BioJapan2025 ランチョンセミナー「医薬品アクセスの課題に挑む:官民の共創」を開催

2025年10月10日、パシフィコ横浜で開催された「BioJapan2025」において、「医薬品アクセスの課題に挑む:官民の共創」をテーマにしたランチョンセミナーが行われました。

本セミナーには、日本製薬工業協会の宮柱明日香会長をはじめ、厚生労働省医政局研究開発政策課の荒木康弘氏、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の藤原康弘氏、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の下田裕和氏、そしてキャタリス・パシフィック社の高橋健氏が登壇しました。

登壇者らは、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消を含む日本の医薬品アクセスの課題について、それぞれの立場から現状と課題、今後の方向性を共有し、活発な意見交換を行いました。

オープニング:官民共創の重要性を強調

セミナーの冒頭では、ファシリテーターを務める製薬協の宮柱会長が挨拶を行いました。

宮柱会長は、「国際情勢の変化の中で、リスクとチャンスの両面を見据え、日本の創薬力と市場の魅力を高めることが重要」と述べ、官民連携による創薬エコシステムの強化に期待を寄せました。

国の視点:創薬力強化と環境整備の加速

厚生労働省医政局研究開発政策課の荒木氏は、国としての対応の全体像を説明しました。

日本の創薬力を高めるための取組みの一環として、質の高い臨床研究を実施できる施設の整備や人材育成が急務であると指摘し、「第3期健康・医療戦略」においても臨床試験実施体制の強化が社会的課題解決に資する研究開発の推進施策の1つとして位置づけられていることを紹介しました。

また、未承認薬アクセス確保事業の推進や臨床研究支援体制の充実など、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの実態に対する対策を進めていると説明しました。

PMDAの視点:国際連携と制度の周知

続いて、PMDAの藤原氏が登壇し、PMDAでは、希少疾病や小児領域の実用化支援に加え、海外発の革新的医薬品を日本で開発・導入しやすくするための相談体制を強化していると紹介しました。

藤原氏は「海外から見ると日本の薬事制度は複雑に映る。だからこそ、積極的に情報発信を行い、海外ベンチャーの理解を深めることが重要」と強調しました。PMDAワシントンD.C.事務所での国際発信や、治験エコシステム改善に向けた多様なステークホルダーとの連携についても説明しました。

民間の視点:グローバルと日本をつなぐ創薬投資

ライフサイエンス特化型ベンチャーキャピタルであるキャタリス・パシフィック社の高橋氏は、民間投資の立場から創薬支援のあり方を紹介しました。

米国でベンチャーをゼロから立ち上げる「アウトバウンド戦略」と、欧米で開発された革新的アセットを日本で展開する「インバウンド戦略」の両面から、ドラッグ・ロス解消に挑んでいると説明しました。

「市場の予見性を高め、投資家の期待リターンを理解することが、創薬エコシステムを持続的に発展させる鍵になる」と語り、資金循環の視点からも官民連携の重要性を訴えました。

AMEDの視点:出口戦略と人のつながりがカギ

AMEDの下田氏は、創薬力強化に向けたAMED第3期の挑戦として、研究成果を実用化につなげる“出口戦略”の重要性を強調しました。

アカデミアとスタートアップの間にあるギャップを埋め、信頼性の高いデータや知財・契約戦略を整備することで、研究成果を産業化へと導く取り組みを紹介しました。

また、「日本のサイエンスから生まれた技術で世界を救うような環境をつくることが目標」と語り、官民の協働による創薬エコシステムの深化に意欲を示しました。

パネルディスカッション

官民が共有した「日本を選ばれる国に」

パネルディスカッションでは、製薬協の宮柱会長のファシリテーションのもと進行し、各登壇者がそれぞれの立場から今後の課題と展望を語りました。

荒木氏:「制度整備を着実に進め、日本での開発が“選ばれる”環境をつくっていきたい」
藤原氏:「制度が整っても、そこに関わる“人”が魅力的でなければ依頼は集まらない。治験を担う人々の自立と意識の変革が必要」
高橋氏:「ドラッグ・ラグ/ロスの拡大を防ぐため、ベンチャー主導の挑戦を続けていく」
下田氏:「日本人の能力の高さと人脈を生かし、グローバルな視野で共に挑戦することが大切」

官民共創で築く“日本型創薬エコシステム”へ

今回のセミナーを通じて、制度や資金といった仕組みだけでなく、「人」と「共創」が日本の創薬エコシステムを支える原動力であることが改めて確認されました。

BioJapanという場も通じ、官民が垣根を越えて力を合わせ、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消に挑む日本の取り組みは、着実に前進しています。

 

(広報部長 本多 知恵)

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