医薬品評価委員会 「2025年度 医薬品評価委員会総会」を開催 医薬品評価委員会エコシステム ~激動の時代を乗り越え、魅力ある活動を推進するために~

2025年12月26日

2025年11月21日に、日本橋ライフサイエンスハブ(東京都中央区)で「第148回 医薬品評価委員会総会」が開催されました。環境の変化に対応した魅力ある委員会活動を確実なものとするため、医薬品評価委員会加盟会社の代表委員が会場に集い、ワークショップ形式で新しい委員会活動について意見を交わしました。委員会体制変更方針の説明やワークショップ後のパネルディスカッションはYouTube配信され、オンラインを含め多くの参加がありました。

「GCP Renovation」に関する議論や「治験エコシステム事業」の活発化、デジタル技術の進展などにより、臨床試験をはじめとする医薬品評価のあり方が大きく変わろうとしています。こうした環境変化に対して、より効果的・効率的かつタイムリーに対応し、多くの価値を創出する活動を継続していくためには、医薬品評価委員会自体も変わっていくことが求められます。今回の総会では、第1部で「医薬品評価委員会エコシステム」を実現するために、委員会幹部が検討してきた体制変更方針について説明するとともに、第2部では、従来の報告・共有中心の形式から踏み出し、加盟各社の代表委員がワークショップ形式で自由に議論する場を初めて設け、医薬品評価委員会の活動への期待について意見交換を行いました。また、第3部では、パネルディスカッションにより、ワークショップで議論された結果の共有と共通認識の醸成を行いました。

第1部 総会の趣旨と新体制方針の共有

総合司会である医薬品評価委員会の清水義隆運営幹事のアナウンスで、総会は開始されました。冒頭、製薬協の吉田易範専務理事より開会挨拶があり、新しい医薬品を患者に届けるために、行政、アカデミア、産業界を含む多様なステークホルダーが連携し、「Co-creation=共創」していくことの重要性が示されました。続いて、製薬協の石田佳之常務理事から、総会の趣旨説明が行われました。医薬品評価委員会を含む製薬協全体の活動においては、「産業ビジョン2035」や「政策提言2025」で示された方向性に沿って成果を出していくことが求められている一方で、日本の市場魅力度や国際競争力の低下など、必ずしも望ましい結果に結びついていない現状への課題認識が共有されました。そのうえで、医薬品評価委員会が自ら変えられる部分にフォーカスし、提案力や実行力を高めるとともに、製薬協内部においてもCo-creationを進めていく必要性が示されました。
医薬品評価委員会の中路茂委員長からは、2026年度からの体制変更方針の説明がありました。現行の委員会は6つの部会と3つの委員会タスクフォースから構成され、1,300名を超えるメンバーが活動しているものの、環境変化への柔軟な対応が難しいこと、活動の重複や可視化の不足から生産性・透明性の面で課題があること、専門人材をより横断的かつ効果的に活用できていないことなどが、課題として挙げられました。これらを踏まえ、新体制では、課題解決のために機敏に立ち上げ・終了できる「タスクフォース」と専門的なテーマを扱い高度な専門人材育成担う「専門チーム」を核とし、それらを有機的に結びつける委員会体制を構築することで、変化に迅速に対応できるエコシステムを目指す方針が示されました。

その後、医薬品評価委員会の岡安綾子運営幹事より、「加盟会社が医薬品評価委員会活動に期待すること」をテーマとした事前アンケート結果の報告が行われました。報告では、当局やアカデミアとの積極的な交渉、他委員会や非加盟企業・ベンチャー等との連携強化、委員会活動や成果の見える化と定期的な情報アップデート、加盟各社の要望を吸い上げ委員会活動に繋げる仕組み作り、委員会活動のIT環境の改善による効率化、個社では実現が難しいネットワーク形成や若手を中心とした人材育成など、委員会に対する期待が整理されました。あわせて、「GCP Renovation」や「治験エコシステム事業」への対応をはじめとする「今後優先して取り組むべき課題」の候補も紹介されました。さらに、アンケートの実施数や委員会活動スケジュールの事前共有、メンバー募集前の情報提供、次世代人材育成の場づくりなど、運営面の改善要望も共有されました。これらのアンケート結果は、単に委員会に寄せられた要望の一覧ではなく、新体制の設計にあたって優先すべき機能や役割を明確にする情報として位置づけられており、第2部以降のワークショップやパネルディスカッションの重要な前提となりました。

第2部 ワークショップ:加盟各社が期待する機能と新体制への要望

第2部では、医薬品評価委員会委員(各社代表委員)による総会として、委員会体制変更方針とメンバー募集に関する採決が行われ、賛成多数で可決されました。また、「加盟各社が医薬品評価委員会活動に期待すること」をテーマにしたワークショップが行われました。グループディスカッションを通じて、加盟会社が新体制に寄せる期待と委員会に求める機能が、具体的に整理されました。
新体制への期待としては、まず、医薬品評価委員会で取り扱う諸課題に対して、業界としてまとまって取り組むことが挙げられました。また、新たに設置される「専門チーム」の役割についての期待も述べられました。環境の変化に伴い検討すべき点を「専門チーム」が抽出し、「タスクフォース」を通じて具体的な成果にするなど、個社では十分に対応が難しい課題を体系的に解決していくことの重要性が述べられました。メンバーの募集にあたっては、目的や求める専門性、得られる経験などを明確に示すことで、参加の判断に加え、人材育成の観点からも参画しやすくなるとの意見が出されました。その他、必要な情報や成果物へのアクセスの向上、参画するメンバーがメリットを感じられる体制づくり、透明性の向上やサイロ化の解消などに対する期待への言及もありました。
委員会に期待する機能については、当局と交渉や他団体との連携の強化に加え、個社が解決したいと思っている課題を吸い上げ、必要に応じてタスクフォース化し、その検討過程や成果を分かりやすく共有する「課題収集と解決」の機能が重視されました。日本のリアルワールドデータ(RWD)の充実と利活用促進、「GCP Renovation」や「患者・市民参画(PPI/E)」などの分野で、個社を超えた情報共有や共通課題に取り組む役割への期待も示されました。さらに、当局通知やQ&Aの背景にある議論や経緯を可能な範囲で共有し、規制変更を誤解なく社内外に伝えられるよう支援してほしいという声も寄せられました。
情報アクセスと透明性については、文書管理システム内の資料や成果物へのアクセスを改善し、製薬協や各タスクフォースの動きをより見えやすくしてほしいという意見が多く出されました。同時に、他委員会や他団体との連携状況を含め、重複するアンケートの削減や、業界全体での効率的な対応に向けた調整機能を期待する声も聞かれました。人材育成・参画環境に関しては、若手が参加しやすく心理的安全性のある活動環境を整えること、委員会活動に人材を送り出す価値が社内で説明しやすくなるよう、規制の変更や政策提言など具体的な成果を積極的に発信してほしいとの要望が示されました。各社の優秀な人材が日々の業務の中で見出した課題を、委員会を通じて解決に結びつけるプロセスを経験することが、説明力や提言力の向上にもつながるという委員会ならではの人材育成についての認識が共有されました。

第3部 パネルディスカッション:新しい委員会活動への期待と今後の方向性

第3部のパネルディスカッションは、座長として医薬品評価委員会の中路茂委員長、近藤充弘運営幹事、パネリストとして産業政策委員会の榊原由紀子幹事、医薬品評価委員会の藤森茂副委員長、今枝孝行副委員長、鈴木睦基礎研究部会長、宮崎真ファーマコビジランス部会長により行われました。第2部で議論された医薬品評価委員会に対する期待や課題意識について各グループから発表の後、産業政策委員会の榊原由紀子幹事から、「産業ビジョン2035」や「政策提言2025」の確実な実現を目指して、製薬協で推進されている機能強化策「製薬強プロジェクト」について説明があり、医薬品評価委員会が先陣を切って組織改革を行い、製薬協活動を強化しようとしていることに対して大きな期待を述べました。全体ディスカッションでは、その内容を踏まえながら、新しい委員会活動に対して何を実現していくべきかが議論されました。委員会間の連携と情報共有の透明性向上、専門チームを通じた人材育成とグローバルへの発信強化、プロジェクトマネジメント機能の新設や持続可能な運営体制の構築などが主な論点となりました。

パネルディスカッションの終盤では、パネリストそれぞれが、今回の体制変更に向けた思いを率直に語りました。これまでの委員会や部会活動で積み上げてきた成果は、決して否定されるものではない一方、課題の複雑化により、一つの部会だけでは最適解を出すことが困難になってきており、他の部会や委員会との連携によって大きな変化を生み出せた経験が共有されました。創薬の上流から下流まで一体の流れの中で、非臨床を含むそれぞれの専門領域の役割を再定義し、政策提言や制度運用の改善までつなげていくことの重要性も指摘されました。また、これまで議論を重ねてきた体制変更方針は、まだ不完全であることを前提に、環境変化のスピードに追いつくために「議論を続けるだけでなく、まずは走りながら改善していく姿勢」が必要であり、志を同じくする多くのメンバーが参画してはじめて真の変革が実現するとのメッセージが示されました。変革には「熱量」と「マインド」が不可欠であり、その土台が委員会全体に芽生えつつあることへの期待とともに、今後も気づきや提案を積極的に寄せてほしいと呼びかけられました。医薬品評価委員会の中路茂委員長からは、総会を通じて、今回の体制変更の実現可能性がさらに高まったとの認識が共有されました。最終化までに今後も議論すべき点は多く残っている一方で、この変革を成功させる鍵は、本総会に参加した多くのメンバーが、前向きな視点で率直な意見を持ちより、変革の実行に積極的に参画してくれることにあるとのメッセージが示され、4時間にわたる総会は幕を閉じました。

総会での議論を踏まえ、「産業ビジョン2035」および「政策提言2025」の方向性のもとで、医薬品評価委員会が医薬品開発に関するエコシステムの中心的なプレイヤーとして、実効性のある提言と実装を両輪で進めていくことの重要性が改めて認識されました。加盟各社から寄せられた期待と課題意識を出発点として、新体制のもとでより魅力ある委員会活動を実現できるよう引き続き取り組んで参ります。

文責:医薬品評価委員会 副委員長 藤森茂
以上

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