製品情報概要審査会
近藤委員長インタビュー
医療従事者に届けられる医薬品のプロモーション資材は、医薬品の適正使用を支え、患者さんの安全を守るための生命線です。製品情報概要審査会は、各社が作成する資材が製薬協自主基準である作成要領に則っているかを審査し、その信頼性を担保する極めて重要な役割を担っています。しかし、新薬開発の頻度は企業によって異なり、資材を作成・審査する担当者のスキル継承や育成は、業界共通の課題となっています。この課題に対し、eラーニングや指摘事例を共有する「審査会レポート」、さらには研修会といった多角的なアプローチを行っています。業界全体のレベルアップと、医療現場との共創を通じて、真に価値ある情報をいかに生み出していくのか。製品情報概要審査会の近藤充弘委員長に伺いました。
適正な医療用医薬品情報の提供を
プロモーション用資材の適正化を推進
乗り越えるべき最大の課題は「人材育成」
製品情報概要審査会の使命は、医薬品の情報を適切な形で医療従事者の先生方にお届けすることです。そのために使われるプロモーション用資材が、製薬協の倫理規範である「コード・オブ・プラクティス」に則ったものとなるよう、記載内容の適正化を図ることが主な活動目的です。
具体的には、新薬の承認時などに加盟会社から提出される自社審査済みの資材を、委員会メンバーや医学・薬学の専門家である外部有識者を含めたチームで審査します。これは任意の制度ではなく、全加盟会社が対象です。製薬協が定めた「作成要領」に基づき、会社と我々でダブルチェックを行うことで、情報の信頼性を高めています。
幸い、近年は審査での指摘数が減少傾向にあり、内容もより専門的なレベルになってきました。これは、加盟各社との間で良い関係性を築きながら、業界全体の質が向上している証左だと捉えています。こうした活動を通じて、加盟会社が適正なプロモーション活動を行えるようサポートすることこそ、私たちの役割です。
製品情報概要審査会が直面している最も大きな課題は「人材育成」です。加盟している69社の全てが、常に新薬を開発しているわけではありません。そのため、プロモーション用資材の作成や審査に携わる担当者の経験に、大きなばらつきが生まれてしまうのです。業務の継承やスキルアップが難しいこの状況は、業界全体で考えなければならない問題です。
課題は、資材の「作成者」や「審査者」に留まりません。完成した資材を用いて情報提供を行う「使用者」、例えばMRの方々への教育も同様に重要です。資材がどれだけ正しくても、伝え方が事実と異なれば意味がありません。
この人材育成という課題に対し、私たちは様々な取り組みを進めています。まず、審査担当者の人事異動などがあっても継続的に学べる「eラーニングシステム」の構築です。必要な項目をいつでも視聴できる環境を整えています。
さらに、審査での指摘内容を一般化して全加盟会社に共有する「審査会レポート」も発行しています。過去には、「有害事象は2件のみ」といった記載が、重篤な副作用を見過ごさせかねないと指摘した事例がありました。こうした具体的な事例と理由を背景から詳しく解説することで、各社の担当者が自社の活動以外からも学びを得る機会を創出しています。
医療現場との「共創」で情報のギャップを埋めていく
今後の活動として特に力を入れていきたいのが、「会員各社の社内審査および研修体制の支援」です。その柱となるのが、医療機関の方々を交えた合同研修会の開催です。
これまでの審査でも外部の専門家にはご協力いただいていましたが、それはあくまで提出された資材への評価でした。そうではなく、実際に資材を使う現場の医療従事者の目線で、「どのような情報が必要か」「企業の意図がどう伝わっているか」といった意見を共有する場を作りたいと考えています。
企業側が込めた意図と、医療従事者の受け取り方との間に生じるギャップを埋めることで、資材の質と社内審査のレベルは格段に向上するはずです。
製薬協は、ビジョン実現のテーマとして「Co-creation(共創)」を掲げています。私たちの活動も、まさにこの共創が鍵となります。委員会内での共創はもちろん、今後は加盟会社、そして医療従事者の方々との共創の機会をさらに増やしていきたいと考えています 。
私たちの委員会の存在意義は加盟会社を支え、信頼性の高い情報が医療従事者へ届くことで、最終的に患者さんの適切な治療に貢献することです。そのために、私たちはこれからも業界全体の仕組みや体制づくりに努めてまいります。
製品情報概要審査会の体制、活動は製薬協のホームページに掲載しています。是非サイトにアクセスしてみてください。
【製品情報概要審査会 サイト】
製品情報概要審査会 | 日本製薬工業協会
