成果が革新的医薬品の創出に結びついていないのが現状です。このアカデミア発創薬が停滞している一番の原因として、「大学等で生み出された研究成果のインキュベーションを担うバイオベンチャーが育っていないこと」が指摘されています。基礎研究の成果を確実に実用化につなげるためには、創薬標的の選択から前臨床試験に至るまでの「応用研究」への支援を切れ目なく行うことが必要です。創薬支援ネットワークは、まさにバイオベンチャー不在というギャップを埋め、優れた研究成果を革新的医薬品の創出へとつなぐ実用化研究を推進するために新たに開始された国家プロジェクトなのです。具体的には、医薬基盤研究所、理化学研究所、産業技術総合研究所が連携して強固なネットワークを構築し、アカデミア創薬を支援します。研究費助成が主体のこれまでの助成制度と異なり、戦略策定、創薬技術支援、進行管理、試験経費負担によってこれまでにない次元の総合支援を行うことが大きな特徴です。

創薬支援戦略室
 2013年5月、創薬支援ネットワークの本部機能を担う創薬支援戦略室が、医薬基盤研究所内に設立されました。その主な機能は次の通りです。
1. 革新的な創薬シーズ(新標的、新物質等)に関する情報収集
2. アンメット・メディカル・ニーズに照らした“目利き”評価(実用化の可能性評価)
3. 企業導出に向けた研究戦略・出口戦略の策定・助言
4. 創薬支援ネットワークによる技術支援対象プロジェクトの選定
5. 創薬支援ネットワークによる技術支援の進行調整・管理
6. 知財戦略策定・助言
  支援の対象は、大学等で行われる創薬プロジェクトであり、重点8領域(がん、難病・希少病、肝炎、感染症、糖尿病、脳心臓血管系疾患、精神神経疾患、小児疾患)におけるFirst-in-class創薬の支援に注力します。


製薬協からの期待
 製薬協では、「研究開発による科学技術の発展への貢献」を「新薬創出による健康で安心な社会への貢献」につなげ、そして「収益による経済成長への貢献」、さらにその収益を研究開発に投資していくプロセスを、製薬産業の貢献サイクルと位置づけています。そして、製薬産業が日本の成長を牽引するために強化すべき事項の1つとして、健康・医療政策に関する司令塔機能の充実・強化、ならびに健康・医療予算の拡充・重点化を掲げています。
  創薬支援ネットワークによる実用化支援強化は、日本版NIH の創設、ARO(Academic Research Organization)機能を併せ持つ臨床研究中核病院の整備と並んで、重要であると考えています。製薬協としては、これらの国策としての取り組みを歓迎するとともに、創薬支援の仕組みを活用し、革新的新薬創出をさらに加速いたします。


創薬支援戦略室に関するディスカッション
最後に、川原常務理事の質問に榑林氏が回答する形式にてディスカッションが行われました。その内容は次の通りです。
● 創薬支援戦略室は31名の組織としてスタートしたが、今後コーディネーターの増員など、人員と予算の拡充を要請していく。
● 創薬プロセスに伴うリスクへの対処能力、ターゲットを見出す“目利き”能力などは、製薬会社での経験が必要であり、人材供給に関して製薬会社には期待している。
● 希少病治療薬については、経済的な観点から、製薬会社が取り組むのが困難な例もあるという事実を踏まえ、ARO機能を有する病院を活用するなど、フェーズⅠ試験以降も創薬支援戦略室で支援する可能性も検討する。
● 医薬品医療機器総合機構の戦略相談機能と若干の重複はあるが、特に心配はしていない。むしろ、ある程度の重複は重層的支援につながるとも考えられ、ポジティブな方向に働くものと期待している。
● 具体的な成果を出せるタイミングは明言できないが、成果としては、化合物や抗体だけでなく、創薬ターゲットなども含めさまざまなケースを想定している。


以上が今回のフォーラムの要旨でした。

このページのトップへ

  • キャンペーン
  • 製薬協ニューズレター メールマガジン登録はこちらから
  • くすり研究所
  • 治験について
  • グローバルヘルス
  • Stop AMR 薬剤耐性に対する製薬協の取り組み
  • APAC
  • くすりの情報Q&A
  • 製薬協のテレビCM