From JPMA 日本に適した創薬エコシステム構築に向けて
新薬創出での日本の地位低下が叫ばれていますが、その大きな理由が新規モダリティ(手段)への対応の遅れにあります。日本は強みである従来の化学合成医薬品の創薬力を維持しつつ、新規モダリティの創薬力を早急に育成するべきです。それには日本に適した創薬エコシステムの構築が不可欠です。
従来の医薬品開発では、基礎研究から臨床試験、製造、販売までを各製薬企業が単独で行ってきました。しかし、複雑化・高度化した新規モダリティの場合、1社で完結するのは難しくなります。成功の鍵は、製薬企業とアカデミア、バイオベンチャー等の協業です。創薬エコシステムとは、こうしたプレーヤーが連携し、ヒト・モノ・カネの3要素をつなげる仕組みです。それが機能すれば、多くの革新的新薬が生まれるでしょう。また、こうした創薬エコシステムは日本に閉じることなく、海外のプレーヤーともつながることにより、世界の創薬エコシステムの一翼を担うことにもつながっていきます。
一方、日本における新薬を評価する新たな仕組みの必要性も感じています。現行の薬価制度では、類似薬との比較、または原価計算方式で価格が決まります。しかし、新規モダリティによる医薬品は、従来の医薬品とは造り方も使われ方も異なるので、新薬の特性・革新性に応じた評価を個別に実施すべきです。そうした新たな仕組みが実現すれば、海外からの画期的な新薬のアクセス促進にもつながっていくものと思われます。
日本製薬工業協会
会長 上野 裕明
「創薬力の強化」と「イノベーションの適切な評価」が好循環を起こし、革新的新薬が生まれ、それが患者さんに迅速に届く。さらには健康寿命を延伸し、労働生産性の向上にもつながることで日本の経済成長が促進される。社会全体にこうした好循環が生まれることを強く切望します。
(「第35回 製薬協政策セミナー」講演内容より)
日本製薬工業協会(製薬協)
Japan Pharmaceutical Manufacturers Association (JPMA)
製薬協は、研究開発志向型の製薬会社が加盟する任意団体です。1968年に設立された製薬協は、「患者参加型医療の実現」をモットーとして、医療用医薬品を対象とした画期的な新薬の開発を通じて、世界の医療に貢献してきました。
製薬協では、製薬産業に共通する諸問題の解決や医薬品に対する理解を深めるための活動、国際的な連携等、多面的な事業を展開しています。また、特に政策策定と提言活動の強化、国際化への対応、広報体制の強化を通じて、製薬産業の健全な発展に取り組んでいます。
新薬の開発を通じて社会への貢献をめざす 日本製薬工業協会