くすりの情報Q&A Q39.「ドラッグ・ラグ」とはなんですか。国と製薬産業は、どのような取り組みをおこなっていますか。

回答

海外で使われているくすりが、日本で承認されて使えるようになるまでの時間の差のことです。日本の患者さんのために、できるだけ早く日本でくすりが使えるように、国と製薬産業でさまざまな活動に取り組んでいます。

解説

ドラッグ・ラグには2つの側面があります。1つは、他の国では発売されているのに、日本では発売されていないという「未承認薬の問題」(Q52参照)。もう1つは、日本でも発売されてはいるものの、発売までに要した期間が、他の国よりも長かった、というラグ(遅延)のことです。

未承認薬の問題は、世界の医薬品市場における売上高上位100品目の中に、自国で未発売の医薬品がどれくらいあるかを海外と比較するとわかります。2010年の場合、日本は11品目ありましたが、アメリカ、イギリスの2品目と比べると未発売の医薬品が多い状況です。

こうした問題の解決に向けて、2010年4月に薬価制度として新薬創出・適応外薬解消等促進加算が試行的に導入されるとともに、厚生労働省では、「医療上必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」が設置され、製薬企業による未承認薬・適応外薬の開発が急速に促進されてきています。

また承認発売までに要した期間が長いという問題は、世界で初めて発売されてから各国における発売までの平均期間を比較するとわかります。2010年の場合、アメリカ0.9年、イギリス1.2年、ドイツ1.3年に対し、日本は4.7年で、先進国の中でもくすりの発売時期が遅れています。これは、「治験の開始時期」「治験にかかった時間」「治験結果の審査時間」が、国によって違うことから生じます。

そこで、ドラッグ・ラグの解消に向けて、国や製薬企業、国からくすりの審査を委託された医薬品医療機器総合機構(PMDA)では、次のような取り組みを進めています。

1つめは、製薬産業の取り組みとして、複数の国で同時におこなう国際共同治験を促進させることです。国際共同治験を日本でも積極的に実施することで、くすりの開発と承認申請を海外と同時におこなえるので、日本の治験の開始時期が早まることになります。

2つめは、国の取り組みとして、治験・臨床研究ネットワーク体制を推進することです。現状の国内治験・臨床研究においては、海外と比べて病院の規模が小さいため、臨床試験実施が分散化して非効率的である、といった課題が挙げられます。そこで、専門性と臨床試験の効率化に必要な機能を集約した臨床研究中核病院などのコアセンターを設置し、コアセンターを核に複数の病院のネットワーク化を進めることにより、治験にかかる時間の短縮を目指しています。

3つめは、PMDA の審査員を増やすことです。審査員を増やし、経験を積めば、審査が迅速におこなわれることが期待されます。また、くすりの開発段階から治験方法について、製薬企業とPMDA がおこなう相談の内容を充実させています。

このように、国と製薬産業はさまざまな活動を通じ、ドラッグ・ラグの早期解消に継続的に取り組んでいます。海外で使われているくすりを使いたいと願う日本の患者さんは少なくありません。国と製薬産業では、くすりの審査期間の短縮や治験(Q34、Q35 参照)環境の整備に力を入れ、より良い医薬品をより早く患者さんの手元 に届ける努力を続けています。

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