品質委員会
川島委員長インタビュー
医薬品の安定供給は、社会からの強い要請であり、製薬産業が果たすべき重要な責務です。この使命を「品質」の面から支えるため、品質委員会は国内外の規制動向やデジタル技術といった環境変化に対応しつつ、業界全体の品質向上に取り組んでいます。その根幹にあるのは、単なる手順遵守にとどまらない「クオリティカルチャー」の醸成です。日本の医薬品の未来を見据え、現状の課題や目指す姿について、同委員会 川島伸夫委員長に伺いました。
新技術の活用と国際調和で更なる安定供給へ
技術革新と国際調和を品質文化で支える
医薬品の安定供給のためには「クオリティーカルチャー」の醸成が鍵となる
品質委員会は、基本方針に「医薬品の安定供給を品質面から支援すること」を掲げています。この使命を果たすため、私たちは「GMP部会」「製剤研究部会」「ICH品質グループ」という三つの体制で、それぞれの専門領域から活動を推進しています。
例えばGMP部会の目的は高品質な医薬品を安定的に供給し続ける体制の強化と信頼性向上であり、製剤研究部会の目的は研究開発段階を対象に最先端技術を導入した高品質な医薬品を安定的かつ迅速に供給できる体制を確立することです。そしてICH品質グループは日本の製薬協会を代表し、欧米の製薬協会や国外行政、国際的な規制調和を目指して活動しています。このように、製造現場から研究開発、国際調和まで、三つの柱が連携することで、医薬品のライフサイクル全体を通じた一貫した品質を支えています。
高品質な医薬品を安定的に供給し続ける上で、決められた手順やルールを遵守することは当然の前提です。しかし、それだけでは十分ではありません。私が今、最も重要だと考えているのは、組織全体に根付くべき「クオリティーカルチャー」の醸成です。
クオリティーカルチャーとは「患者さんのためにもっとできることはないか」という視点を一人ひとりが持ち、継続的な改善を自発的に進めていく姿勢や文化とも言えるでしょう。クオリティーカルチャー自体は業界に広く浸透してきましたが、その醸成度合いを客観的に測定することは難しく、多くの企業が試行錯誤しているのが現状です。特に課題となるのが、製造を外部に委託する際に、製薬企業と製造受託機関との間で生じる認識のズレです。
これは単なるコミュニケーションの問題ではなく、技術を移転する際の情報共有の不足や、お互いへの期待値が十分に共有されていないことに起因します。「相手の領域だろう」という思い込みが、本来共有すべき情報を曖昧にし、品質に対する認識のズレを生むのです。この課題を解決するため、私たちは両者の間に立ち、アンケートなどを通じて双方の考えを整理・共有し、本音で話し合える場を設けることで、信頼関係の構築を進めています。個社間の関係性を超え、業界全体として相互理解を深めることが、真のクオリティカルチャー醸成に繋がると信じています。
AIをはじめとする新技術の活用と国際調和にも取り組んでいく
医薬品産業を取り巻く環境は、デジタル技術の進化と共に大きく変わろうとしています。私たちはこの変化を好機と捉え、製剤研究部会のプロジェクト、並びに品質委員会横断のタスクフォースとして、AIやロボット技術の活用を本格的に検討し始めています。具体的には、試験法開発の効率化や迅速化、大量データのモニタリングによる品質不良の原因究明の高度化などが期待できます。また、これまで人が対応してきた業務をデジタルツールに代替させることで、研究者がより創造的な業務に専念できる環境を整え、日本の開発力向上にも貢献できると考えています。
同時に、国際的な視点も不可欠です。ICH品質グループを中心に、欧米の規制当局や製薬団体と連携し、品質に関する国際ルールの策定に積極的に関与しています。グローバルに通用する高いレベルの品質保証体制を築くことが、日本の医薬品産業の信頼性を高め、ひいては安定供給を維持していくための礎となります。それを実現するためにも、協議中の内容に対して幅広く専門家の意見を集めるため、製薬協会内のバイオ医薬品委員会や国際委員会など、他の委員会とも積極的にコミュニケーションを図っています。
品質委員会は各部会を含め、各社の皆様にご協力をいただいています。今後も活動をしっかりと取りまとめ、会員企業からの発信や必要に応じて関連団体への提言につなげていきたいと考えています。その結果として、私たちの基本方針である「安定供給の維持」にも貢献してまいります。
品質委員会の体制、活動は製薬協のホームページに掲載しています。是非サイトにアクセスしてみてください。
【品質委員会 サイト】
品質委員会 | 委員会からの情報発信 | 日本製薬工業協会
