くすりの情報Q&A Q23.妊娠中にくすりをのんでも大丈夫ですか。

回答

自己判断をしないで、妊娠がわかった時点で医師や薬剤師に相談し、影響の少ないくすりを使うといった方法をとることが必要です。

解説

くすりが胎児(たいじ)にもたらす影響については、意外と知られていない面が多くあるようです。

妊娠前にのんでいたくすりは、その後の妊娠や胎児に影響することはありません。ほとんどのくすりは、1~2日で体外に排泄(はいせつ)されるからです。ただし、長い期間、からだに残っているくすりもありますので、そのようなくすりを使用する場合は、医師から一定期間、避妊(ひにん)するよう指示があります。

胎児の体の主な器官(神経、心臓、消化器官、手足など)は、「妊娠初期」である最終月経の開始日から28~50日のあいだにできあがります。それだけに、この時期は、母親ののんだくすりが、胎児に特に影響を与えやすいのです。

ところがこの時期は、妊娠のごく初期にあたるために、妊娠に気づかず、くすりをのんでしまうこともあるようです。ほとんどのくすりは、この時期に使用しても胎児に影響を及ぼすことはありませんが、妊娠中はもちろんのこと、妊娠の可能性のある女性は、日頃からくすりには十分に注意をしておくことがとても大切です。

では、妊娠初期を過ぎれば、くすりの影響はなくなるのかといえば、けっしてそうではありません。とくに鎮痛薬(ちんつうやく)は、妊娠後期に入ってからも影響を及ぼしやすく、長期に使用すると母体の貧血、産前産後の出血、分娩(ぶんべん)時間の延長、難産、死産、新生児の体重減少や死亡などの危険性が高くなる恐れがあります。このほか、高血圧治療薬のアンジオテンシン変換酵素阻 害(そがい)薬を、妊娠中期以降に使うと、胎児の死亡や出産児に重い障害が出ることがあります。

最近は、情報過多の時代なのか、くすりの影響を心配し過ぎる人をみかけます。

たとえば、喘息(ぜんそく)やてんかんなどの持病があり、くすりをのんでいた女性が、妊娠に気づいて急にやめてしまうようなケースもあります。すると、母体がバランスをくずし、胎児まで危険な状態におちいることがあります。

いずれにしても、妊娠がわかった時点で医師や薬剤師に相談し、影響の少ないくすりを使うといった方法をとることが必要です。おなかの赤ちゃんにとっては、母体の健康こそがもっとも大切なものなのです。妊娠を予定している場合も、あらかじめ相談しておきましょう。

MINIコラム ビタミン剤を多量にとることにも注意が必要

妊娠中でも、ビタミン剤ぐらいは大丈夫だろうと思っている女性は、けっこう多くみられます。ところがアメリカでは、妊娠初期にビタミンA剤を多量に使用した結果、胎児の奇形が起こった事例が報告されています。ビタミンAそのものは必要ですが、必要量以上にとるのではなく、食べ物から自然にとるよう心がけましょう。

また最近は、女性の喫煙者が増え、妊娠中でもタバコを吸う姿をみかけます。

胎児へのタバコの影響としてはっきりわかっているのは、出産した赤ちゃんの平均体重が少ないこと、そして早産や流産がタバコを吸わない人の約1.5倍にもなることです。これは、タバコに含まれるニコチンなどが、胎児の酸素不足を引き起こすためといわれています。

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