くすりの情報Q&A Q37.最近よく耳にする「育薬(いくやく)」とはなんですか。

回答

くすりは、患者さんの病気を治療するだけでなく、実際に使われた結果が情報として収集され、くすりの改良や新しいくすりの開発に活かされ、患者さんの治療の向上に役立てられます。それはくすりをより良いものへと育てることなので、「育薬」といっています。

解説

くすりの開発のプロセスには、大きく分けると「創薬」と「育薬」があります。

創薬は、新薬を開発するための基礎研究から、治験を経(へ)て、くすりができるまでをいいます。

それに対して育薬は、くすりが病院や医院で使われるようになってから、そこで得られた情報をもとに、くすりのより適正な使用やさまざまな改良、新薬の開発へと活かされることをいいます。

病院や医院では、同じくすりであっても、年齢や性別、症状、体質などに違いのある、数多くの患者さんに使われます。また他のくすりと併用して使われることもあります。その結果、創薬の段階ではわからなかったくすりの作用や、使い方などの改良すべき点がわかってきます。

たとえば、多くのお年寄りから「もっとのみやすいタイプのものがほしい」という声があったとします。そうした声は、医師や薬剤師によってまとめられ、製薬企業に伝えられることで、よりのみやすいくすりへと改良するための情報になります。

育薬の基礎となる情報を収集するために、くすりが病院や医院で使われるようになってからおこなわれる調査を「製造販売後調査」といいます。

製造販売後調査は、新薬の発売後4~10 年間(通常8 年間)調査をおこない、有効性や安全性などの再審査をおこなう制度、最新の科学水準に照らして再評価する再評価制度、副作用や感染症の報告制度などから成り立っています。

これらが総合的に機能することで、くすりの有効性と安全性を幅広い視点から確認するシステムが作られています。

製造販売後調査によって、医師・薬剤師を通して製薬企業に収集された有効性や安全性の情報は、さらに適正な使用を促進するために医療機関に伝えられ、活用されます。また、製薬企業はその情報をもとに、そのくすりについてさらに検討し、くすりの改良や新薬の開発をおこなう時の参考にします。

このようにして、患者さんにより安全で、より効果のあるくすりを提供し、治療の可能性を広げていくのです。このような、医薬品が市販された後の活動を育薬といっています。

現在、アスピリンやペニシリンといった誰もが知っているくすりも、つくられた当初に比べると、工夫や改良が重ねられ、より効果のある、副作用の少ないものになっています。その前提となったのは、医療現場(医療関係者と患者さん)から得た情報だったのです。

図表・コラム

37|創薬、そして育薬へ

発売後も多くの患者さんのご協力により、さまざまな有益な情報が得られ、くすりは育っていきます。

創薬、そして育薬へ

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