「第5回 患者団体アドバイザリーボード」を武田薬品・湘南研究所にて開催

2017年03月01日
アドバイザリーボード

製薬協の会議室から、製薬企業の研究所に移動しての交流

2017年3月1日、現・アドバイザリーボードメンバーとして最終回となる「第5回 患者団体アドバイザリーボード」を武田薬品工業株式会社 湘南研究所(神奈川県藤沢市)にて開催しました。従来は、製薬協内あるいは近隣の会議室で開催してきましたが、「製薬協 産業ビジョン2025」のメインフレーズである「世界に届ける創薬イノベーション」の1つのイメージを共有するために、製薬企業の研究所での開催を実現しました。当日は、同研究所所員による、グローバル製薬企業が新薬創出に取り組む研究開発の拠点としての機能、設備について、歴史的変革も交えた紹介とともに、見学ツアーが行われました。その後、参加した4名のアドバイザリーボードメンバーと患者団体連携推進委員会メンバーによる率直な意見交換が行われました。

集合写真

表1 アドバイザリーボードメンバー
氏名 五十音順 ※当日は欠席

武田薬品湘南研究所の概要について

患者団体連携推進委員会の喜島智香子委員長による挨拶の後、武田薬品湘南研究所の概要について、同社医薬研究本部研究コミュニケーショングループ課長代理の井上環樹氏より、「ベスト・イン・クラスのグローバル製薬企業への挑戦~タケダから世界の人々へ。より健やかで輝かしい明日を。~」と題し、説明がありました。以下、その一部を紹介します。

武田が目指す「ベスト・イン・クラスの製薬企業」とは

1781年の創業から235年という長い歴史のなかで、創薬研究を開始してからは約100年という同社は、特に2000年以降、他グローバル企業との統合によりさらなるパイプラインの充実を図る一方、2011年にグローバルの研究開発の中核として湘南研究所を創設しました。この新たな投資の背景には、まず「優れた医薬品の創出を通じて人々の健康と医療の未来に貢献する」というミッションを果たすという強い意思があります。そして同社には、「患者さんを全ての活動の中心に置くこと」かつ「タケダイズム(誠実・公正・正直・不屈)」を基本として、社会からの信頼を得て、機動性とイノベーション、高い品質に支えられ、強固なパイプラインのもと成長し続けることこそが、目指すベスト・イン・クラスの製薬企業であるという考えがあります。

研究開発部門が果たすべき役割

医薬品産業は「日本再興戦略」や「健康・医療戦略」においても日本の成長産業の柱の一つであり、日本は世界第2位の新薬創出国、またアジアで唯一新薬を創出している国でもあります。武田は現在、欧州全域、新興国含め70ヵ国以上で事業展開するグローバル企業であり、研究開発の生産性向上を目的とした変革の一つとして、重点疾患領域をがん、消化器系疾患、中枢神経系疾患の3疾患領域およびワクチン事業に集中し、研究開発の2大拠点である湘南とボストンの間で、研究者のグローバルな移動を行うことでこのイノベーションを推進しています。

湘南研究所が取り組む「挑戦」

湘南研究所は、ボストンとともに創薬イノベーションを加速するグローバル研究拠点であり、かつオープンイノベーションのためのリサーチパークというポジショニングを有し、従来の枠組みにこだわらない多様な研究開発体制を強化しています。研究者数約1000名のもと創薬ターゲット探索、候補化合物選定から上市までの非臨床研究を担っています。

同研究所が取り組む大きな挑戦の一つとして、「武田—サイラ共同プログラム(T-CiRA)」があります。

共同研究の成功を願う想いを込めたエンブレム

  • 赤、青、緑、黒の4色は、CiRAが初めてiPS細胞を誘導した際の4遺伝子をイメージし、また、患者さん、研究者、臨床医とiPS細胞の4者のかかわりも表現している。
  • 「T」は、タケダのシンボルカラーでもある赤で表現。
  • 中心の「折鶴」は、患者さんへ1日でも早く画期的な新薬を届けたいという想い。

同社は、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と、iPS細胞技術の臨床応用に挑戦するT-CiRAプログラムを2015年より開始し、新薬や細胞治療等、いち早く患者さんのニーズを満たす革新的な治療法の開発を目指しています。企業側が大学を受け入れるという画期的なプログラムを10年間で320億円相当の総予算を武田がもち、武田、CiRAそれぞれ50名、総勢100名以上の研究者が合計で約4500・のスペースで実験に従事しています。現在取り組んでいる8つのプロジェクト(がん免疫療法、I型糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、難治性筋疾患、ならびに心疾患等の治療オプション)を今後さらに拡大し、近い未来に医療変革をもたらすことを目指しています。

研究所見学ツアー

患者団体アドバイザリーボードメンバー4名と、患者団体連携推進委員会メンバー24名が2班に分かれて、研究部門以外が集中しているセンターステーション棟(1棟)と研究棟(5棟)から構成される施設を、約30分見学しました。研究棟の入り口には湘南研究所のシンボルでもある、従業員3800名の折鶴のモニュメントが設置されています。設備の主な特徴としては、各研究機能の価値が最大限活用されるようにクロスファンクションなレイアウト、所属・専門に関係なく自由に交流ができる多目的スペース「ノマド」、高度な耐震性設計、そして従業員へのサポートとして充実した福利厚生施設(カフェテリア、ジム、保育施設等)があります。T-CiRAの実験室の入り口にはロゴと、メンバーの一体感を醸成するための研究者の顔写真パネルがありました。

研究所見学ツアーの様子

グループディスカッション

研究所見学ツアー後、患者団体連携推進委員会メンバーが4班に分かれ、それぞれに患者団体アドバイザリーボードメンバーが入って、今までの2年間を振り返り、率直な意見交換を行いました。

閉会挨拶

最後に、患者団体アドバイザリーボードの方々から、製薬企業の研究所見学のご感想と、アドバイザリーボードとして製薬協とかかわってきた2年間を振り返っての挨拶がありました。

主なコメントは以下の通り、われわれ製薬企業の本質に立ち返る、力強い言葉の数々をいただきました。

  • アドバイザリーボードで新たな視野をもてた。
  • 研究所は希望のもてるところ、患者さんはあきらめてはいけない、と感じた。
  • 製薬協との意見交換はありがたい。
  • 製薬企業は自分たちのために頑張っている、と伝えたい。
  • 素晴らしい研究環境からのiPS臨床応用に期待したい。
  • 医療のメインは研究促進であり、患者団体は研究者とタイアップしたい。
  • 欧米の患者団体と連携して、日本の研究の強さを伝えていきたい。

そして製薬協常務理事の田中徳雄氏が、「医療の可能性を一番追求し、あきらめないのが研究者です。全国、いや世界中で待っている患者さんのことを考え、いつどんな時もあきらめてはいないことをみなさんに理解いただいたことは大変うれしく思います。本日の研究所見学を企画したことの意義を感じました」と謝辞を述べました。またこの2年間の、製薬協と患者団体との連携推進への多大なご尽力に改めて感謝し、締めくくりました。

(文:患者団体連携推進委員会 遠藤 永子)

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