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「製薬協メディアフォーラム」を開催
テーマは「最新のがん治療 ―がん免疫療法―」
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実はこの抗CTLA-4抗体の作用はこれだけではないということがわかってきています。大阪大学の坂口志文教授は、CD4、CD25という分子を発現したリンパ球の分画に免疫を抑制することに特化したリンパ球があることを発見し制御性T細胞と名付けました。この細胞がCTLA-4を非常に強く発現しています。抗CTLA-4抗体を投与された患者さんで、効果がみられた患者さんとあまり効果がみられなかった患者さんのがん組織を調べて、中にどんなリンパ球がいたかを比較したデータが報告されています。効果がみられなかった患者さんには、腫瘍の局所に制御性T細胞が多くみられました。一方で、効果がみられた患者さんには、キラー細胞であるCD8+T細胞が多くみられました。こういったことから、CTLA-4は、制御性T細胞と、CD8+キラーT細胞の両方に働いているのではないか、と考えられています。
 では、PD-1はどうでしょうか。PD-1は、CTLA-4と異なり、可変器とよばれるような相対的な免疫抑制効果を示します。しかし、抗PD-1抗体の方が、抗CTLA-4抗体に比較して、優れた臨床効果を示すことが報告されています。これは、免疫抑制に強くかかわっている分子シグナルを抑制すれば、より強い免疫応答が起こるか、というと必ずしもそうではないことを示しています。なぜ、PD-1の方がCTLA-4より良かったのか、まさに今研究が進んでいるところです。
 CTLA-4とPD-1について考えてみると、PD-1は当初考えられていたより、広い局面で免疫抑制効果にかかわることがわかってきています。以前は、T細胞上に発現したPD-1に、腫瘍側に発現したPD-L1もしくはPD-L2というリガンドが結合することによりがん組織で免疫抑制シグナルがもたらされるので、抗PD-1抗体はこの免疫抑制シグナルをブロックすることでT細胞を再活性化すると考えられていました。
 ところが最近のデータから、リンパ節で樹状細胞といった抗原提示細胞上に発現しているPD-L1やPD-L2は、リンパ球活性化の時点ですでに免疫抑制にかかわっていることがわかってきました。CTLA-4はリンパ球が活性化するフェーズでかかわっています。PD-1は活性化されたリンパ球ががんに行き着いた後に抑制をかけると考えられてきましたが、実はもっと複雑にお互いが絡み合っていることが示されてきたということです。よって、PD-L1が腫瘍に発現しているかいないかだけを調べても、効果のある患者さんと効果がみられない患者さんを見分けることは大変難しいということです。

2. がん免疫療法の現状

がん治療の臨床効果は全体としては、以前より良くなってきています。ところが、進行がんに限ってみてみると、最も効果があるといわれているがん種であっても、まだ5年生存率が4分の1を超えることは難しい状況です。特に、膵臓癌、肺癌は進行期に入ると、非常に予後が悪いことがわかっています。
 分子標的治療薬ががん治療に用いられるようになって臨床効果は良くなってきている、と思われるかもしれません。確かに、分子標的治療薬は、標的分子ががん細胞に発現していると劇的な抗腫瘍効果を示す一方で、長期的に効果が得られにくい、という問題があることが示されてきています。
 がん免疫療法と分子標的治療薬の生存曲線を比較すると、分子標的治療薬は当初に劇的な臨床効果を示し、生存率が改善しますが、その効果は持続しません。がん免疫療法は、免疫応答を惹起するまでに時間がかかりますが、効果は一度出ると持続します。たとえば、悪性黒色腫の患者さんで、抗CTLA-4抗体治療で臨床効果がみられた患者さんは、10年を超えてその効果を持続していることがわかっています。10年を超えて効果が持続するということは、従来のがん薬物療法においては、起こり得なかったことです。これががん免疫療法の大きなパワーであり、今後は、お互い良いところを組み合わせていくということが期待されています。

CAR-T細胞

今回は主にがん免疫チェックポイント阻害剤にフォーカスしてお話ししていますが、他のがん免疫療法としてT細胞輸注療法が早期の臨床試験で臨床効果を示す可能性があることがわかってきています。特に大きな期待をもたれているのがCAR(Chimeric antigen receptor )-T細胞療法と呼ばれるものです。CAR-T細胞は、T細胞にB細胞の抗原認識部位とT細胞活性化シグナルを結合させた遺伝子を導入した細胞です。つまり、この細胞はT細胞にもかかわらず抗体によって抗原認識をしているわけです。シグナルのところはT細胞のものが必要ですから、T細胞の活性化シグナル(CD3、CD28や4.1BBなど)を使います。CAR-T細胞の中でCD19キメラ抗原受容体を遺伝子導入したT細胞が劇的な効果をみせています。血液幹細胞移植によっても臨床効果が不十分であった患者さんでも、CD19CAR-T細胞を投与されることによって、非常に良い臨床効果が得られることから、かなり有望であると考えられ、本邦でも臨床試験が進められています。ただ、残念ながらほかの抗原を標的としたものに関しては、実験レベルであるというのが現状です。

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