創薬と育薬

長い年月をかけて創られ育てられる、安全で効果の高い新薬

基礎研究や各種試験、国による承認審査という長い道のりを経て、はじめて患者さんのもとへ届けられる新薬(先発医薬品)。さらに、発売された後も多くの患者さんたちに実際に使われていくなかで、安全性や有効性が繰り返しチェックされ、より安心できる、効果の高いくすりへと成長していきます。

くすりを創るには、さまざまな試験を行い、有効性と安全性の評価を行います。

多くの患者さんに使われることによって さまざまな情報が得られ、くすりを育てていくことができます。

1.基礎研究 2~3年

くすりのモトとなる新規物質の発見と創製

くすりの開発は、将来くすりとなる可能性のある新しい物質(成分)を発見したり、化学的に創り出すための研究から始まります。天然素材(植物・動物・微生物など)からの抽出や、合成、バイオテクノロジーなどの多様な科学技術を駆使した手法が用いられます。最近はゲノム情報の活用も進められています。さらに新規物質の性状や化学構造を調べ、スクリーニング(ふるい分け)にかけて取捨選択します。

2.非臨床試験 3~5年

新規物質の有効性と安全性の研究

くすりとして可能性のある物質を対象に、動物や培養細胞を用いて、有効性と安全性を研究します。また、その物質の動態(吸収・分布・代謝・排泄の過程)や、品質、安定性に関する試験も行います。

3.臨床試験(治験) 3~7年

ヒトを対象とした有効性と安全性のテスト

必要な非臨床試験を通過したくすりの候補(治験薬)が、安全で実際にヒトに効果があるかどうかを調べる最終的な確認が臨床試験(治験)です。治験は3段階に分かれ、病院などの医療機関で、健康な人や患者さんを対象に同意を得たうえで行われます。

治験はGCP(※)といわれる厳しい規準に基づいて実施されます。

  • GCP : Good Clinical Practice 臨床試験の実施基準
第1相(フェーズI) 少数の健康な人を対象に、副作用などの安全性について確認します。
第2相(フェーズII) 少数の患者さんを対象に、有効で安全な投薬量や投薬方法などを確認します。
第3相(フェーズIII) 多数の患者さんを対象に、有効性と安全性について既存薬などとの比較を行います。

4.承認申請と審査 約1年

厚生労働省への承認申請と専門家による審査

各種試験で有効性、安全性、品質などが確認された後に、厚生労働省に承認の申請を行います。そして、医薬品医療機器総合機構および学識経験者などで構成する薬事・食品衛生審議会の審査を受けることになります。

5.承認と発売

厚生労働省による承認と薬価基準収載

「くすり」として承認されると製造販売することができます。医療保険の対象となる医療用医薬品の品目と価格(薬価)は、薬価基準制度に基づいて厚生労働省により決められます。これを「薬価基準収載」と呼びます。

6.製造販売後調査・試験 第4相(フェーズIV)

発売後の安全性や使用法のチェック

さまざまな医療機関で多くの患者さんに使われることによって、開発段階では発見できなかった副作用や適正な使い方につながる情報が得られることがあります。そのためくすりは発売後も、さまざまなチェックが義務付けられています。製薬企業の医薬情報担当者(MR(※))が、これらの情報を収集しています。

  • MR : Medical Representative

くすりの改良と開発

製造販売後調査で得られた情報をもとに、より安全なくすりの使い方の検討やより使いやすいくすりへの改善が行われます。これにより、治療の効率が上がったり、適応症(対象となる疾病)が増えたり、次の新薬開発のヒントを得ることもあります。

コラム

患者さんの協力が支える「治験」

患者さんは、創薬、育薬の重要な担い手です。しかし、医療機関や製薬企業だけでは、新しいくすりを世に送り出すことはできません。新しいくすりの安全性と有効性の最終的なチェックのために行われる「治験」には患者さんや健康な方のご協力が必要です。
患者さん、医療機関、製薬企業の3者が協力して「治験」を行うことで新しいくすりが誕生します。

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