くすりの情報Q&A Q9.くすりにはのみ薬や注射剤など、いろいろなタイプがあるのはなぜですか。

回答

病気や症状によって、くすりに対するニーズが異なります。そこで治療方法の選択肢を広げるために、さまざまなケースに対応できるよう、いろいろなタイプのくすりがつくられているのです

解説

(1)のみ薬

のみ薬には、錠剤、カプセル剤、散剤(粉薬)、シロップ剤などがあります。

このうち錠剤、カプセル剤、顆粒剤(かりゅうざい)は、「のみやすく」「携帯に便利で」「保存もしやすい」ということから、よく使われています。

(2)注射剤

注射剤には速効性があります。たとえば静脈注射の場合、血液に入って1~3分で患部に届くので、のみ薬(15~30分程度)よりずっと速く効果を発揮します。

(3)坐剤(ざざい)

坐剤は、肛門から入れて使うくすりです。くすりの成分が直腸から吸収されるので、のみ薬と違って胃酸などの影響を受けにくく、効果が速く発揮されます。

(4)貼(は)り薬・塗り薬

貼り薬や塗り薬は、くすりの成分を皮膚から吸収させます。湿布薬や軟膏(なんこう)のように打ち身・捻挫(ねんざ)や皮膚疾患の治療に使われているものに多くみられます。

(5)吸入剤

吸入薬は口から吸い込み肺や気管支に作用させるくすりで、喘息(ぜんそく)などの呼吸器の病気や、インフルエンザなど、呼吸器系で増殖する病原体の治療薬に使われます。内服よりも少量で早く効き目を発現する特徴があります。

(6)点眼剤

点眼剤は、目に直接投与します。目への刺激を抑(おさ)えるために、多くの点眼剤は、涙とほぼ同じpH(酸性・アルカリ性の度合い)、浸透圧に調整されています。

このように、くすりは体内に入れて効果を発揮させるために、さまざまな工夫を凝らした形状が開発されています。

さらに、求められるニーズに応えるため、新たに形を変えて開発されるケースもあります。代表的なものとして、狭心症の発作に使うニトログリセリンがあります(Q10参照)。

また、腸溶剤(ちょうようざい)のように、胃酸で分解されやすいくすりの表面をコーティングして、胃で分解されないようにして腸まで到達させ、腸で初めて溶解し、吸収させるように工夫した剤形もあります。

また、速く効かせたいくすりや消化管で分解されるくすりは注射剤にして、皮下や筋肉・血管内などに注入するようにします。

このようにくすりの形やタイプには、それぞれの目的と意味があるのです。

図表・コラム

9|くすりの種類

医師は患者さんの症状を把握し、その症状や使用部位、体調などに合わせて、適切にくすりを処方します。

くすりの種類

MINIコラム ニトログリセリンとノーベル

ニトログリセリンには、血管を拡張させる作用のほかに、加熱したり、振動や圧力を加えると爆発したりする性質があることは、早くから知られていました。

その性質を利用して爆薬をつくろうと研究を重ね、ニトログリセリンを珪藻土(けいそうど)にしみ込ませたダイナマイトを発明したのが、アルフレッド・ノーベル、つまりノーベル賞の創始者でした。彼は、ダイナマイトの製造によって莫大な財産を築き上げましたが、晩年はリウマチ性の心臓病に苦しみました。その治療に使われたのが、やはりニトログリセリンだったのです。おそらくノーベルほど、ニトログリセリンのお世話になった人はいないのではないでしょうか。

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