「第44回 広報セミナー」を開催 ~伝わるメッセージライティングと話し⽅の技術~

2025年11月26日

製薬協広報委員会は、2025年10月29日、コングレスクエア日本橋において「第44回広報セミナー」を開催しました。本セミナーは、広報活動に関する知識や実務の共有を目的として定期的に行っているもので、今回のテーマは前回(「第43回 広報セミナー」~伝わるメッセージライティングと話し⽅の技術~)に続き「話し方」をテーマに設定しました。

講演の様子

講師には、株式会社カエカ スピーチトレーナーの土屋愛貴氏をお迎えし、「話し方の戦略|実践編」と題して、前回の基礎編で紹介された“話し方の構造”をどのように実際のコミュニケーションへと落とし込むかについて、演習を交えた形で解説いただきました。

本稿では、講演の採録を紹介します。

話し方の戦略実践編
株式会社カエカ スピーチトレーナー 土屋 愛貴 氏

(1)話し方は努力で変えられる

私たちは話し方を、コンテンツ(何を話すか) と デリバリー(どう表現するか) の二つに分けて考えています。コンテンツは言葉そのものに関わる要素で、デリバリーは声や動作など“伝え方”に関わる部分です。話す力を伸ばすためには、この二つをどちらも高めていく必要があります。

さらに私たちは、このコンテンツとデリバリーを、全部で14の要素に分類しています(図1)。コンテンツは「プロット」「ファクト」「ストーリー」「コアメッセージ」の4つ、デリバリーは音声と動作に分け、それぞれ5つずつの要素として整理しています。トレーニングでは、これらを体系的に学ぶことで、話す力は後天的に身につけられるもの、つまり努力で変えられるものだとお伝えしています。

図1 「話し方」の14の要素

(2)話し方の3つの原則

まず、話し方の「3つの原則」についてです。これは最初に必ずお伝えしている、とても大事なポイントで、話す際には常に意識していただきたい原則です。ここでは、その3つを順に紹介していきます。

目的を明確にする

1つ目は、「話す目的を明確にする」ことです。雑談以外の場面には、必ず目的がありますが、この「当たり前」が意外と見落とされます。本来、話すことは目的を達成する手段であるはずなのに、話すこと自体が目的化してしまうことがよくあります。目的は抽象的でも具体的でも構いません。「信頼してほしい」「親しみを持ってほしい」といった感情面の目的でも良いですし、満足度の数値目標でも大丈夫です。大切なのは、一度言語化してみることです。

対象者を分析する

2つ目は、「対象者を分析する」ことです。相手の属性、状況、知識量、コミュニケーションのスタイルを考えることが欠かせません。自分は理解していても相手は知らない専門用語を使いすぎたり、聞き手の集中が途切れているのに気づかず話し続けたり、ということは日常的に起こります。たとえば、相手が眠そうにしていたり、PCを見ている場面では、どう注意を戻してもらうか工夫が必要です。

話し言葉を意識する

3つ目は、「話し言葉を意識する」ことです。話し言葉は書き言葉と違い、聞き手は読み返すことができません。話した順番でそのまま届くため、「どんな順番で、どう届けるか」を常に考える必要があります。特に大事なのが「一文の長さ」です。同じ内容でも、一文が短いほうが圧倒的に伝わりやすくなります。このあと行うワークでも、「一文を短くする」というポイントを、ぜひ意識してみてください。

(3)説得力のある話の組み合わせ

説得力のある話をつくるとき、私たちはファクトとストーリーを組み合わせることを大切にしています。ファクトはニュースや統計、論文、基礎情報などの「外の情報」。ストーリーは実体験や感情、価値観など「自分の中の情報」です。この二つの混ぜ方で、聞き手に届く印象は大きく変わります(図2)。

図2 説得力のある話の組み合わせ

比率に正解はない

ファクトとストーリーの塩梅に正解はありません。聞き手の特性や話す目的によって、どれだけ混ぜるかを考えていきます。ファクトが多いと信頼感は出ますが固くなりがちです。一方、ストーリーが多いとその人らしさは出ますが、まとまりに欠ける場合があります。

目的と対象に応じて調整する

大切なのは、目的や相手に合わせて、ファクトとストーリーの割合を意図的に調整することです。この比率を意識するだけで、話の質は大きく変わります。

(4)間の確保

ここからは、デリバリー要素である「間」についてお伝えします。間とは、言葉を発していない時間のことです。間がないと話が流れて聞こえたり、早口・焦りといった印象も与えかねません。反対に、適切に間を取ると理解が追いつきやすくなり、フィラー(えー、あのーといった言葉の「つなぎ」や「時間稼ぎ」として無意識に入れてしまう音や言葉)の防止や、落ち着いた印象づくりにも役立ちます。

間を取るべき5つのタイミング(図3)

1.話しはじめる前
登壇してすぐ話し出すのではなく、少しだけ間を取って聞き手の姿勢が整うのを待つことで、話への期待値を高めることができます。

2.聞き手に考えてほしい事項のあと
「〜について考えたことはありますか?」など問いかけをしたあとには、聞き手が内容を反芻できるように間をつくります。

3.話題の転換
テーマや話の流れが変わる前に短い間を置くと、聞き手は次の話題に意識を向けやすくなり、自然な転換につながります。

4.重要な言葉の前後
強調したいワードの前後で小さな沈黙をつくることで、次に来る言葉をしっかりと受け取ってもらうことができます。

5.終わり
話し終えてすぐに立ち去ると、そっけない印象になりやすいため、最後にも余韻を残す間をつくることが大切です。

図3 間を取るべきタイミング

では、どれくらいの長さが良いのでしょうか。私がお伝えしているのは「約2秒を目安にしてみてください」ということです。もちろん、いつでも2秒が正解ではありません。場面に応じて短くして臨場感を出したり、長めにして余韻をつくることもできます。ですが、今日はまず、この「2秒」を意識してみてください。この間が入ると、聞き手の理解が追いつきやすくなり、全体の印象が大きく変わっていきます。

(5)グループワーク

ここからは、先ほどの内容を踏まえて、皆さんにグループワークをしていただきたいと思います。テーマは「Co-creation(共創)について、あなた自身の考えを聞かせてください」です。「製薬協 産業ビジョン2035」にも共創が位置づけられていますが、広報として「創薬の大切さ」を国民に伝えるうえで、このテーマを自分の言葉で語れることがますます重要になります。

専門用語を並べるだけでは、前提知識のない相手には届きません。だからこそ、皆さん自身の経験や実感、そして分かりやすいファクトを織り交ぜることで、誰にでも伝わるメッセージが生まれます。

ワークの進め方

  • それぞれ内容を考える
  • ペアになり、順番に話す
  • 聞き手が「良い点」と「もっと良くなる点」を伝える
  • 動画を使って、自分の話し方を振り返る(オンラインは自撮り)
  • 気づいた点を踏まえて、再チャレンジ

ワークの様子

ワーク中に生まれた気づき

コンテンツ(何を話すか)に関する気づき
  • 自分はストーリーに寄りがちだと分かった
  • ファクトを入れると説得力が増すことに気づいた
  • 準備して話すだけで伝わり方が全く違う
デリバリー(どう話すか)に関する気づき
  • 自分は思っていたより早口だった
  • 間を全然取れていない
  • ジェスチャーが低すぎて弱く見える

このように、自分では気づけないポイントにも、多くの方が次々と気づいていきます。こうした「気づき」こそが、話し方を変えるうえで最も大きな原動力になります。

(6)ファクトの活用

最後に、ファクトの活用についてお伝えします。「ファクト」と聞くと数字を思い浮かべる方が多いと思いますが、効果はそれだけではありません。前提がそろっていない相手にも分かりやすく伝えたいとき、ファクトは大きな力になります。ここでは、ファクトを3つに分けて考えます(図4)。

図4 ファクトを活用する

  • 基礎情報は、「そもそも何の話なのか」を共有するためのものです。相手がその分野に詳しくない場面ほど有効です。
  • 論文・調査は、「他の人も同じことを言っている」という裏づけになります。自分一人の意見だと弱い場面でも、出典と合わせて示すことで説得力が大きく高まります。
  • ニュースは、いま起きている出来事をきっかけに聞き手との距離を縮められます。導入で注意を引く、共通体験をつくる、社会的背景を示す、といった使い方ができます。

(7)まとめ

今回のセミナーには、会場・オンライン合わせて多くの参加があり、講義と実践を通じて「話し方の構造」を体感しながら学ぶ時間となりました。ワークでは、自分では気づけないクセや改善点に気づく参加者が多く、明日からの実務への活用が期待されます。

また、セミナー後のアンケートでは、次のような声が寄せられました。

  • ファクトとストーリーのバランスの重要性が理解できた
  • 実践で自分のくせが客観的に分かった
  • 広報としての基本を改めて確認できた
  • 仕事でも日常でも使える内容だった
  • 動画での振り返りが非常に勉強になった

こうしたコメントからも、本セミナーが大きな学びの機会となったことがうかがえます。話し方は、意識とトレーニングで必ず変えられるスキルです。今回の内容が、皆さまの日々の広報活動をさらに前進させるきっかけとなれば幸いです。

(広報部 宮永 睦)

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