くすりの情報Q&A Q54.「オーファン・ドラッグ」とは、どのようなくすりですか。
回答
「オーファン・ドラッグ」は希少疾病(きしょうしっぺい)用医薬品とも呼ばれ、難病といわれるような、患者さんの数が少なく治療法も確立されていない病気のためのくすりのことです。
解説
患者さんの数にかかわらず、病気の治療におけるくすりの重要性に変わりはありません。治療が困難な難病に苦しむ患者さんたちの立場を思えば、「オーファン・ドラッグ」の社会的役割には非常に大きなものがあります。
ところが、研究開発の現実面からみると、オーファン・ドラッグは需要が少ないため、莫大(ばくだい)な費用をかけにくいことが開発に二の足を踏ませる原因となっていました。くすりとしての有効性がある程度判明していても、本格的な開発へと進まないのが世界的な傾向だったのです。
そこで1970~1980年代にかけて、先進諸国を中心にオーファン・ドラッグの研究開発に対する公的援助制度をつくる動きがみられるようになり、アメリカではオーファン・ドラッグ法が制定されました。
日本では、1979年に難病に対する新薬研究開発事業がスタートし、1985年には承認審査の簡素化、さらに1993年の薬事法の改正によって、オーファン・ドラッグに対する本格的な公的研究開発援助制度が始まりました。
現在、オーファン・ドラッグに指定されるための基準は、患者数が5万人未満であること、難病など治療が難しい病気であること、医療上の必要性が高いこと、他に代替する適切な医薬品や治療方法がないこと、すでにあるくすりと比較して非常に高い有効性または安全性が期待されることなどがあります。
基準を満たし、オーファン・ドラッグに指定されると、研究開発のための助成金が交付されるほか、できるだけ速やかに患者さんに提供できるよう、他のくすりに優先して承認審査がおこなわれるなど、各種の措置が受けられます。
こうした制度上の支援策により、従来よりもオーファン・ドラッグの研究開発がおこないやすくなり、患者さんの数が日本全国でわずか数人程度の難病のくすりも開発されるようになりました。
図表・コラム
54|「オーファン・ドラッグ」の指定基準
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対象患者数が5万人未満(アメリカの場合、20万人未満)
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難病などの重篤な疾病が対象
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医療上の必要性が高い
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代替する適切な医薬品や治療方法がない
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既存の医薬品と比較して、著しく高い有効性、または安全性が期待される
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開発の可能性が高いこと
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開発コストが販売から回収される見込みがない(アメリカの場合)
MINIコラム 近年承認されたオーファン・ドラッグ
横スクロールが可能です
効能・効果 | 一般名 |
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新型インフルエンザ(H5N1) | 細胞培養インフルエンザワクチン |
悪性神経膠腫 | ベバシズマブ |
多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎 | タクロリムス水和物 |
パンデミックインフルエンザ | 細胞培養インフルエンザワクチン |
HIV-1感染症 | コビシスタット、エルビテグラビル |
脂肪萎縮症 | メトレレプチン |
急性リンパ性白血病 | クロファラビン |
急性ポルフィン症患者における急性発作 | ヘミン |
慢性リンパ性白血病 | オファツムマブ |
Lennox-Gastaut症候群における強直発作および脱力発作 | ルフィナミド |
悪性神経膠腫の腫瘍摘出術中における腫瘍組織の可視化 | アミノレブリン酸塩酸塩 |
低リン血症 | リン酸二水素ナトリウム一水和物 |
腎血管筋脂肪腫、上衣下巨細胞性星細胞腫 | エベロリムス |
ハンチントン病 | テトラベナジン |
悪性軟部腫瘍 | パゾパニブ塩酸塩 |
Dravet症候群患者における間代発作または強直間代発作 | スチリペントール |
HIV-1感染症 | リルピビリン塩酸塩 |
らい性結節性紅斑 | サリドマイド |