「2025年度(第52回) GMP事例研究会」開催 品質保証の実装力強化と現場主導の課題解決アプローチ

製薬協品質委員会では、2025年度事業活動の一環として、「品質保証の実装力強化と現場主導の課題解決アプローチ」をテーマに掲げ、「2025年度(第52回)GMP事例研究会」を9月12日一般財団法人日本医薬情報センターとの共催で開催しました。本年もオンラインセミナー形式とし、約660名 の参加者を迎え、成功裏に終了しました。

事例発表の演者及び当日の運営メンバー(製薬協GMP部会)  

近年、医薬品業界では、ドラッグラグ・ドラッグロスの解消、安定供給体制の強化、品質不正の再発防止、データインテグリティ(DI)の確保、製造委受託における信頼性の構築など、制度面・実務面の両面で多くの課題が顕在化しています。また、一部メーカーにおける不祥事等を契機に、製造販売業者および製造業者に求められる品質保証体制の実効性が、これまで以上に厳しく問われるようになっています。

今年度は、特別講演として独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)医薬品品質管理部の石井隆聖氏より、「品質確保に関するPMDAの取組と最近の指導事例について」と題し、最近の指導事例やPMDAとして取り組んでいるリスクコミュニケーション推進・広報活動を今後の計画も含めて紹介がありました。また、事例発表の部では、製薬協会員会社の協力により、本年度のテーマに関連して、既存建屋を再利用した医薬品製剤工程の内製化対応、DI強化に向けたデータガバナンスシステム実装の取り組み、製薬協GMP部会におけるクオリティカルチャープロジェクトの活動紹介 -製造委受託における相互の信頼性構築-、の3題の発表が行われました。いずれも各社の経験や工夫された事例について詳細な説明があり、参加者からはオンラインにて多数の質問があり、代表的な質問に対し講演後に回答がありました。

今回の特別講演並びに事例発表が、各社の品質保証レベル向上のために非常に有意義なものとなり、今後の参考になることを期待します。

特別講演

1.品質確保に関する PMDA の取り組みと最近の指導事例について

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 医薬品品質管理部 石井 隆聖 氏

<講演概要>
近年の不正事案や供給不足への対応として、令和7年に薬機法改正が公布され、品質・安全性・安定供給体制の強化が求められています。GMP調査制度の合理化ではリスク領域への集中が検討されており、PMDAはGMP理解促進のため、ラウンドテーブル会議やORANGE Letter等の活動を継続しています。本講演では薬機法改正の概要、品質確保の取り組み、最近の指導事例について解説がありました。

事例発表

2.既存建屋を再利用した医薬品製剤工程の内製化対応

あすか製薬株式会社 生産本部 いわき工場 品質保証部 鈴木 智亮 氏

<講演概要>
あすか製薬では、医薬品製造の内製化に際し、薬機法などの法規制を順守しながら、品質を最優先に既存建屋の改修による再利用を選択しています。新設を避けることで初期投資を抑えつつ、高品質な製造環境を確保しました。本講演では、改修時の工夫や法規制対応、動線設計、空調制御などの注意点を、実際の事例を交えて紹介がありました。

2.DI強化に向けたデータガバナンスシステム実装の取り組み

大塚製薬株式会社 信頼性保証本部 品質企画室 藤井 達也 氏

<講演概要>
本発表では、PIC/Sガイドライン第5章「データガバナンス」に基づく大塚製薬でのデータインテグリティ(DI)強化活動が紹介されました。FDA査察を契機に品質管理部門から生産部門へ展開し、全社的な取り組みに展開しました。DIマスタプランを策定し、リスクベースアプローチにより自己点検、CSV対応、教育、監査、設備評価を実施しました。品質保証・生産・ITなどの部門連携に加え、グローバル関連会社やコーポレート部門との協力を通じて継続的改善を図っていることが説明されました。

3.製薬協GMP部会におけるクオリティカルチャープロジェクトの活動紹介 -製造委受託における相互の信頼性構築-

中外製薬株式会社 品質保証部 藤江 宏 氏

<講演概要>
近年の医薬品製造では、受託製造業者(CMO)との協業が不可欠であり、信頼構築にはQuality cultureの相互理解が重要です。製薬協GMP部会は、委託側の立場を明確化するためアンケートを実施し、富山県薬業連合会・富山くすりコンソーシアムと連携して受託側の視点も調査しました。本講演では、これらの結果と考察をもとに、委受託間の相互理解促進に向けた取り組みについて紹介がありました。

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