患者団体連携推進委員会
三澤委員長インタビュー
医薬品研究開発のプロセスに患者さん・市民が参画する「PPI」。この考え方が広まる中、製薬企業と患者団体との連携は、新たな価値創造の鍵として重要性を増しています。しかし、その理想的な関係構築には、乗り越えるべき課題もあります。その中心的役割を担うのが「患者団体連携推進委員会」です。患者団体との対話を通じて相互理解を深め、真の「共創」関係をいかにして築くのでしょうか。同委員会の使命と課題、そして未来の展望について、三澤賢治委員長に伺いました。
患者団体との対話と相互理解で共通課題の解決を
多様なステークホルダーとの共創を推進
「治験情報へのアクセス」と「PPIの目的化防止」が重要な課題
患者団体連携推進委員会は、製薬協や会員会社にとって重要なステークホルダーの一つである患者団体と、しっかりと対話をしながら相互理解を深めています。その上で共通する課題を見出し、Win-Winとなるような課題解決に導ける環境づくりが最大の使命です。
私たちは、2023年度の初めに「2025年度末のありたい姿」を策定しました。「患者さんにとってより良い医療環境を実現するために、患者さん・市民参画を推進し、マルチステークホルダーが共通課題の解決のために共に声を挙げられている」という状態を目指しています。そのために、患者団体と製薬企業双方のケイパビリティの向上を図り、相互理解を深め、新たな協働の機会が創出されることを3年間かけて実現すべく、現在取り組んでいるところです。
また、製薬協の中で患者団体に最も近いポジションにいる委員会として、他の委員会が進めるPPIの取り組みにおける橋渡しの役割も担っています。製薬協や各企業の取り組みを患者団体にしっかりとお伝えして理解していただくとともに、患者団体側のご意見やご要望を製薬協側にフィードバックする窓口的な機能を果たすことで、相互理解と協働を促進していきたいと考えています。
私たちが重要だと捉えている課題の一つは、治験情報へのアクセス向上です。がんや希少疾患、難病など、治療薬がない、あるいは現状の治療法ではなかなかうまくいかない患者さんにとって、治験は希望の光となるものでもあります。患者さんやご家族として、治験が「いつ・どの医療機関で・どういった適格基準で行われているのか」という情報をタイムリーに知りたい、参加したいというニーズが高まっています。
現在、臨床研究等提出・公開システム(jRCT)で治験情報を検索することはできますが、検索機能が使いにくく、専門用語ばかりで患者さんやご家族が理解しにくいという課題があります。また、規制改革推進会議でも治験情報の広告規制のあり方について議論がなされていますが、企業側からの積極的な情報提供がしにくい状況が続いています。
これらの課題に対して、委員会では、患者団体や医療者・研究者が立ち上げられた「臨床試験にみんながアクセスしやすい社会を創る会(通称:創る会)」の事務局を担当し、jRCTの大規模改修に向けた要望書の提出をサポートするなど、アクセス性の改善に取り組んでいます。「創る会」では、将来的に、患者さんと治験情報をマッチングするような仕組みについても議論を深めていかれる予定です。
もう一つの課題は、PPIというバズワードが使われなくなる世の中を早く実現することです。患者団体から、企業はPPIという言葉を使うだけで満足したり、本来は手段であるPPIを目的化したりする傾向があるのではないかという厳しいご意見をいただくこともあります。一方で、患者団体側にもPPIとは何か、どのように参画していけばよいのかわからないという声があります。PPIという言葉を使わなくても、自然と対話と相互理解が生まれ、Win-Winの関係で共通課題の解決に取り組む機運が世の中全体に広がることが重要だと考えています。
マルチステークホルダーが「共創」できる環境づくりに取り組む
「製薬協 産業ビジョン2035」の実現に向けて、当委員会では複数の重要な取り組みを展開しています。第一に、マルチステークホルダーによる共創の場づくりへの貢献です。「創る会」のほか、「くすりビジョナリー会議」の事務局も担当し、患者団体、製薬業界、行政機関、医療者が一堂に会し、共通課題について本音ベースでの議論を行っています。このような場を通じて、各ステークホルダーが得意分野を活かして共に課題解決を目指す「共創」体制の構築を目指しています。
第二に、製薬企業と患者団体双方のケイパビリティ向上支援です。企業向けには、「PPIガイドブック」、「PPI事例集」、「ヒヤリハット集」、「患者さんにお話を伺う際の留意点」などの作成、月例委員会でのディスカッションや他委員会への助言を通じて、患者団体との適切な協働方法について知識の向上とノウハウの共有を図っています。患者団体向けには、PPIをテーマとした患者団体セミナーを複数回開催し、今年度はPPIの先進事例を紹介する事例集を新たに作成し、一歩を踏み出すきっかけづくりとノウハウ提供を行う予定です。
第三に、企業活動の透明性の確保と患者団体の独立性等の担保です。「企業活動と患者団体の関係の透明性ガイドライン」や「患者団体との協働に関するガイドライン」の周知徹底により、誠実な行動による患者団体との信頼関係の構築を推進しています。
私たちの取り組みは、重要なステークホルダーの一つである患者団体といかに相互理解を深め、信頼関係を構築し、共通課題に共に取り組んでいけるかにあります。 患者さん、ひいては国民の皆様がより良い医療を将来享受でき、より健やかな日々を送れるために、患者団体をはじめとするマルチステークホルダーによる「共創」の重要性がますます高まっています。患者団体連携推進委員会として、今後もその推進の一翼を担いたいと考えています。
患者団体連携推進委員会の体制、活動は製薬協のホームページに掲載しています。是非サイトにアクセスしてみてください。
【患者団体連携推進委員会 サイト】
患者団体連携推進委員会 | 委員会からの情報発信 | 日本製薬工業協会
