くすりの情報Q&A Q4.漢方薬(かんぽうやく)とは、どういうものですか。
回答
中国が起源で、日本で独自に発展した「漢方医学」で使われるくすりのことです。自然界に存在する植物や動物、鉱物などの薬効となる部分を「生薬(しょうやく)」と称し、基本的には2つ以上組み合わせてつくられます。私たちが利用する病院でも、処方される身近なくすりです。
解説
漢方医学は、中国を起源とする日本の伝統医学で、中国から直接あるいは朝鮮半島経由で伝来し、日本で独自の発展を遂げました。中国を起源とする伝統医学は、現在の中国では中医学(ちゅういがく)、韓国では韓医学(かんいがく)と呼ばれており、起源は同じながら漢方医学とは異なった医学体系を形成しています。使われるくすりもそれぞれ「中薬」「韓薬」と呼ばれ、漢方薬とは区別されています。
そもそも「漢方」という名称は、江戸時代中期にオランダ(阿蘭陀)から入ってきた医学を「蘭方」と呼び、従来の日本の医学を「漢方(中国・漢に由来)」と呼ぶようになったことから始まります。
漢方薬は「生薬」と呼ばれる、自然界に存在する植物、動物や鉱物などの薬効となる部分を、通常は複数組み合わせて構成されています。たとえば、生薬の桂枝(けいし)、芍薬(しゃくやく)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)を組み合わせたもので「桂枝湯(けいしとう)」という漢方薬がつくられています。
漢方医学では、患者さんを心身両面から総合的に捉(とら)え治療するという全人的医療の考え方があり、また人間が本来持っている自然治癒力を高めるという考え方があります。そのため漢方薬は、体質に由来する症状(冷え症、虚弱体質など)や検査に表れない不調(更年期障害(こうねんきしょうがい)の症状など)の治療に効果があります。生薬の組合せが変わると、ある生薬の薬効が増強されたり毒性が抑制されたりして、有効性や安全性が大きく変化するのが特徴です。つまり漢方薬としての薬効は、個々の生薬の薬効の総和ではなく、構成生薬の組合せによって得られるものです。
漢方薬と混同されることの多いものの一つに、「民間薬」を挙(あ)げることができます。民間薬は、古くから人々の間で言い伝えられ、利用されている薬草などで、千振(せんぶり)、ゲンノショウコなどがあります。
漢方薬と民間薬はさまざまな点で異なります。多くの民間薬は、単一の薬草で構成されています。
民間薬は、室町期頃から僧医などの普及活動によって広く知られるようになり、江戸期に徳川光圀(みつくに)公の命により救急療法の書物『救民妙薬(きゅうみんみょうやく)』としてまとめあげられました。この本は、長い間、庶民のためのくすり本として活用されてきました。
現在の医療の場において、漢方薬は主に生薬を煎(せん)じた液を乾燥させて得られるエキスを顆粒(かりゅう)状にしたエキス製剤が使用されています。「煎じる必要がない」「携帯しやすい」「旅行先での服用も楽」「保存が容易」など、患者さんにとってのメリットだけでなく、品質が均一な製剤が多くの人に処方されて大量のデータを蓄積することが可能となり、科学的根拠(エビデンス)の解明にもつながっています。
漢方薬は、現代の医療現場でも使うことが認められ、医師が処方する医療用医薬品として148品目あります。
図表・コラム
4|生薬を基本とする伝統医学
古代・中国を同じ起源としていますが、現代の日本、中国、韓国の伝統医学は、各々に異なった医学体系に進化しています。いずれの医学体系においても、複数の生薬が巧みに構成されており、それが優れた薬効を引出しています。