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医薬品の特許について


医薬品の特許について
日本製薬工業協会 知的財産委員会 委員長
佐藤一雄 氏
解説講演(要旨)

 製薬協 広報委員会は、2011年11月14日、製薬協 知的財産委員会 佐藤一雄委員長の講演によるメディアフォーラムを開催しました。
 「医薬品の特許について」をテーマとして、基本的な事柄から最近の話題まで、幅広い内容を紹介し、多くの記者の方々の参加がありました。講演の要旨は以下の通りです。


特許の果たす役割と製薬産業


製薬協 知的財産委員会
佐藤委員長

 特許制度とは、特許の内容公開を条件に、独占的に20年間その特許を使用する権利を与えるものです。「独占」というと悪い印象を与えるかもしれませんが、独占できるから安心して企業は特許に対して投資ができます。すなわち「優れた研究、優れた技術、優れた発明」という要件を満たすことで、特許が取得できる(=独占が保証される)、そしてその特許が「使われる、普及する、売れる」ことにより、投資が回収でき、利益を次の投資に廻すことが可能となります。
 製薬産業においても、「研究開発への投資により新薬を創出し、収益をあげる」というビジネスサイクルを通じて、生命科学発展への貢献、健康で安心な社会への貢献、そして経済成長への貢献を果たしていくためには、特許の独占的実施の確保が重要となっています。
 また製薬会社の知的財産戦略については、出願数、権利化した特許の数、あるいは訴訟で勝訴する権利行使などではなく、特許法と薬事法の定めるところを組み合わせて、製品戦略や開発戦略の価値最大化に部分的に貢献することだと考えます。

医薬品の独占権

 医薬品の独占権については、特許法の規定だけでなく、薬事法の規定にも基づいて決まります。薬事当局の基本的スタンスは、「自らの役割は医薬品の有効性や安全性を判断することであり、特許の有効性を判断することではない」としており、薬事法では、データ保護(先発権)期間を規定しています。新薬承認の後、なぜ、すぐに後発品が承認されることはないのか、というと、特許の有無に関係なく、データ保護期間が定められているからです。この期間は、日本では8年、米国では5年、EUでは10年となっています。その他には、それぞれの国・地域における小児効能取得や薬価制度の有無が、独占権に関係しています。一方、特許法では国・地域によって特許期間延長制度があります。また薬事当局が承認にあたって、特許の有無を考慮せねばならないかどうか(パテントリンケージ)については、日本とEUは部分的に認められ、一方、米国ではHatch Waxman法により、認められないことが定められています。
 先発メーカーがLCM(Life Cycle Management)や製剤特許等のセカンダリー特許により、基本特許の期限が満了しても安い後発品が販売されにくいようにすることはEvergreenと呼ばれています。しかし、これに対する反発が高まっており、2008年にEU委員会は特許のリストや先発メーカーとジェネリックメーカーの和解契約の提出を要請しています。
 このような状況下ですが、特許制度・薬事制度・(公的)保険制度を活用して、独占権を延長し、利益を得られることで知識集約型産業としての創薬型医薬品作業を支えています。

医薬品開発を取り巻く状況

 医薬品は基本的に1製品1特許であり、特許による独占で収益を確保していますが、米国では特許切れになると、「瞬間蒸発」とも言われるほどのスピードで先発品の売上が8~9割減少します。一方で、研究開発リスクが高い、すなわち、時間も費用もかかるため、なかなか研究開発投資判断が難しくなっています。特に低分子化合物における「サイエンスの飽和・成熟」と言えると思いますが、技術革新・パラダイムシフトの壁に突き当たっているため、なかなか成果が挙がらず、ブロックバスター(対象疾患領域において多大な売上を上げることができる医薬品)の特許切れ前に次のブロックバスターを用意するビジネスモデルは変わらざるを得ない状況となっています。それに対応するために、創薬型医薬品企業は、製品買収から会社買収への転換、研究開発におけるオープンイノベーションの加速、ブランドジェネリック※1)ビジネスの展開、OTC(一般用医薬品)ビジネスからの撤退あるいは強化、再生医療・遺伝子治療など研究開発の多角化を行っています。

最近のトピック(1)生物多様性条約

 生物多様性条約(Convention on Biological Diversity、CBD)は生物多様性、構成要素(生物資源)の持続可能な利用とともに、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衝平な配分(Access and BenefitSharing、ABS)を目的としたものです。ABSについては現在、法的拘束力のある国際的枠組みの合意を目標として交渉が行われています。
 製薬業界ではCBDの重要性を認識して、事前の情報に基づく同意によるアクセスの確保、そして利益配分に関しては、相互に合意する条件での契約締結という監視システムを導入することで対応しようとしていますが、一方で、資源提供国はその監視システムに何を求めているか、を懸念しています。具体的には、特許出願時に明細書への出所開示義務化の動き・流れです。遺伝資源の入手先を記載することが要件になると、遺伝資源の定義が曖昧であることに加えて、利用国は遺伝資源そのものに限る、と主張し、提供国側はその派生物、製品、ヒトや病原体も含む、と主張しており、立場の違いが明確になっています。さらに利用国側では、出所開示義務化により、予測を超えた負担・リスクが発生し、制度・権利の安定性が失われることを懸念しています。

最近のトピック(2)特許権の延長制度

 特許期間延長制度については、医薬・農薬を対象として、薬事法・農薬取締法に基づく承認を受けることが必要なため、医薬品でいえば、臨床試験開始から承認取得・上市までの期間について、5年を上限に特許権が延長される、というものです。
 日本では従来、特許庁は物質特許・用途特許のみを対象としていましたが、2007年、知的財産戦略本部より、遺伝子組み換え生物やナノテクノロジーを使用したDDS製剤※2)などについて延長可能性の提言を行いました。
 2009年に知財高裁により、製剤特許に基づく延長の判決が出され、特許庁は最高裁に上告したものの2011年に棄却されました。現在、特許庁では「改訂審査基準」を作成して、パブリックコメントの募集中であり、延長出願の審査が一時停止されています。医薬品業界としては、この改訂審査基準に基づいて、審査が早期に再開されることを願っています。

※1) ブランドジェネリック…先発メーカーからの承継医薬品(承継品)。ジェネリックメーカー(後発品メーカー)が、長期収載品を新薬メーカーから、ブランドをそのまま引き継いで生産・販売する医薬品。オリジナル性の高いジェネリック医薬品を指す場合もあるが本稿の意味は前者である。

※2) DDS(Drug Delivery System)製剤…目標とする患部(臓器や組織、細胞、病原体など)に、薬効を効果的かつ集中的に送り込むために薬剤を膜などで包むことにより、途中で吸収・分解されることなく患部に到達させ、治療効果を高める手法。


以上が今回のフォーラムの要旨でした。

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