品質委員会
重点課題と取り組み内容
1. GMP部会
1)新規プロジェクトの取り組み
昨今のGMPを取り巻く環境変化に対応し、イノベーションに立脚した新規医薬品の品質保証について、また、ICH 品質分野の更なる進展や品質に対する信頼回復も念頭に、取り組む活動の立案・運営を図る。今後、新規技術分野への取り組みとして、機械学習、AIを含むデジタル、データおよびテクノロジーの品質管理分野への応用として商用生産デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進について検討する。
2)アジア製薬団体連携会議(APAC)等のアジア連携対応
アジア連携対応活動の一環として、アジアを中心とした各国査察官の査察技術のさらなる醸成(人材育成)を図ることに加え、新薬をより早くアジア各国に提供するため、APACにおいて品質課題について協議し関係諸国との連携強化を実現する。
3)海外ガイダンスウォッチャー活動、GMPガイドラインの翻訳活動による海外のGMPに関する規制動向把握と会員会社への伝達
米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、世界保健機関(WHO)、中国国家薬品監督管理局(NMPA)、韓国食品医薬品安全処(MFDS)、台湾衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)、英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)、スイス医薬品局(Swissmedic)、オーストラリア保健省薬品・医薬品行政局(TGA)等の最新情報の検索、製薬協国際委員会、ならびに各社からの個別情報等、会員会社に周知すべき情報を遅滞なく収集・配信する。国際委員会アジア部会とも連携し、中国、アセアン諸国等のGMP規制に関する調査・パブリックコメントにも取り組み、輸出や変更管理を行っている会員会社へ有益な情報を提供する。改訂が著しい欧州連合(EU)、医薬品査察協定および医薬品査察共同スキーム(PIC/S)およびFDAのGMP/GDPの文書の改訂版の翻訳を必要に応じて実施し、GMPニュース等を活用し発信するとともに、プロジェクトで紹介した規制に対する各社の取り組み状況を共有する。
4)ICHのGMP関連課題への支援
昨年度、ICH品質領域の活動を支援するために、新たに立ち上げたICH支援プロジェクトについて、Q9(R1)ガイドラインの検討やトレーニングマテリアルの翻訳等を継続して活動し、ICHプロジェクト関連の活動について、品質面からの支援を行い、ガイドラインの国内定着を図る。
5)連続生産プロジェクト
連続生産での品質課題について、海外および国内での承認情報、PATモニタリング技術の情報、等を収集し、連続生産の導入に関する課題解決策を検討する。
6)クオリティーカルチャープロジェクト
GMP等を正しく運用し、品質の良い製品を作るには、関連する法規制を遵守するだけでなく、何をすべきかを考えて行動する「クオリティーカルチャー」の醸成が必要と考え、検討結果を学会で発表する等継続的に行ってきた。一方で、品質問題事案が引き続き発生している現状を踏まえ、解決策の一つとしてさらなる検討を行うため、製薬企業と製造委託機関との間で良好な信頼関係を構築するためのプロジェクトを開始する。
7)医薬品医療機器法関連課題について、日薬連との連携による対応と提言
日薬連品質委員会との緊密な連携と日薬連のプロジェクトへの参画を行う。品質問題事案の再発防止に向けた検討、薬機法ならびにGMP省令改正後および品質関連通知の対応、ニトロソアミンWTへの対応、PIC/S GMP関連通知等の改正等のプロジェクトに参画し、医薬品品質の一層の信頼性確保に加え、グローバル化の基盤となるGMPの充実を図る。今年度は、次期薬機法改正に向けた業界内での議論の中で、要望の提出等対応していく。
2. 製剤研究部会
1)プロジェクト活動
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製剤分野におけるデジタルツールの活用・実装プロジェクト
デジタルツールを有効活用、実装することで、医薬品の品質および開発力の向上(効率化、迅速化)を図る。今年度は、2つのサブテーマ(①ラボオートメーション・自動化の促進検討、②医薬品製造業界におけるDXの実装検討)について、先行事例や業界のニーズ、DXツール導入に向けた障害などの情報を収集するためのアンケートを実施し、その解析結果について論文、学会等で発表する。その後、それぞれの実用化の可能性を検討していく。
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脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle、LNP)製剤開発促進プロジェクト
日本からのLNP製品の開発の加速化、海外への競争力強化を目的とし、以下のケーススタディについてmRNA-LNP製剤の模擬品質相談を行う。今年度は、相談実施に向けた情報収集を継続し、ケーススタディBの調査報告書を完成する。
・ケーススタディA:パッシブターゲッティングLNP製剤の製造プロセス変更に対するコンパラビリティープロトコール
・ケーススタディB:Fabリガンドを結合したアクティブターゲッティングLNP製剤に臨床試験開始のための品質要件 -
Established Condition (EC)/製造方法欄の記載検討プロジェクト
ICH Q12の国内実装およびCMC開発・製造の視点からの現在の製造方法記載の課題等を踏まえて、製造方法記載(記載事項に対する変更区分を含む)のあり方を技術的視点から検討し提案する。今年度は、化成品製剤の製造についてこれまでの事例検討をまとめた技術白書を作成し、薬事委員会と連携しながらAMED化成品分科会活動を通じて政策提言する。
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外部委託諸課題解決プロジェクト
開発後期の製剤製造アウトソーシング時のトラブル回避を目的とし、主に技術目線で検討して課題解決する。各社の経験から抽出された委託先選定~治験薬出荷における事例に基づき、今年度は、各段階で確認すべき項目のチェックリストを作成する。また、受託社側の目線を取り入れた成果物とするため、日本CMO協会を通じてアンケート等を実施する。
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生物学的同等性プロジェクト
ICH M13の発出に伴う現行GLへの影響を検討し、ICH M13の日本での実装化を図ることで、新薬開発におけるBE試験の負担軽減とともに、国内における医薬品開発の迅速化に貢献する。今年度は、M13Aの国内実装に向けた現行GLの改定内容を継続協議するとともに、現在検討中のM13Bおよび今後予定されるM13Cに対して、日米欧ガイドラインのギャップ分析等を行い提言する。
3. ICH品質グループ
1)活動中トピックスの継続的な議論と対応
活動中のICH Q1/Q5(安定性試験)、M4Q(R2)(CTD-品質に関する文書の作成要領に関するガイドライン)の議論を引き続き継続する。ICH Q1/Q5、M4Q(R2)は2025年上旬にStep 1到達を予定している。ICH Q3E(医薬品の抽出物および溶出物)は外部専門家を交えて、科学的な議論を継続しており、2025年前半にStep 1到達を目指して、議論を行っている。
2)新規トピックスに対する製薬協の意見発出
2024年より新たな議論が開始されたICH Q6(R1)(規格および試験方法)EWGの活動をサポートしていく。
いずれの議論されているトピックスはICHプロジェクト内だけでなく、今後の申請に大きく係わるガイドラインの改訂になるので、関連する委員会との連携、他のトピックスのメンバーなどの意見も集約しながら、サポートしていく。
また、製薬協の品質課題に関する人材発掘と育成も兼ねたサポートスタッフの登録も積極的に行っていく。平行して、新規トピックスの検討も、これまでのワーキングループ経験者などと連携して、提案、評価しながら進めていく。
3)ICHトレーニングマテリアルの作成
Step 4に到達したQ13、Q2/Q14、Q5A、Q9(R1)のトレーニングマテリアルの作成やその翻訳作業を継続し、国内への定着を図るための活動を積極的に行う。